【第三十八度線の火──和平が世界を焼いた日⑭】
第十三部
八月十五日 — 日本軍
終戦記念日。
日本の首相は、靖国にも広島にも行かなかった。
代わりに、国会に立った。
「我が国は、戦争を望まない。
しかし、戦争を望まない国が、戦争に備えない理由にはならない。
我々は、二度と侵略しない。
そして、二度と侵略を許さない」
この演説の三日後、憲法改正案が提出された。
自衛隊は、日本軍となった。
その名称変更に、国内外から批判はあった。
だが、東アジアの空はすでに燃えていた。
言葉を変えないことで現実を避けられる時代は、終わっていた。
日本軍の最初の任務は、攻撃ではなかった。
台湾からの避難民保護。
釜山回廊への医療物資輸送。
尖閣周辺の防衛。
在日米軍基地の共同防護。
サイバー攻撃への反撃準備。
南西諸島の住民避難。
それでも世界は言った。
「日本が戻ってきた」
だが、日本人の多くは、こう感じていた。
戻ったのではない。
追い込まれたのだ。

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