【第三十八度線の火──和平が世界を焼いた日⑪】
第十部
七月十五日 — 台湾海峡
中国は、最も悪いタイミングで、最も古いカードを切った。
台湾周辺で大規模演習が始まった。
海峡の一部が封鎖され、民間船舶に警告が出された。
同時に、尖閣周辺でも中国海警船の動きが急増した。
北京は言った。
「これは国内問題である」
東京は言った。
「日本の安全保障に直結する重大事態である」
ワシントンは言った。
「インド太平洋の自由と安定を守る」
市場は言葉を失った。
日経平均は、一日で一万二千円下げた。
AI半導体銘柄は売り気配のまま値がつかなかった。
円は乱高下し、金は急騰し、原油は再び跳ねた。
六月に盛り上がった表面張力は、七月に破裂した。

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