【第2部】人はなぜ「この人になら話せる」と感じるのか、信頼と影響力を生み出す非言語コミュニケーション
みなさんこんにちは!
行動心理士の僕です。
【第1部】
ボディランゲージは嘘発見器ではないこと
一つの仕草だけでは、人の心理を判断できないこと
普段の状態との違いを見ること
複数の変化をまとめて考えること
そして、違和感を答えではなく質問の入口にすること
について解説しました。
相手の唇が薄くなった
眉間に力が入った
首へ手が伸びた
急に身体が固まった
返答までの時間が長くなった
こうした変化に気づいたとしても、それだけでは相手の本心までは分かりません。
分かるのは、その瞬間、相手の中で何かが変化した可能性までです。
では、その変化について、どのように確認すればよいのでしょうか?
例えば
相手が首へ手を伸ばした瞬間に、
今、首を触りましたよね?
何か隠していますか?
嘘をついているのではありませんか?
と聞けば、相手は警戒するでしょう。
観察が正しかったとしても、聞き方を間違えれば、相手は本音を話さなくなります。
ここで大切になるのが、相手が安心して話せる状態を作ることです。
人は、正しい質問をされたからといって、必ず本音を話すわけではありません。
この人は自分を責めようとしていない
自分の話を最後まで聞いてくれそうだ
ここでは少し本音を話しても大丈夫そうだ
自分の気持ちを理解しようとしてくれている
そう感じたときに、少しずつ心を開きやすくなります。
影響力と聞くと、
人を思いどおりに動かす力
強い言葉で説得する力
自分の意見を押し通す力
相手より優位に立つ力
を想像する方もいるかもしれません。
しかし、僕が今回お伝えしたい影響力は、それとは少し違います。
本当の影響力とは、相手を無理に動かすことではなく、相手が安心して話し、新しい考えを検討できる状態を作ることです。
今回は、
なぜ人は特定の相手にだけ本音を話すのか
姿勢や距離は、相手へ何を伝えているのか
同調はなぜ信頼につながるのか
相手が使った言葉を返すことには、どのような意味があるのか
感情を無視すると、なぜ会話が前へ進まなくなるのか
そして、影響力はどのように作られるのか
について、一緒に考えていきたいと思います。
⚠️注意⚠️
この記事は、非言語コミュニケーション、行動心理学、社会心理学などの知見をもとに、人の信頼や影響力について考察したものです。
人の反応は、一つの理論だけで説明できるものではありません。
同じ姿勢や仕草であっても、
文化
性格
体調
環境
相手との関係性
過去の経験
発達上の特徴
などによって、受け取られ方は異なります。
また、相手と同じ姿勢を取ったり、同じ言葉を使ったりすれば、必ず信頼されるわけではありません。
不自然に動きを真似すると、相手に違和感や不快感を与える可能性もあります。
この記事で紹介する内容は、人の警戒心を意図的に下げて操作するためのものではありません。
相手が安心して話せる環境を作り、誤解を減らし、より良いコミュニケーションへつなげるための知識です。
真心を大切にしながら、一緒に考えていきましょう。
1.影響力は「相手を動かす力」ではない
影響力と聞くと、多くの人は、
相手を説得する
自分の提案を受け入れさせる
相手の行動を変える
自分の考えに従わせる
といったものを想像するかもしれません。
しかし、人は誰かから強く動かされようとすると、反発することがあります。
例えば
店員から、
今買わなければ損をします。
絶対にこちらを選ぶべきです。
皆さんも購入しています。
早く決めてください。
と言われたとします。
その商品に興味があったとしても、急に警戒心が生まれることがあります。
なぜなら、自分の選択を奪われるかもしれないと感じるからです。
一方で、
どのようなことで困っていますか?
どの条件を一番大切にしていますか?
