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第17話「EXCEEDING OUR DREAMS」

前回


9月。

残暑厳しい東京・渋谷のサクコーに新学期がやってきた。そして、この日からいよいよサクコー芸能科が本格始動する。芸能科には強化合宿に参加した24人と相良○○の合計25人がまるっとそのまま配属されることになった。


放課後。

芸能科は普通科が放課後となる時間に7限目があり、その時間に歌やダンスのレッスンが行われる。また、○○はレッスンを見る時もあれば1人で座学を受けることもある。この日は初日ということもありダンスを指導するコーチとの顔合わせが行われた。


上野「これから皆さんのダンスを見ていくことになりました上野と申します。よろしくお願いします。」

『よろしくお願いします!』

上野「はいお願いします。」


上野と名乗った男性、彼はプロのダンサーであり数多くのアーティストの振り付けを手掛ける人物である。


上野「ところで、アーティストコースは全員女性って聞いてたんですけど……」


そう言いながら○○の方を見やる。


○○『私ですか?プロデューサーコースの者なんですけれど今日は顔合わせということと時折レッスンの方も顔を出せという指示が出てまして自分もご挨拶をと思って……』

上野「なるほど、わざわざありがとうね。」

○○『いえ、とんでもないです。』


顔合わせも終わり、この日は大きく動くことなく解散となる……かと思われた。


ピン「最後に…お前たちにひとつ、ミッションを課そうと思う。」

『ミッション?』

上野「今年の年末…皆さんだけでカウントダウンライブをやってもらいます。」

『カウントダウンライブ!?』

ピン「もちろん、会場はこっちで準備する。相良、お前も準備段階から加わってもらうからな。」

○○『はい。』

上野「皆さんには年末までに、お客様に見せて恥ずかしくないレベルまで練習をして、上達してもらいます。いいですか?」

『はい!』


次なる挑戦が、幕を開けた。




翌日。


座学を終えた○○、まだレッスンをやっているかと思い多目的室……いや、改装されたのでレッスン室と呼ぼう―――へ向かうと……


○○『お疲れさm…ってどうした!?』


レッスン場の扉を開けた瞬間、飛び込んできた光景に目を疑う。思わず大声が出た○○。


山﨑「○○〜……」

○○『何、どうしたの。』

山﨑「きつい〜……」

○○『何があった……』


レッスン場を見やると、みな一様に疲れた顔をしていた。


山﨑「できるつもりではいたけど実際に教わってみると全然できなかった……」

小島「本当に何もできなくて…このままじゃ冗談抜きで年末に間に合いません……」

中嶋「ユツタンデチナイ…デチナイ……」

向井「ダメじゃ、ゆづがめげ始めとる……」


山﨑たちから話を聞くと、実行委員会でつけた多少の自信を粉々にされるレベルにはやられた模様。


○○『この状況でヘタになんか言って袋叩きに遭うのもな……あ。💡』

的野「どうしたんですか?」

○○『オレにちょっと案が浮かんだ。よーし、1回集合〜!』


○○の合図でズルズルと集まってくるメンバーたち。


○○『えーと、話は聞きました。まあこれも乗り越えるべき試練ということだと思いますが…このままだとみんなのモチベーションに関わるので、オレからひとつ提案があります。』

