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IT&Scienceで地域人材育成を考える 第4回(最終回):地方で働きたい人は、どうすれば増えるのか ― 就業支援から地域の未来を考える

前回のおさらい

第3回は「自治体の就業支援はどう変わるべきか ― 「就職支援」から「就業力支援」へ」と題して、就職支援だけでなく就業力をつける支援も必要であることを考えてきました。

都心部に若者が集まるのは給与が多いから?

「地方は給与が低いから、若者は都会へ行く。」

地方での就職について話をすると、この言葉をよく耳にしますし、確かに、東京都と地方都市では平均賃金に差があります。

例えば、東京都と岡山県(私の出身地です)を統計データで比べてみると、平均月間給与は東京都約50万円、岡山県約34万円(各自治体発表データ)となっています。

この数字だけを見ると、「東京の方が約1.5倍稼げる」と感じるかもしれませんが、本当にそれだけで若者が都会に就職する状況を説明できるのでしょうか。

私は、この問いにこそ、自治体の就業支援を考えるヒントがあると思っています。

一つの数字だけでは、本当の姿は見えない

給与は、比較しやすい数字なので、「地方は給与が低い」という印象だけが独り歩きしがちです。

でも、生活は給与だけで決まるものではなく、東京では住居費や物価が高く、通勤時間も長くなります。一方、岡山のような地方都市では、住居費や生活費を抑えながら暮らせるケースも少なくありません。

もちろん、単純に「地方の方が豊かだ」と言いたいわけではありません。大切なのは、一つの数字だけで結論を出さないことです。

働く場所を選ぶとき、人は給与だけでなく、生活、家族、将来のキャリア、地域とのつながりなど、さまざまな要素を総合的に考えています。地域の魅力も同じです。給与(お金)だけで評価できるものではありません。

少し話しがそれますが、最近はテレワークの普及もあり、特にIT業界では地方にいながら都心部の企業に就職している人も見かけるようになってきました。そうなると、個人にとっては良いことだらけに見えますが、これでは地方の活性化とは結びつきません。

地方就職の課題は「構造」で考える必要がある

地方就職が進まない理由を考えるときも、私は一つの原因だけを探すべきではないと思っています。

例えば、
地域企業の魅力が十分に伝わっていない。
学生が地域企業を知る機会が少ない。
学校と企業の接点が限られている。
地域で働く将来像を描きにくい。
企業も採用や人材育成に苦労している。

自治体も、それぞれの課題に向き合っています。しかし、それぞれ互いに影響し合っているこれらの課題を個別に解決しても、それだけでは大きな変化にはつながらないことが多いです。(中には、解決に大きく作用する主の課題はありますが)

私は、このような課題を「構造」として捉える視点が大切だと考えています。

自治体だからこそできること

では、このような複雑な課題に対して、自治体には何ができるのでしょうか。

私は、自治体の役割は「すべてを解決すること」ではないと思っています。むしろ、課題を構造的に捉えたうえで、関係するそれぞれの主体をつなぐことです。

地域企業と学校をつなぐ。
企業同士をつなぐ。
学生と地域企業が出会う機会をつくる。
地域で働く人の姿を発信する。
地域の課題を共有する。

こうした取り組みは、一つの企業や学校だけでは実現できず、自治体だからこそ、多様な立場の人たちを結び付けることができます。私は、これこそが自治体の大きな価値だと思っています。

就業支援は「人材紹介」から「地域づくり」へ

就業支援という言葉からは、企業説明会や就職相談を思い浮かべる人が多いかもしれません。もちろん、それらはこれからも必要なのですが、将来に向けてもう一つ大切な役割があります。

それは、「地域で成長できる環境をつくること」です。

学生が地域企業を知る機会を増やす。
企業が学び続けられる環境を整える。
学校と企業が連携する。
地域で働くことに希望を持てる人を増やす。

その積み重ねが、地域全体の力につながっていくのではないでしょうか。

就業支援は、就職率を上げるためだけの取り組みではありません。地域の未来を支える人材を育てる取り組みでもあると、私は考えています。

IT&Scienceが伝えたいこと

私は「IT&Science」という考え方を通じて、人材育成について発信しています。その根底にあるのは、「複雑な課題を、一つの答えで片付けない」という姿勢です。

地方就職も、その一つです。
給与だけでは語れない。
企業だけでも解決できない。
自治体だけでも変えられない。

だからこそ、課題を分解し、関係性を整理し、多様な立場から考えることが必要です。

私は、このような科学的思考は、研究やITの世界だけでなく、自治体の仕事にも欠かせない力だと思っています。

おわりに

4回にわたり、自治体の就業支援について私なりの考えを書いてきました。一貫して伝えたかったのは、就業支援とは「仕事を紹介すること」だけではないということです。

地域で学び、働き、挑戦し続けられる人を育てること。そして、その人たちが活躍できる地域を、企業や教育機関とともにつくっていくこと。それが、これからの自治体に求められる役割ではないでしょうか。

社会はこれからも変わり続けます。だからこそ、目の前の課題だけを見るのではなく、その背景にある構造を考え、多様な主体とつながりながら解決策を描いていくことが重要になります。私は、その積み重ねが、地域で働きたいと思える未来をつくり、持続可能な地域社会につながっていくと信じています。自治体の皆さんの頑張りを応援しています。

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