すぐに決めず、比較してから考えてください。
合わない場合には選ばなくても大丈夫です。
と話してくれる人には、安心して相談しやすくなるかもしれません。
この違いは、単に言葉が優しいかどうかだけではありません。
自分の意思が尊重されているかどうかにあります。
ですが、僕が考える影響力とは、相手から選択を奪うことではありません。
相手が安心して情報を受け取り、自分自身で判断できる状態を作ることです。
例えば
友人が転職について悩んでいたとします。
そこで、
今の会社は辞めた方がいい。
絶対に転職するべきだ。
その環境に残る意味はない。
と伝えれば、友人は自分の選択を否定されたように感じるかもしれません。
そうではなく、
今の職場で一番苦しいことは何?
残りたいと思う理由もある?
転職するとしたら、何が不安?
半年後も同じ状態だったら、どう感じると思う?
と聞けば、本人が自分の考えを整理するきっかけになります。
相手が出した答えが、自分の考えと違うこともあるでしょう。
しかし、影響力とは、自分の答えを与えることではありません。
相手が自分で答えを考えられる状態を作ることなのです。
2.人は言葉より先に「安全かどうか」を感じ取る
僕たちは、人と会った瞬間から、相手についてさまざまな情報を受け取っています。
表情
姿勢
身体の向き
距離
手の位置
声の大きさ
話す速度
視線
動きの滑らかさ
こうした情報から、
この人は怒っているのか
急いでいるのか
自分を歓迎しているのか
警戒した方がよいのか
安心して話せそうか
を無意識に考えています。
例えば
相手が、
何でも話してください。
と言っていたとしても、
眉間に力が入っている
腕を強く組んでいる
身体を正面から近づけている
声が低く強い
ほとんど瞬きをせず見つめている
のであれば、話しにくいと感じるかもしれません。
言葉では歓迎していても、身体からは、
間違ったことを言うな
こちらの質問に正しく答えろ
あなたを評価している
という印象を受ける可能性があります。
一方で、
少し距離を取る
身体を斜めに向ける
表情を柔らかくする
穏やかな速さで話す
相手が話し終わるまで待つ
ことで、同じ言葉でも受け取られ方が変わります。
例えば
子どもに、
何があったのか話してくれる?
と聞く場面を考えてみてください。
大人が首を固くし、真正面に立ち、腕を組みながら聞けば、子どもには取り調べのように感じられるかもしれません。
しかし、
少し横に座る
身体を斜めに向ける
同じくらいの目線の高さになる
少し距離を取る
声を柔らかくする
ことで、子どもは話しやすくなる可能性があります。
重要なのは、何と言ったかだけではありません。
どのような身体で伝えたかなのです。
3.正面に立つだけで、会話は変わる
人と話すとき、正面に立つことが丁寧だと思う方もいるかもしれません。
もちろん、相手へ身体を向けることは、関心を示す行動になります。
しかし、真正面から近い距離で向き合う姿勢は、状況によっては圧力を与えることがあります。
人間の身体は、正面に重要な器官が集まっています。
そのため、真正面から向き合うことは、
対決
競争
警戒
評価
と結びつきやすい場面があります。
特に、
相手が緊張している
上下関係がある
話しにくい内容を扱っている
相手が子どもである
相手との距離が近い
という状況では、真正面からの姿勢が心理的な負担になる可能性があります。
例えば
職場で部下に、
最近、何か困っていることはあるか?
と聞くとします。
机を挟み、真正面から相手を見ながら聞けば、部下は、
何か問題を起こしたと思われているのだろうか?
評価に関係する質問なのだろうか?
正しい答えを求められているのだろうか?
と警戒するかもしれません。
一方で、
椅子の角度を少しずらす
真正面ではなく斜めに座る
机の圧迫感を減らす
相手との距離を少し広く取る
ことで、会話の印象が変わることがあります。
斜めの姿勢は、
あなたと対決するつもりはありません
逃げ道を塞ぐつもりはありません
同じ方向を見ながら考えましょう
という印象につながる可能性があります。
もちろん、斜めに座れば必ず本音を話してくれるわけではありません。
しかし、相手の身体が感じる圧力を少し減らすことはできます。
4.頭を少し傾けることが伝えるもの
人の話を聞くとき、頭をわずかに傾けることがあります。
この姿勢は、相手に、
興味を持っている
話を聞こうとしている
警戒していない
もう少し詳しく知りたい
という印象を与えることがあります。
首は、身体の中でも脆弱な場所です。
その首を少し見せる姿勢は、強い警戒状態では現れにくいと考えられます。
そのため、頭をわずかに傾けることで、
あなたを脅威として見ていません
という非言語的なメッセージになる可能性があります。
ただし、大きく傾けすぎたり、常に同じ角度を保ったりすると、不自然に見えることがあります。
大切なのは、形だけを作ることではありません。
本当に相手の話を理解しようとしたときに、自然に身体が反応することです。
例えば
友人が悩みを話しているときに、
なるほど。
それは大変だったね。
その後はどうなったの?
