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IT&Scienceで地域人材育成を考える 第3回:自治体の就業支援はどう変わるべきか ― 「就職支援」から「就業力支援」へ

前回のおさらい

第2回は「AI講座だけでは育たない。本当に必要なのは「考える力」」と題して、AI時代に育てるべきは人の力であることを言及してきました。

就業支援の目的は就職させること?

「就職先が決まれば、就業支援は成功なのだろうか。」

仕事に就くことは人生の大きな節目ですし、就業率は自治体としても成果が見えやすい数字です。しかし、AIの普及や産業構造の変化によって、働く環境はこれまで以上のスピードで変わっています。そのような時代に、本当に必要なのは「就職する力」だけなのでしょうか。

私は、自治体の就業支援も、これからは「就職支援」から「就業力支援」へと少しずつ視点を広げていく必要があると考えています。

就職はゴールではなく、その人のキャリアのスタート

就業支援というと、多くの人が思い浮かべるのは、

  • 就職相談

  • 企業説明会

  • 合同面接会

  • 履歴書や面接対策

といった取り組みではないでしょうか。どれも欠かせない支援であり、就職するために必要なこれらの価値を否定するつもりはありません。

ただ、それだけでは十分と言えなくなってきているのでは。

就職した後も、社会は変わり続けます。会社の事業が変わるかもしれません。担当する仕事が変わるかもしれません。AIの登場によって、今ある仕事の進め方そのものが変わる可能性もあります。

就職は「ゴール」ではなく、「変化し続けるキャリアのスタート地点」なのです。だからこそ、就職先を決めることだけでなく、その後も働き続けられる力を育てることが重要になると考えます。

企業が求めているのは「考えられる人」

私自身、会社の採用に関わることが多いのですが、そこで感じていることがあります。

「知識は入社してからでも教えられる。」

一方で、教えることが難しいのは、

  • 自分で課題を見つける力

  • 相手の話を理解する力

  • 周囲と協力する力

  • 新しいことを学び続ける姿勢

こうした力だと思います。これは特別な能力ではありませんが、意外とこういう力を持たないまま仕事をしている(できてしまう)のも事実です。

どんな業界でも、どんな職種でも求められる「働く土台」にあたるこれらの人間ならではの力は、AIが進化する時代だからこそむしろ高まっていくのではないかと感じています。

自治体だからこそ育てられる力がある

就業力とは、誰が育てるものでしょうか。

もちろん、働く場である企業の役割が大きいと思いますが、自治体だからこそできることもあります。

自治体は、高校生や大学生だけでなく、子育て世代、転職希望者、シニアなど、さまざまな立場の人と接点を持っています。また、企業、教育機関、支援機関など、地域のさまざまな主体をつなぐ役割も担っています。

だからこそ、特定の職業に必要なスキルではなく、どんな仕事にも共通する「就業力」を育てる場をつくることができます。私は、これは自治体だからこそ発揮できる大きな価値だと思っています。

「何を教えるか」より、「どう考えるか」

最近では、デジタル人材育成やAI活用講座など、多くの学びの場が用意されています。もちろんそれらは必要ですが、ツールは時代とともに変わります。数年前には当たり前だったソフトウェアが、今ではほとんど使われなくなっている例も少なくありません。

一方で、変わらないものがあります。それは、

  • 課題を整理する力

  • 仮説を立てる力

  • データを基に考える力

  • 他者と対話しながら改善する力

です。

私は、このような「どう考えるか」を身につけることが、AI時代の就業支援で最も重要なテーマになると考えています。ツールを学ぶことで仕事に就くことができる、仕事に就ければ企業で働くうえでの考える力を身につける機会は多くなるー これは事実ですが、そもそも考える機会のない仕事も多いので、、、どこで一生使える力を養いますか?

IT&Scienceが目指す就業支援

私は「IT&Science」という考え方を通して、人材育成について発信しています。その名前から、「ITスキルを教える活動ですか」と聞かれることがあります。もちろん、ITの知識は大切です。でも、私が本当に伝えたいのは、ITやAIそのものではありません。

ITは道具、AIも道具です。大切なのは、その道具を使って、どんな課題を解決するのかを考えられることです。だから私は、就業支援でも「資格を増やす」「ツールを覚える」ことをゴールにはしたくありません。

現状を整理し、課題を見つけ、仮説を立て、周囲と協力しながら解決していく。こうした科学的思考を身につけることこそ、長く働き続けるための土台になると考えています。

次回に向けて

就業支援は、就職先を紹介することだけではありません。地域で働き続け、自ら学び、変化に対応しながら活躍できる人を育てることも、大切な役割ではないでしょうか。

AIの進化によって、働く環境はこれからも変わり続けます。だからこそ、「今必要な知識」を教えるだけではなく、「変化に対応できる力」を育てることが重要になります。

私は、その力こそが「就業力」だと考えています。そして、その就業力を育てることは、一人ひとりのキャリアだけでなく、地域企業の成長や地域全体の活力にもつながっていくはずです。

次回は、このシリーズの最後として、「地方で働きたい人は、どうすれば増えるのか」をテーマに、地域全体を一つの仕組みとして捉えながら、人材育成と地方創生の関係について考えてみたいと思います。

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