増本「どうするんですか?」

○○『来週土曜の夜、必ず空けておいてください。』

『??』


メンバーの頭にハテナが浮かんでいるのが彼にもわかった。


○○『ちょっとね、みんなのモチベーションを上げる“何か”をしようと思ってます。時間は追って伝えるんで、よろしくお願いします。』

「はい!」

上野「大丈夫かな?」

○○『はい、ちょっとした連絡だったんで。もう大丈夫です。』

上野「ありがとう。じゃあ、再開しましょう。」

『はい!』


その後、レッスンの様子を片隅で見守った○○だった。




上野「では、今日はこれでおしまいです。ありがとうございました。」

『ありがとうございました!』

上野「あ、プロデューサーコースの相良くんって言ったっけ。ちょっといいかな。」

○○『はい、何でしょうか。』


上野に手招きされてついて行った○○。


上野「君の話も聞かせてもらったんだけど、4月からずっとあの子たちを見てきたんだって?」

○○『はい、そうです。』

上野「4月に初めて会った時と比べて、今のあの子たちは君の目にどう見えてる?」

○○『4月に初めて練習をした時よりは格段に進化してます。ですが、本当に“プロ”としてやっていくとしたら……まだ経験不足かと。』

上野「なるほど。じゃあ、その“経験”を増やすためにはどうすればいいと思う?」

○○『日頃のレッスンや自主練習も大事かとは思います。ですが…やはりお客様にご覧いただくことでこういう言い方はアレですけど洗い出せることもあるかと思います。』

上野「そうだね。そういえば、この学校は文化祭って何月にある?」

○○『文化祭は……11月の頭ですね。』

上野「そこで“中間発表”じゃないけど、1度お客様に観ていただく機会を設けるというのはどうかな。」

○○『僕は構いません。あとは井上先生(ピンキー)にも話をしてみて、って形になるかと。』

上野「分かった。ありがとうね。」

○○『いえいえ。』

上野「それから……あの子たちを頼むよ。守れるのは君だけだから。」

○○『……はい。』

上野「それじゃあ、お疲れ様。」

○○『はい、お疲れ様です。』




そして迎えた土曜日。

芸能科の生徒は夏休みが終わるとともに全員が同じ寮に移り住んでいた。それは○○も例外ではなく寮の2階に1人住んでいる。この日、授業が終わると彼は学校を飛び出した。


大園「あれ?相良くんもう帰ったの?」

松田「ホームルーム終わると同時に飛び出してったよ?」

森田「何かあったのかな??」

増本「何なんでしょうね。」

藤吉「……」




2時間後、寮の食堂にて。


○○『さて……やりますか。』


食堂の扉を閉め切り、“立入禁止”の看板を立て、さらに扉の窓に目張りまでする厳戒態勢の中で作業を始めた○○。彼の目の前には数々の食材たちが並んでいた。


○○『みんなレッスンでヘトヘトだろうから…皆の胃袋をこう…ガシッとつかむようなメシを作りたいよね。』


まずは水とだしを鍋に入れ、その間に具材を切っていく。


○○『レシピは爺ちゃんから教わったらね。あとせっかく送ってもらった“アレ”使わない訳には行かないでしょ。』


手際よく豚バラ肉や野菜類を切り、ごま油で炒めていく。だし汁を沸かしていた鍋から移し、暫く煮立たせる。具材に火が通ったら味噌を溶き入れ、さらにここで隠し味でオイスターソース、醤油、コチュジャンを入れていく。


○○『1品目、豚汁完成!』


次の料理に移る。豆腐を4等分に切り分け、水を切った後に片栗粉につけて油で揚げる。その作業を繰り返しながら別の鍋で作ったつゆを揚げ豆腐の上にかけ、大根おろしとアサツキを添えれば…


○○『揚げ出し豆腐完成っと。』


まだまだ料理は終わらない。続いてはいよいよメインディッシュだ。


○○『ここは疲れが取れる料理で行こう。』


まずはソース作り。梅干しの種を取り出し、ペースト状に叩く。


○○『~♪』


次に大葉をみじん切りにする。ペースト状になった梅干しと大葉、そして厨房から拝借したオリーブオイルを入れ、かき混ぜる。そして味を調える為、酒とみりんを少々加え、一旦味見。