と頭を少し傾けながら聞く姿勢と、
そうなんだ。
と無表情のまま身体を固めて聞く姿勢では、受ける印象が異なります。
相手は、言葉だけではなく、自分の話が身体でも受け止められているかを感じ取っているのです。
5.同調と調和はなぜ信頼を生むのか
親しい人同士が会話をしている様子を見ると、動きや話し方が似てくることがあります。
例えば
同じくらいの速さで話す
同じような姿勢になる
同じタイミングで笑う
身体を前へ傾けるタイミングが重なる
声の大きさが近くなる
使う言葉が似てくる
といったことがあります。
このような状態は、同調や調和として考えることができます。
僕たちは、安心できる相手や親しい相手と一緒にいると、自然にリズムが近づくことがあります。
反対に、
一方が楽しそうに話しているのに、もう一方が無表情で反応しない場合、会話のリズムは合いにくくなります。
一方が非常にゆっくり話しているのに、もう一方が早口で次々と質問すれば、急かされていると感じるかもしれません。
同調とは、あなたと同じ人間ですと示すことではありません。
あなたの状態を無視していませんと伝えることです。
例えば
相手が小さな声で、
実は、最近仕事がうまくいっていなくて。
と話したとします。
こちらが大きな声で、
そうなんですか!それは大変ですね!
と返せば、言葉は共感的でも、相手は少し驚くかもしれません。
そうではなく、相手の声の大きさに近づけて、
そうだったんですね。
最近、特にどのようなことが大変でしたか?
と返した方が、話しやすい場合があります。
相手の感情や話し方の強さへ少し合わせることで、
今のあなたの状態を分かろうとしています
という姿勢を伝えられるのです。
6.相手の動きを真似すればよいわけではない
同調について知ると、
相手が腕を組んだら自分も腕を組む
相手が飲み物を飲んだら自分も飲む
相手が身体を前へ傾けたら自分も傾ける
と考える人がいるかもしれません。
しかし、相手の動きをそのまま真似することが同調ではありません。
不自然に動きを合わせれば、相手は、
真似されている
観察されている
何か意図がある
自分を操作しようとしている
と感じる可能性があります。
また、相手が強く怒っているからといって、同じように怒る必要もありません。
相手が机を叩いたから、自分も机を叩く
相手が大声を出したから、自分も大声を出す
これでは同調ではなく、対立が強まります。
大切なのは、相手の感情がどのくらい強いのかを理解し、その感情を無視しないことです。
例えば
相手が強い怒りを感じている場合、
そんなに怒らないでください。
冷静になってください。
感情的になっても意味がありません。
と最初から落ち着かせようとすると、自分の気持ちを理解してもらえないと感じることがあります。
そこでまず、
その対応をされたら、納得できないですよね。
ずっと我慢していたのですね。
それだけ大切な問題だったということですよね。
と、感情の強さを受け止めます。
その後で、少しずつ声の速度を落とし、会話を整理していきます。
相手の感情へ一度近づき、そこから一緒に落ち着いていく。
これが、相手の動きを表面的に真似することとの違いです。
7.相手が使った言葉をそのまま返す
人の話を聞くとき、僕たちは無意識に相手の言葉を別の表現へ置き換えることがあります。
例えば
相手が、
家族のことが心配です。
と話したとします。
それに対して、
奥様とお子さんのことですね。
と返すことがあります。
内容としては近いかもしれません。
しかし、相手が「家族」という言葉を選んだことには、本人なりの意味がある可能性があります。
家族には、
配偶者
子ども
両親
兄弟
親戚
一緒に暮らしている人
大切にしている存在
など、さまざまな人が含まれるかもしれません。
こちらが勝手に言葉を狭めると、相手の意味とずれる可能性があります。
そこで、
ご家族のことが心配なのですね。
と、相手が使った言葉をそのまま返します。
これは単なる言葉の繰り返しではありません。
あなたが選んだ言葉を大切に受け取っていますと伝える行動です。
例えば
取引先が、
今回の価格が気になっています。
と言ったとします。
こちらが、
費用対効果の問題ですね。
と返すと、相手が本当に気にしている点とずれる可能性があります。
価格そのものが高いのかもしれません
社内の予算が足りないのかもしれません
他社との比較が気になるのかもしれません
価格の根拠を知りたいのかもしれません
そこで、
価格のどのような点が気になっていますか?
