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配達員ろること2号 第3.5話 副業配達員ありことしるこ『ろるちゃんに届けたい』


第3.5話 副業配達員ありことしるこ『ろるちゃんに届けたい』


副業で始めた配達だった。
ただのバイト。
本業が終わったあとに少し走るだけの、気楽な仕事。

でも、“ろるちゃん”に出会ってから、
何かが少しだけ、おかしくなった。


夕方のコンビニ前。
スマホを見つめるありこ。
その隣で缶コーヒーを手にしたしるこが、壁にもたれながら話しかける。

「またローズカフェ狙ってんの?」

「うん。そろそろ来るはずだと思って」

「予知能力でもあんの?」

ありこは画面をタップしながら答える。

「昨日、ろるちゃんがインスタに新作ケーキの写真あげてたんだ。
たぶん今日も頼むと思う」

「いやいや、どんだけSNSチェックしてんの。
それで来たら運命って言いたいだけでしょ」

その瞬間、スマホが鳴った。
“ローズカフェ自由が丘 配達予想距離6.2km”
ありこの目が一瞬で輝く。

「……来た」

「……お、マジで?」

「これはもう、俺が行くしかないよね」

ありこは静かに、でも異様なスピードで案件を獲得し、
ヘルメットを被る。

「絶対届ける……ろるちゃんのところに」

「ちょっと怖いわそのテンション」


ローズカフェ自由が丘。
店員から手渡された白い箱には、ピンクのリボンが丁寧にかけられていた。
箱のタグには、淡い手書きの文字でこう書かれていた。

Happy Birthday

ありこは、ふと息を呑む。

(ろるちゃん……誕生日だったっけ……?
いや違う、昨日のストーリーにはそんな素振りは……)

ーーいや、あの曖昧な投稿。
「嬉しいことがあった」って、あれは伏線……!

想像が止まらない。
ありこの脳内では、ろるこの笑顔が全力再生されていた。


配達先は、目黒の高台にある、白い戸建ての一軒家だった。
チャイムを押すと、品のある中年女性がドアを開ける。

「まぁ、ありがとう。孫の誕生日なの」

……孫?

「あっ、はい……おめでとうございます」

ありこは微笑んで、商品を差し出した。
その背後から、バイクに跨ったしるこの声が飛ぶ。

「それ、完全に外したね。“ろるちゃんガチャ”」


帰り道。
夕焼けに染まった空の下、信号待ちのバイク。

しるこがぼそっとつぶやく。

「…本気なんだな、ろるちゃんのこと」

ありこは少しだけ笑って、ヘルメット越しに答える。

「…別に、そういうんじゃないよ。
ただ、笑ってくれたら、それでいいだけ」

「へぇ〜……意外とピュアじゃん」

青になった信号に合わせて、アクセルを回すありこ。
その背中を見ながら、しるこが軽く笑ってつぶやいた。

「ま、次は当たるといいんじゃない、“ろるちゃんガチャ”」


本気なんて、言えるわけがない。
配達のルールに、“気持ち”は含まれてないから。


― 3.5話・完 ―


あとがき

幻の3.5話、ついに公開することができました!!!

実はこの3.5話、1年くらい前にはすでに完成していて、挿絵もできていました。さらに制作ノートのおまけ短編まで完成していたんです(笑)。

「よし、明日公開だ!」

……と思っていた前日に、「一応モデルになったご本人たちに許可を取っておこう」と連絡したところ、まさかの2人ともNG(笑)。

いや、絶対OKもらえると思ってたんですよ。完全に先走りました(笑)。

というのも、ありこさんとしるこさんは、僕よりもろるさんの方が仲が良く、3人の間でもろるにごの話題が出ていたそうなんです。

僕自身も2人とはそれなりに仲良くさせていただいているつもりだったので、「いいですよ!」と二つ返事でOKをもらえるものだと思っていました。

実は、このイラストは『配達員ろること2号』のマガジン用に描いたもので、長い間noteのヘッダーにも使っていました。

見ていただくと分かる通り、ありこ・ろるこ・2号の3人が描かれていて、いかにも三角関係っぽい構図になっています。

そして、このイラストがいつ描かれたかというと……実は連載開始前なんです(笑)。

「あれ? ろるこのパーカー、ピンクじゃなくて黒じゃない?」

と思った方もいるかもしれません。

そうなんです。実は最初のキャラクターデザインでは、ろるこのパーカーは黒でした。

当時はまだキャラクター設定も固まりきっていなくて、2号も黒い服なので「これだと画面で見分けが付きにくいな」と思ったんです。

そこで、第1話を制作している途中で、「せっかくなら女の子らしい色にしよう」と考え、現在のくすんだピンクのパーカーに変更しました。

今ではすっかりろるこのトレードマークになっていますが、もし変更していなかったら、今とは少し違った印象の作品になっていたかもしれません(笑)。

つまり、ありこは最初から2号の恋敵として登場させる予定のキャラクターでした。

3.5話あたりで登場させる構想があって、かなり重要なポジションとして考えていたんです。

サブタイトルの前に「副業配達員ありことしるこ」と付けているのも、その名残です。

この2人を主人公にしたスピンオフシリーズまで考えていたくらいなので(笑)。

その後、何とか説得して、しるこさんからは去年の8月にOKをいただきました。

「この勢いでありこさんも!」

……と思ったんですが、返事は変わらずNO。

それから何度かお願いしてみたものの、お返事は変わりませんでした。

そして最近、新しいシリーズのアイデアが浮かんできて、「やっぱりありこを主人公にした話を書きたいな」と思い、もう一度オファーしてみたんです。

すると、ついにOKのお返事が!

「気が変わる前に公開しよう(笑)」

ということで、このタイミングで世に出すことになりました。

さて、本作は1年前に完成した原稿を、そのまま公開しています。

文章もAIイラストも、一切手を加えていません。

イラストは当時かなり苦労して作った記憶がありますが、今見返しても、当時としてはかなり完成度の高いものになったんじゃないかなと思っています。

AIイラストはこの1年で本当に進化しましたが、逆にこの頃ならではの少し素朴な雰囲気もあって、それはそれで味がありますね。

そして、副業配達員ありことしるこのシリーズですが……。

正直、当時どこまで考えていたか、もうあんまり覚えてません(笑)。

結構いろいろ考えていたはずなんですが、さすがに1年も経つと忘れます(笑)。

ただ一つ言えるのは、この2人は僕の中ではかなり重要なキャラクターです。

これでようやく物語の舞台に立たせることができました。

今後どんな形で活躍していくのか、僕自身も楽しみにしています。


※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

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