【第2部】悪名はなぜ快感になるのか、承認欲求と自己重要感から見る犯罪心理
みなさんこんにちは!
行動心理士の僕です。
昨日は投稿時間が遅れてしまった分、今日は早めに投稿させていただきます🙇
最近仕事がまた忙しくなりつつあります。。。
みなさんもお身体にはお気をつけて無理がないよう😭
前回は、Brian Cohee事件を題材に、なぜ彼が殺人を誇らしげに語っているように見えるのかについて考えてきました。
事件そのものも衝撃的でしたが、僕が最も気になったのは、彼の表情や態度から感じられる「どこか嬉しそうな雰囲気」でした。
もちろん、本当に嬉しかったのかどうかは分かりません。
しかし、映像を見た多くの人が、似たような違和感を覚えています。
そしてその違和感は、単なる残虐性だけでは説明できません。
今回は、なぜ人は悪い意味であっても注目されることに価値を感じるのか。
承認欲求と自己重要感という視点から整理してみたいと思います。
⚠️注意⚠️
ここで紹介する分析は人格診断ではありません。
単一の表情や仕草だけで判断することはできません。
重要なのは、
流れ
文脈
変化
感情の向き先
現実とのズレ
です。
目的は疑うことではなく理解することです。
真心が大事であることを忘れないでください。
1. 人は注目されたい生き物である
まず最初に確認したいことがあります。
承認欲求そのものは悪いものではありません。
誰でも、
認められたい
評価されたい
必要とされたい
そう思います。
家族から
友人から
恋人から
職場から
社会から
これは極めて自然な欲求です。
心理学者アブラハム・マズローも、承認欲求を人間の基本的な欲求の一つとして位置づけています。
つまり、「見てほしい」「認められたい」という気持ちは、誰の中にも存在するのです。
2. 「有名になりたい」と「重要になりたい」は違う
ここで面白い話があります。
多くの人は、有名になりたいのではありません。
本当に欲しいのは、重要な存在だと感じることです。
心理学者のウィル・シュルツが提唱した人間の自尊心(セルフ・エスティーム)を構成する要素として「3つの感」の一つである、自己重要感という言葉が使われます。
自分には価値がある
自分には意味がある
自分は誰かに影響を与えている
そう感じられる状態です。
逆に言えば、
自分は誰からも必要とされていない
自分は取るに足らない存在だ
そう感じる状態は非常に苦しいものです
そして、今回の事件を見ていると、ある疑問が浮かびます。
彼は本当に殺人を求めていたのでしょうか。
それとも、重要な存在になることを求めていたのでしょうか。
3. 悪名でも満たされる欲求
ここで少し考えたいことがあります。
人は、良い意味で注目されることを望みます。
成功
賞賛
尊敬
承認欲求
本来ならそうです。
そうした形で自己価値を感じられることが理想です。
しかし現実には、全ての人がその機会を得られるわけではありません。
心理学者ロイ・バウマイスター(Roy Baumeister)は、人間には「自己価値(self-esteem)」や「自己重要感(sense of significance)」を求める強い欲求があると指摘しています。
人は単に生きるだけではなく、
自分には価値がある
自分は重要な存在だ
と感じたい生き物なのです。
問題は、その欲求が満たされない時です。
社会心理学や犯罪学の研究では、一部の人が「良い評価」よりも「注目そのもの」を優先する場合があることが指摘されています。
つまり、尊敬されることよりも、無視されないことの方が重要になるのです。
これは犯罪者だけの話ではありません。
例えば、学校で問題行動を繰り返す子どもについて研究した教育心理学では、賞賛よりも叱責の方が多くなった結果、
怒られることによって存在感を得る
パターンが形成される場合があることが知られています。
もちろん、全ての問題行動がそうではありません。
しかし、まったく注目されない状態より、否定的な形であっても注目される状態を選ぶことがあるのです。
SNSでの承認欲求がまさにそれだと考えられます。
そして、この考え方は犯罪学でも見られます。
犯罪学者 Jack Katz は『Seductions of Crime』(1988)の中で、犯罪行為を単なる合理的な損得計算ではなく、行為者自身が感じる特別感や高揚感から説明しようとしました。
また、社会心理学者 Arie Kruglanski らが提唱した「Quest for Significance Theory(重要な存在になりたい欲求)」では、
人間は自己重要感を失った時、その感覚を回復するために極端な行動へ向かうことがあると説明しています。
もちろん、これは「だから犯罪をする」という意味ではありません。
しかし、「重要な存在になりたい」という欲求が、時として危険な方向へ向かう可能性があることは、複数の研究分野で議論されているのです。
だからこそ僕は、今回の事件を見ながら考えてしまいます。
彼が本当に求めていたものは、暴力だったのでしょうか。
それとも、誰にも無視されない存在になることだったのでしょうか。
4. なぜ犯罪者は自ら語りたがるのか
ここで【第1部】に戻ります。
なぜ彼は、あれほど話したかったのでしょうか。
普通なら隠したい
忘れたい
話したくない
そう考える人も多いでしょう。
しかし、一部の犯罪者は逆です。
語ります
説明します
注目を集めます
時には、自分の犯行を作品のように語ることさえあります。
もちろん、これだけで何かを断定することはできません。
しかし、そこには一つの可能性があります。
それは、事件そのものより、事件によって得られた注目に価値を感じているという自己顕示欲である可能性です。
もしそうだとすると、僕たちが見ているのは暴力だけではなく、承認欲求の歪んだ形なのかもしれません。
5. 本当に求めていたものは何だったのか
ここまで見てきて、僕はある疑問にたどり着きました。
彼が求めていたのは、本当に殺人だったのでしょうか。
それとも、殺人によって得られる何かだったのでしょうか。
注目
影響力
有名になること
重要人物になること
もしそうだとしたら、この事件は単なる犯罪ではありません。
もっと根深い問題になります。
そしてここから先は、承認欲求だけでは説明できません。
なぜなら、同じように承認欲求を持っていても、ほとんどの人は犯罪をしないからです。
ただし、個人的に思うのが、SNSなどでキラキラ見えるような方でも裏では同じ人だということであり、必ずしも幸せだとも限らないということです。
では、一体何が違うのでしょうか。
なぜある人は、善意で認められようとし、別の人は、悪名によって認められようとするのでしょうか。
その答えを探るためには、さらに深い心理構造を見る必要があります。
次回は、
サイコパシー
ナルシシズム
マキャベリアニズム
という心理学の研究をもとに、
なぜ人は他者を利用し
注目を求め
時に罪悪感なく行動できるのか
そして、私たちはなぜそうした人物を見抜けないのかについて、詳しく考えていきたいと思います。
出典
Abraham Maslow (1943)『A Theory of Human Motivation』
Roy Baumeister (1998)『The Self』
Robert D. Hare (1993)『Without Conscience』
Jack Katz (1988)『Seductions of Crime』
Hare, R. D. (2003)『The Hare Psychopathy Checklist-Revised』
Hare, R. D. (1999)『Without Conscience』
Ekman, P. (2003)『Emotions Revealed』
Vrij, A. (2008)『Detecting Lies and Deceit』
Cleckley, H. (1941)『The Mask of Sanity』
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