と、相手の言葉を使って質問します。
相手の言葉を勝手に解釈せず、その言葉の意味を本人に話してもらう。
この姿勢が、理解への入口になります。
8.声の速さと感情を合わせる
会話では、話している内容だけでなく、
声の高さ
大きさ
速さ
間
リズム
も相手へ影響を与えます。
例えば
相手がゆっくり考えながら話しているのに、
つまり、こういうことですか?
それで、次はどうなったのですか?
結論として何を求めているのですか?
と速いテンポで質問を続ければ、相手は急かされていると感じるかもしれません。
反対に、急いでいる相手に対して、あまりにゆっくり話し続ければ、苛立たせる可能性があります。
まずは相手の速度を観察します。
速く話す人なのか
一つずつ考えて話す人なのか
沈黙を必要とする人なのか
結論から話したい人なのか
背景から説明したい人なのか
を見ます。
そして、相手が受け取りやすい速さで情報を伝えます。
例えば
相手が涙をこらえながら、
何から話せばよいか分からない。
と言ったとします。
そこで、
最初から順番に説明してください。
とすぐに求めると、負担になるかもしれません。
そうではなく、
急がなくて大丈夫です。
話せるところからで構いません。
と、間を置いて伝えます。
沈黙が生まれても、すぐに次の質問で埋めない
相手が言葉を探す時間を待つ
この時間も、相手にとっては、
自分のペースを尊重してもらえている
というメッセージになります。
9.感情を無視すると会話は前へ進まない
仕事や交渉の場面では、
感情を入れずに話しましょう。
数字だけを見ましょう。
個人的な問題は切り離しましょう。
と言われることがあります。
もちろん、感情に任せて判断すれば、問題が大きくなる場合もあります。
しかし、感情を存在しないものとして扱っても、消えるわけではありません。
例えば
相手が会議へ来るまでに、
場所が分からず迷った
駐車場が見つからなかった
受付で長く待たされた
挨拶をしても反応されなかった
予定時刻を過ぎても説明がなかった
という出来事を経験していたとします。
ようやく会議室へ入った相手に、
それでは、早速本題へ入りましょう。
と伝えても、それまでの不快感は残っています。
表面上は話を聞いていても、
自分は大切に扱われていない
この会社は信用できるのだろうか
また待たされるのではないか
早く帰りたい
という思いが、判断に影響する可能性があります。
このようなときには、まず、
お待たせして申し訳ありません。
場所は分かりにくくありませんでしたか?
お越しいただくまで大変ではありませんでしたか?
