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取引先分析:休眠しかけている相手を、先に見つける

「そういえば最近、あの会社から注文が来ていないな」

取引先が数百社ある卸や製造の営業会議でこの台詞が出たときはたいてい手遅れだ。

休眠は、音を立てない。

解約の通知もクレームも来ない。注文の間隔が少しずつ延び、金額が少しずつ減り、気づいたときには競合に切り替わって半年が経っている。

担当者に聞くとこう返ってくる。

「言われてみれば、兆候はありました」

責められない。人の記憶で数百社は守れない。データなら守れる。


何を見れば、「休眠しかけ」が分かるのか

見るのは2つだけでいい。

1つ、最終取引日からの経過日数。

2つ、取引額の推移(前の12ヶ月との比較)。

分析の教科書を開くと、立派な手法の名前が並んでいる。
でも休眠しかけの取引先を見つけるだけなら、この2つの素朴な数字でほぼ足りる。

凝った手法は素朴な方法で一勝してからでいい。

2つの数字を、どう聞くか

プロンプト①:「気にかけリスト」を作る

【目的】
先にフォローすべき取引先の一覧を作る。

【前提データ】
受注明細(取引先名・受注日・金額)。できれば2年分。

【プロンプト全文】

取引先ごとに、次の項目を一覧にしてください。

・最終取引日と、今日までの経過日数
・直近12ヶ月の取引額合計と、その前の12ヶ月の取引額合計、増減率

その上で、「最終取引日から90日以上経過」または「取引額が前の12ヶ月より2割以上減少」のどちらかに当てはまる取引先を抽出し、経過日数の長い順に並べてください

【出力の見方】
これは「離反リスト」ではない。「気にかけリスト」だ。
上から順に営業担当と一件ずつ照合していく。この照合が回り始めた時点で「先に気づく」仕組みの第一歩は動いている。

【注意点】
90日・2割という線は、仮置きだ。
毎週注文が動く商材の90日と年に2回の設備品の90日では意味がまるで違う。自社の平均的な取引間隔に合わせて線を引き直してほしい。

プロンプト②:減っている取引先の、中身を見る

【目的】
取引額が減っている相手について、「全体に減っているのか、特定の商品だけか」を切り分ける。

【前提データ】
同じ受注明細(商品カテゴリの列があるもの)。

【プロンプト全文】

取引額が前の12ヶ月より減少している取引先について、

・減少額の大きい順に並べてください
・それぞれ、どの商品カテゴリの取引が減っているのか内訳を示してください
・「全体的に減っている」のか「特定カテゴリだけ減っている」のかを分類してください

【出力の見方】
特定カテゴリだけ減っているなら、そのカテゴリだけ競合に切り替えられたサインであることが多い。全体に減っているなら、先方の業績や方針の変化が疑わしい。
どちらなのかでかける言葉も打ち手も変わる。

【注意点】
理由はデータでは確定しない。確かめる手段は昔から変わらない。訪問と電話だ。
データの仕事は「誰に先に電話すべきか」を教えるところまでである。

リストができたら、どう動くか

まずそのまま会議に出さないことだ。落とし穴が2つある。

1つ目。
リストをそのまま「テコ入れ先一覧」として配ること。

季節要因、担当交代、先方の設備投資の谷間——事情のある相手が必ず混ざっている。営業担当への一言確認を挟んでから出す。この一手間があなたのリストの信用を作る。

2つ目。
一度作って満足すること。

休眠は毎月静かに進行する。同じプロンプトを月に一度回し続けて初めて「先に見つける」は実現する。回し続ける仕組みの話は#15で書く。

ある卸の会議でこのリストを初めて配ったときのことを聞いた。
ベテランの営業が一件を指してつぶやいたそうだ。
「ここ、先月あいさつに行けばよかったな。」

数字は、過去を責めるためのものではない。次の月に、先に行くためのものだ。

コラム:RFM・LTVという言葉

分析の世界にはRFM分析(最終購買日・購買頻度・購買金額の3つで顧客を分類する手法)やLTV(取引の生涯を通じて生まれる価値)という言葉がある。

実は、今日あなたがやったことはRFMのR(最終購買日)とM(金額)そのものだ。

名前を知らなくてもできる。名前は上司や外部の会社と話すときの通訳として頭の隅に置いておけばいい。


📝 この章のチェックリスト(3点)

  • 「最終取引日」と「取引額の推移」の2つでまずリストを作ったか

  • 90日・2割の線を自社の取引間隔に合わせて引き直したか

  • 電話の前に営業担当への一言確認を挟んだか


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