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第4回:解けない問題は分解されていない― DX人材に必要なのは「解決力」より「分解力」

第3回のおさらい

『DXが難しい本当の理由― 「正解がない」営みを扱えているか』と題して、DXが進まないのは、正解がなく不確実なことへの取り組み方になっていないのでは、ということを整理してきました。

問題が解けない本当の理由

私たちは問題に直面すると、すぐに「解決策」を考えようとします。
会議でもよくある光景です。

「このツールを導入すればいいのではないか」
「プロセスを改善すれば解決するのではないか」

しかし多くの場合、その議論は長く続き、なかなか結論に至りません。

なぜでしょうか。

それは、問題が難しいからではありません。
問題がまだ“問題になっていない”からです。 

つまり、解くべき問題の構造が整理されていないまま、解決策だけを議論している状態です。

現象だけを見ていると議論は終わらない

多くの組織では、問題を「現象」として捉えます。

例えば、

  • 忙しい

  • 作業が遅い

  • システムが使われない

  • 会議が多すぎる

こうした言葉はよく聞きます。

しかしこれらは、問題の本質ではありません。
あくまで目に見える現象です。

現象の背後には、必ずそれを生み出す構造があります。 

構造とは、

  • 誰が関わっているのか(人)

  • どんな情報が流れているのか(情報)

  • どんなルールがあるのか(制度・暗黙ルール)

  • どんな順序で物事が進むのか(プロセス)

こうした要素の関係です。

現象だけを見ていると、対処療法しか生まれません。
根本原因に届かないからです。

問題を理解するための「分解」という視点

では、構造を理解するにはどうすればよいのでしょうか。

その出発点が分解です。

分解とは、問題を構成要素に分けて考えることです。

例えば業務の問題であれば、

  • モノ

  • 情報

  • ルール

  • プロセス

といった要素に分けてみる。

そして次に重要なのが、関係性を見ることです。

現実の問題は、単一の要素から生まれることはほとんどありません。
多くの場合、要素同士の関係から生まれます。

例えば、

  • 情報共有が遅い

  • 承認ルールが多い

  • 担当者が固定されている

こうした要素が組み合わさることで、「業務が遅い」という現象が生まれるのです。

部分最適が失敗を生む理由

DXの現場でよく起きる失敗も、ここにあります。

例えば、

ある部門が業務効率化のためにシステムを導入したとします。

その部門の作業は確かに速くなった。
しかし別の部門では、入力作業が増え、全体の業務はむしろ遅くなった。

また、自分たちの作業のある部分だけ早くなったとしても、
その後の承認者がやることが変わらなければ、
全体としては何も成果につながらない。

これは典型的な部分最適の問題です。

各部門が自分の領域だけを改善すると、
全体としては新しいボトルネックが生まれてしまう。

DXで起きる多くの失敗は、
この「構造を見ない改善」から生まれています。

解決力よりも分解力

DX人材というと、
高度な技術力や問題解決能力が求められると考えられがちです。

しかし実際には、それより前に必要な能力があります。

それが分解力です。

問題を構造として捉え、
要素に分け、
関係を整理する。

この段階が曖昧なままでは、
どれだけ優れた解決策を考えても意味がありません。

解くべき問題が定義されていないからです。

「すぐ解決したくなる衝動」を抑える

実務の現場で構造化のワークを行うと、
多くの人が同じ反応を示します。

すぐに解決策を出したくなるのです。

しかし、ここで重要なのは逆の行動です。

あえて解決策を考えない。

まずは構造だけを書く。

誰が関わっているのか。
どんな情報が流れているのか。
どんなルールがあるのか。
どんな順序で物事が進んでいるのか。

これを書くだけで、問題の理解は大きく変わります。

DXの第一歩は「構造を見える状態」にすること

DXの議論では、技術やツールに目が向きがちです。

しかし本当の出発点はもっと手前にあります。

構造が見える状態をつくること。

問題が構造として理解されていれば、
解決策は自然と見えてきます。

逆に構造が見えていなければ、
議論は永遠に終わりません。

DX人材に最初に必要なのは、
解決力ではなく分解力です。

問題を分解し、構造を理解する。
そこからすべてが始まります。

第5回に向けて

第4回では、問題解決には良い解決アイデアではなく、良い分解が重要であることを整理してきました。
第5回は部分最適がいかに成果を生まないかを深堀してみたいと思います。

ツール導入は進むのに成果が出ない理由。それは部分最適の連鎖にある。教育が見落としがちな「全体視点」の重要性を論じる。

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