少し落ち着いてから始めましょう。
と、相手が経験した不快感へ触れる必要があります。
感情を受け止めることは、事実関係をすべて認めることではありません。
相手が今、そのように感じていることを認識することです。
感情を置き去りにしたまま結論だけを急ぐと、会話は表面上進んでも、相手の心は残されたままになります。
10.視線は信頼にも威圧にもなる
アイコンタクトは、信頼や関心を示すものとして説明されることがあります。
確かに、相手が話している間、まったく顔を見ずにスマートフォンや資料ばかり見ていれば、
話を聞いていない
興味がない
早く終わらせたい
という印象を与える可能性があります。
しかし、相手を長時間見続ければよいわけでもありません。
強い視線を外さずに向け続けると、
監視されている
評価されている
威圧されている
逃げられない
と感じさせることがあります。
自然な会話では、視線は動きます。
相手を見る
考えるときに少し外す
再び相手を見る
重要な言葉を伝えるときに視線を合わせる
という変化があります。
例えば
部下に、
何か問題があるなら正直に話してください。
と伝えながら、まったく視線を外さずに見続けたとします。
言葉では正直さを求めていますが、身体からは、
間違ったことを言うな
こちらはすべて見抜いている
あなたの答えを評価する
という圧力を与えるかもしれません。
一方で、
少し視線を外す
資料へ目を向ける
横並びに近い姿勢を取る
ことで、相手が考える余白を作れることがあります。
視線は、見るためだけのものではありません。
相手に考える空間を与えるために、外すことも必要なのです。
11.手が見えることが安心につながる理由
僕たちは、人と会ったときに、相手の手を無意識に確認することがあります。
手には、
物を持つ
触れる
助ける
指し示す
握手する
攻撃する
など、さまざまな役割があります。
そのため、手が見えない状態は、状況によって警戒につながる可能性があります。
例えば
初対面の相手が両手をポケットの奥へ入れたまま、無表情で近づいてきたとします。
特に危険な行動をしていなくても、少し身構える人がいるかもしれません。
一方で、
手が自然に見える
手のひらがときどき見える
言葉と手の動きが一致している
動きが急ではない
場合、安心感につながることがあります。
ただし、手を大きく広げれば信頼されるという意味ではありません。
手の動きが大きすぎたり、相手の空間へ入り込んだりすれば、落ち着かない印象を与えることもあります。
重要なのは、
見えること
自然であること
言葉と一致していること
です。
例えば
口では、
ご意見を聞かせてください。
と言いながら、腕を強く組み、拳を握っていれば、相手は話しにくいでしょう。
一方で、
手を机の上へ自然に置く
相手の方へ手のひらを少し見せる
発言を促すように小さく手を動かす
ことで、受け入れる姿勢を伝えられる可能性があります。
12.相手を「見ている」と伝える
人は、自分の話の内容だけでなく、
自分の存在がどのように扱われているか
も感じ取っています。
例えば
相談している相手が、
パソコンへ入力し続けている
スマートフォンを何度も確認する
時計を見る
返事をしながら別の資料を読む
自分が話し終わる前に答え始める
という状態であれば、
話を聞いてもらえていない
と感じるかもしれません。
内容を正確に記録するためにメモを取っていたとしても、相手にはその意図が伝わらない場合があります。
だからこそ、
大切な点なので少しメモを取ってもよいですか?
今のお話を忘れたくないので、書かせてください。
と一言伝えることが大切です。
そして、書き続けるのではなく、相手を見る時間を持ちます。
観察しながら聞くことで、
表情が変わった
声が小さくなった
話す速度が遅くなった
呼吸が変わった
手の動きが止まった
といった変化にも気づけます。
すべてを書き取ろうとすると、相手の状態を見ることが難しくなります。
重要なのは、言葉を一字一句残すことだけではありません。
相手がどのような状態で、その言葉を話しているかを見ることです。
13.心理的な安心が影響力を作る
ここまで、
姿勢
身体の角度
頭の傾き
同調
言葉
声
感情
視線
手
観察
について考えてきました。
これらに共通しているものがあります。
それは、相手が心理的に安心できる状態を作ることです。
人は、不安や警戒が強い状態では、自分を守ることを優先します。
何を言えば責められないか
どこまで話してよいか
この人を信用してよいか
自分が不利にならないか
早くこの場を離れられないか
と考えます。
その状態では、新しい提案や異なる意見を冷静に受け取ることが難しくなる場合があります。
反対に、
自分の話を遮られない
気持ちを否定されない
考える時間がある
選択肢を奪われない
理解しようとしてもらえている
無理に答えを求められない
と感じられれば、少しずつ警戒が弱まる可能性があります。
例えば
商談で、相手が予算について悩んでいるとします。
そこで、
この条件は本日までです。
今決めなければ価格が上がります。
他社も同じ条件で契約しています。
と迫れば、短期的には契約につながることがあるかもしれません。
しかし、相手は、
急かされて決めた
選択肢を奪われた
十分に考えられなかった
と感じる可能性があります。
一方で、
どの条件が一番気になっていますか?