○○『うん…こんなモンかな。』


ここで白身魚を油を引いたフライパンへ投入。火が通ったら塩コショウを軽く掛け、ソテーにした魚を皿に盛り付け、その上からソースをかければ…


○○『梅しそフィッシュソテー完成!……久々にこんな量作ったな。』


達成感に満ちた様子の○○、しかし…


○○『…1人だとやっぱ寂しいな。』


実はちょっと寂しがりな男はそれぞれの皿に分けてメンバーを待つ。


○○『早くこねぇかなー……」




夕方。

食堂に帰宅したメンバー達がやってくる。


田村「お腹空いた〜…」

大沼「私も……」

村井「なんか食べないと元気でないです……」

○○『お疲れー。』

『お疲れ様(です)……』

○○『その様子だと今回もおみまいされたみたいだね……』

武元「TAKAHIROさん厳しい……」


と、ここで幸阪が思い出したように言った


幸阪「そういえば、相良くんから食堂に来てって連絡あったやん、あれ何?」

○○『ああ、あれ?中入ればわかるよ。』

守屋「どういうこと?」

○○『こういうこと!』


そう言って食堂の扉を開ける○○。


『えーっ!!』


そこにはさっきまで作っていた料理たちが湯気を立てて待っていた。


光莉「これ、全部相良くんが作ったの?」

○○『えんぴかご名答、今日はオレが晩ご飯を作りました。』

井上「すごっ!」

村山「先輩料理もできるんだ……」

的野「……」←言葉が出ない

○○『みんなの英気を養えるかどうかは分からないけど、美味しく食べてもらえたら何よりです。』

松田「こうしちゃいられないよ、みんなお礼言わなきゃ!」

『ありがとうございます!!』

○○『いやいや、オレがやりたくてやったんだ。みんなにお礼を言われるほどのことじゃないよ。そんなことより、冷める前に早く食べてちょうだいな。』

小島「そうですね!」

理子「食べましょ食べましょ!!」


思い思いの席に着き、松田が挨拶をする。


松田「いただきます!」

『いただきます!!』


,:('ω' ))ムシャムシャ


○○『どうかな……』

山﨑「美味しい、すっごい美味しいよ○○!!」

谷口「梅のソースとお魚すごい合ってます!!」

○○『良かった〜…』

藤吉「揚げ出し豆腐も優しい味だね。」

○○『口に合ったようで何よりだよ。』

小田倉「私もお菓子は作れるんですけど、こういうちゃんとした料理作れるの、すごい羨ましいです。」

山下「箸が止まらない……(モグモグ」




『ごちそうさまでしたー!!』

松田「ここで相良くんから一言!」

○○『何その無茶ぶり。』

松田「いいからいいから!」

○○『えー、みんなに美味しく食べてもらえたようで作った身としても嬉しく思います。これから先ハードな練習が続くと思いますが、今日養った英気で頑張っていきましょう。いいですか!』

『はい!!』


かくて、○○の作戦は大成功に終わりメンバーたちの英気も養われた。食後、彼が後片付けをしていると……


山﨑「○○!」

○○『山﨑、どうかした?』

山﨑「手伝うよ。」

○○『いや、いいって。』

山﨑「あんなに良いもの食べさせてもらったんだから片付けぐらい手伝わせなさい!」

○○『……わかったよ。』


誰もいない食堂で並んで皿洗いする2人。


山﨑「○○ってさ、昔から料理上手だったよね。」

○○『まあ共働きだったし、必然的に自分でどうにか、ってところはあったからね。』

山﨑「そうなんだ。そういえば、私の誕生日の時にも料理作ってくれたことあったよね。」

○○『あったね。あれオムライスだっけ?』

山﨑「うん。あれが本当に美味しくて、自分でも作れるようになりたい!って思って私も料理するようになったんだ。」

○○『そうだったんだ。』

山﨑「……いつかさ、そういう時が来たら……私の料理、食べてくれる??」

○○『……いつか、ね。』

山﨑「……ありがと。」


幼馴染の時間がゆったり流れていた。そこへ……


石森「先輩!」

○○『石森、どうした??』

石森「さっきのお魚のレシピ、もし良かったら教えてほしいんですけど……」

○○『いいよ。山﨑ごめん、ちょっと洗い物お願い。』

山﨑「任せて!」


ともあれ、彼の目論見通りメンバーのモチベーションも上がり、年末に向けて突き進んでいくのであった。


To be continued…


次回

鋭意執筆中