発掘調査の人材不足について、少し真面目に考えてみる。❘埋蔵文化財発掘調査員のつぶやき⑤
皆さんこんにちは。
埋蔵文化財発掘調査員をやっています「鯛のたい」です。
今回は少し真面目に、発掘調査の人材不足について考えていこうと思います。
前回はこちら→
このくらいが簡単に書けていいのに。
それではいきましょう。
【どこもかしこも人手不足】
昨今はどの業界も人材不足に悩まされていますよね。
売り手市場などと言われ、新卒の初任給が30万円超えと話題になったのも記憶に新しいです。うらやましい。
この業界で働いていても、やはり人手が足りていないと感じます。
その原因は何でしょうか。
調べれば、様々なデータや見解があると思いますが、実際に働いている者として僕が感じたのは主に次の3つです。
①仕事内容の不透明さ
②受け皿の少なさ
③OJTという幻想
それぞれ見ていきましょう。
【埋蔵文化財関連会社って何してるの?】
はじめに、仕事内容の不透明さについてです。
当たり前の事なのですが、「この仕事をやりたい」と思う人がその業界に入りますよね。
例えば商社であったり、金融、IT、建築、医療、農業などは「やっている仕事内容」が想像しやすいと思います。
では、「埋蔵文化財」を生業としている会社は、どんなことをしているか想像ができますか?
文化財関連なのだから、文化財の調査、修復、保存あたりかな、と考えるでしょうか。
これって、なんだかすごく専門的に感じませんか?
たしかに、そういう専門的な仕事もありますし、専門の会社もあります。
しかし、以前【埋蔵文化財発掘調査員のつぶやき①】で話したように、必ずしも研究者のような知識がなくてはできないという仕事ではないし、専門に学んだものだけが従事できるというものでもありません。
実際、大学で考古学を専攻してない人も調査員にはたくさんいます。
他のどの仕事とも同じように、やりながら学んでいくものなんですよね。
それなのに、「文化財」「調査」という言葉がハードルを上げ、「やってみたい」を「でも無理かな」にしてしまうんです。
これは、業界の発信力、マーケティング力の欠如が原因と言っていいと思います。
こんな会社説明があったとしましょう。
「この会社は、埋蔵文化財関連事業を行っており、発掘調査から報告書作成まで一貫した業務を行っています。また、教育・普及にも力を入れており、小学校への出張授業なども行っています。貴重な文化財を後世に伝える、責任とやりがいのある仕事です。」
…結局、具体的には何やってるんですかね?
もっと実際の業務内容を詳細に説明し、“これならできるかも”と思えるような紹介をすることで、門戸を広げるところから始めなければいけないのではないでしょうか。
これは、2つ目の原因にもつながっています。
【経験者はどこにいる?】
2つ目に、受け皿の少なさです。
埋蔵文化財発掘調査員(学芸員)の求人の文言は大体こんな感じです。
“大学または大学院において、考古学を専攻し 〜中略〜 学芸員の資格を有するもの。または、実務経験を5年以上有するもの”
とくに公務員系はこれがほとんどですね。
定員の問題などで狭き門と言われていますし、実際そのとおりだと思います。
そして、最大の問題は、一般の人は「文化財」の仕事というと、公務員系と考えてしまうところです。
文化財をやりたいと思う考古学専攻以外の人は経験者である必要があるけど、文化財の仕事は公務員が行うもので、公務員採用の募集では専攻者か経験者が条件である。
これって、矛盾してますよね。
考古学を専攻して学芸員を取得したものしか文化財の仕事ができない、そう考えられても仕方ないと思います。
つまり、業界の入口で「考古学専攻ではないから」「経験者ではないから」で、せっかく興味を持ってくれた人をふるい落としてしまっているんですよね。
実際はそんな事なく、未経験者を歓迎している民間会社もそれなりにあるのですが、先に述べた発信力不足により、なかなか浸透していません。
ただ、民間会社もコロナ禍などを通じて採用を控えたこともありましたし、“経験者”や、“学芸員をもっていること”を条件とするところもあります。
これらはその会社のスタンスですので僕があれこれ言うことはできませんが、業界全体として母数を増やすこと、これができないと先細る一方だとは思います。
言い方はあれですが、未経験者でも専攻していなくても、ポテンシャル採用で人を業界に呼び込むことが大切なのではないでしょうか。
【現場で教えるのは…】
つぎに、OJTという幻想についてです。
皆さんOJTってよく聞きますよね。
先輩がマンツーマンで教える、というあれです。
調査員の基本は掘ることですから、初めは調査員補として現場作業に行くことが多いと思います。
そこで、先輩調査員の指導のもと仕事のやり方を覚える。というのが発掘調査におけるOJTになるのですが、これがなかなか難しいのです。
先に述べたように、発掘現場は人手不足であり、調査員が2人も3人いるところは稀です。
ですので、基本的に調査員は1人で作業員さんに指示を出すことになります。
作業員さんだって何人もいるので、ひとりひとりをずっと見ていられるわけではありません。
そこに、仕事の仕方がわからない新人さんが来たらどうなるか、わかりますよね。パンクするって。
仕事を教える、これは簡単ではありません。
“やってみて”と仕事を渡し、適宜チェックを行うというプロセスをとることが難しいんです。
実際は、ベテランの作業員さんと一緒に仕事をしてもらい、徐々に覚えていってもらうほかありません。
また、作業員さんにとっては調査員も調査員補も同じく社員さんですから、質問もされますし、確認も求められます。難しいですね。
さらに、“作業員さんに指示出してやってみて”と言い、“失敗しても経験だ”などと言う輩も偶にいますが、まだやり方がわからないうちに、場合によっては自分の親以上の世代の人に指示出しを行い、失敗して文句を言われる(作業員さんは結構文句を言います)なんて、どう考えてもやらせたやつが悪いし、経験よりも嫌な思い出が残るだけです。やり方が古いんだわ。
つまり何がいいたいかと言うと、人員不足により適切な育成環境が整っていない、ということです。
解決策は1つしかありません。
そう、調査員を増やすことです。
【最後に】
ここまで僕が考える人材不足の原因について考えてきました。
結論としては、
何をしてるかわからないから興味を持てず、門戸が狭く感じるため志願者が減り、人手不足で調査員が育たず、関係者が少ないため発信力が足りない。そのため、一般の人は何をしているか分からないという、負のサイクルに陥っていると思います。
これを解決するには、多くの人に発掘調査という仕事の実態について知ってもらうことが重要です。
少しでもいい。歴史が好きだとか、発掘調査に興味があるだとか。そうした人が発掘調査の仕事をしてみよう!と思い、実際に採用試験を受けてみる。その流れがスムーズになれば。
このnoteはそういう目的ではじめました。
拙い僕の投稿ですが、これを読んでくださった人たちの中から一人でも発掘調査の仕事に携わる方が生まれたら、とても幸せなことです。
いつか、仕事の仲間としてお会いできればと思います。
今回はこれで終わります。
長文をここまで読んでくださりありがとうございました。
次回は、なにか軽い話題でいこうと思います。
もしよければ、“すき”や、コメントで感想をお教えください。
それでは。
※このnoteは個人の感想であり、全て正しいというわけではありません。ご了承下さい。
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