社内で説明するときに、どこが問題になりそうですか?
今日決めず、一度持ち帰っても構いません。
必要であれば、比較できる資料も用意します。
と伝えれば、安心して検討しやすくなります。
影響力は、相手の警戒心を力で押し下げることではありません。
相手が自分から警戒を解ける状況を作ることです。
そして、相手が安心して話してくれたときには、その情報を相手へ不利に使わないことも大切です。
話してくれた弱さを利用する
不安を刺激して決断を迫る
個人的な情報を交渉材料にする
相手が断りにくい状況を作る
このような使い方をすれば、一時的に相手を動かせても、信頼は失われます。
本当の影響力は、相手の弱さを利用することではありません。
相手が安心して選択できる状態を守ることなのだと思います。
14.次回、交渉に勝つ人は何を支配しているのか
ここまで読んでくださった方は、次の疑問を持ったかもしれません。
相手が安心して話せる状態を作れたとしても、交渉では自分の条件を通さなければならないのではないか?
確かに、交渉には目的があります。
価格
契約条件
給与
役割
期限
責任の範囲
仕事の進め方
など、決めなければならないことがあります。
相手の話を聞くだけでは、交渉は成立しません。
しかし、交渉に勝つために相手を圧倒しようとすると、自分自身が相手のペースに巻き込まれることがあります。
例えば
相手が早口で条件を提示する
大きな声で主張する
今すぐ決めるように迫る
考える時間を与えない
次々と数字を出して混乱させる
机へ資料を強く置く
このような相手に対して、自分も早口になり、大きな声で対抗すれば、相手が作った流れの中に入ることになります。
では、交渉で本当に主導権を持つ人は、何をしているのでしょうか。
次回は、
交渉の目的を事前に書き出すこと
相手の交渉スタイルを観察すること
攻撃的な相手の速度に乗らないこと
時間と間を使うこと
声の高さや話す速度を整えること
手や姿勢で自信を伝えること
相手の感情を先に処理すること
そして、双方が受け入れられる心理的な快適さを作ること
について解説します。
交渉に勝つ人は、相手を支配する人とは限りません。
自分の感情
自分の声
自分の身体
会話の速度
そして、交渉の目的
を見失わない人です。
相手を読む力だけでは、交渉には勝てません。
自分自身を整える力が必要になります。
【第3部】では、【第1部】で解説した観察と、【第2部】で解説した信頼を一つにつなげながら、交渉に勝つとは、本当はどういうことなのかについて解説していきます。
出典
Navarro, J., & Karlins, M.(2008)『What Every BODY Is Saying』
Navarro, J.(2018)『The Dictionary of Body Language』
Navarro, J.(2021)『Be Exceptional』
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Chartrand, T. L., & Bargh, J. A.(1999)『The Chameleon Effect: The Perception-Behavior Link and Social Interaction』
Bernieri, F. J.(1988)『Coordinated Movement and Rapport in Teacher-Student Interactions』
Tronick, E., Als, H., Adamson, L., Wise, S., & Brazelton, T. B.(1978)『The Infant’s Response to Entrapment Between Contradictory Messages in Face-to-Face Interaction』
Burgoon, J. K., Guerrero, L. K., & Floyd, K.(2016)『Nonverbal Communication』
Knapp, M. L., Hall, J. A., & Horgan, T. G.(2013)『Nonverbal Communication in Human Interaction』
最後に
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あと、こちらの記事を取り上げいただきましたので是非読んで見てください🙇
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”I remember…”のやつは5部作となっているのでよければ最初から読んでいただければわかりやすいと思います。
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