アンケート・口コミ分析:フリーテキストはAIの独壇場
「ご意見・ご要望があれば、ご自由にお書きください。」
アンケートの最後のあの欄だ。
満足度の点数はExcelで平均を出せば終わる。
だが自由記述の412件はそうはいかない。
これまでの現実的な選択肢は2つしかなかった。
目についた声を3つ拾って「主なご意見」として資料に貼るか。読まずになかったことにするか。
営業日報の所感欄も同じだ。毎日書かれて誰にも読まれない文章が会社には山ほど眠っている。
ここが、AIの独壇場だ。

なぜ、自由記述はAIの独壇場なのか
人が読み切れなかった量の文章を読めるからだ。
これまでの分析は数字にできるものだけが対象だった。
文章は集計できない。だから捨てられてきた。
AIはこの文章の山を分類し、要約し、温度感まで読む。
しかも第5話で書いたとおり、数字の集計でAIがいちばんよくやる事故は「集計ミス」だった。
文章の分析は事故の質が違う。ミスは「分類のずれ」や「要約の言い過ぎ」として出る。
だから検算のやり方も変わる。件数を数え原文にあたる。この章で型にする。
ひとつだけ先に。
自由記述には個人名や取引先名が書かれていることがある。
第4話の確認を思い出してAIに渡す前に消しておくこと。
どう聞けばいいのか
プロンプトは2つでいい。分類と要約だ。
架空の例で進める。
ある調味料メーカーの顧客アンケート、自由記述412件だと思ってほしい。
プロンプト①:自由記述を分類する
【目的】
412件の声を内容ごとのグループに分けて全体像をつかむ。
【前提データ】
アンケートの自由記述の列(回答番号+本文)。個人名・社名は削除済みのもの。
【プロンプト全文】
以下は顧客アンケートの自由記述です。
回答を内容で分類してください。
条件:
・カテゴリは5〜8個。回答の中身から作ってください(先に決めつけない)
・各カテゴリに、件数と、代表的な回答を2件ずつ添えてください
・1件に複数の内容がある場合は、主な内容のほうに分類してください
・どこにも入らない回答は「その他」にまとめてください
・最後に、全カテゴリの件数の合計が、元の回答数と一致するか確認してください
(ここに自由記述を貼る)
【出力の見方】
カテゴリ名はAIの提案にすぎない。しっくりこなければ「配送と梱包は分けて」と言い直せばいい。
件数の合計が412に戻るか——これが文章版の「件数一致」の検算だ。
【注意点】
合計が合わないまま進めない。重複して数えたか、取りこぼしたか、AIに確認させる。
プロンプト②:カテゴリごとに要約する
【目的】
各カテゴリの中身を会議で1分で説明できる形にする。
【前提データ】
プロンプト①の分類結果(同じチャットの続きでよい)。
【プロンプト全文】
分類した各カテゴリについて、以下をまとめてください。
・3行以内の要約
・ポジティブ/ネガティブ/中立の、おおまかな割合
・原文のまま引用する価値がある「生の声」を1件
注意:
・割合は厳密な数値ではなく「傾向」として示してください
・判断に迷った回答があれば、その件数も教えてください
【出力の見方】
感情の割合は目安と割り切る。要約が原文から言い過ぎていないか、各カテゴリ2〜3件は原文を自分で読む。第5話の「3行突合」の文章版だ。
【注意点】
AIの要約はきれいにまとまりすぎる。角の取れた要約より生の声の引用1件のほうが会議では強い。
落とし穴はどこにあるのか
いちばん危ないのは、声の強さに引きずられることだ。
「二度と買わない」という1件は強い。読んだあなたの心に残る。そのままレポートの見出しになりがちだ。
でも、その隣に「値段が少し高い」という静かな声が42件あったら。
会社が動くべき事実はどちらだろうか。
少数の強い声と多数の静かな声を区別する。 この章で持ち帰ってほしいのは、この一文だ。
区別する方法は簡単だ。
レポートに載せるすべての声に件数を添えること。
声の強さと声の数は、別の軸だ。
両方を見えるようにするのがあなたの仕事になる。
ただし例外をひとつ。
安全や法令に関わる声だけは1件でも、件数と関係なくすぐ上に報告する。
これも「区別」のうちだ。
読まれずに眠っていた412件が初めて会社の判断材料になる。
最初に感動できる分析は、たぶんこれだ。
だから第2部の実践の締めくくりの手前にこの章を置いた。
📝 この章のチェックリスト(3点)
分類後の件数合計が元の回答数と一致しているか
要約の裏取りに各カテゴリ2〜3件の原文を読んだか
レポートの声に件数を添え、強い声と多い声を区別したか
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