【マンガ】宇宙兄弟 小山宙哉 第32巻
オールカラー版で再読中。
心に響いた素敵な言葉を集めてみます。
114
シャロン月面天文台の建設ミッションを進めるムッタたち。
次の工程はソーラーパネルの設置作業だった。
ムッタはふと思う。
やっていること自体は、地上で働く電気工事士のおじさんとそう変わらない。
けれど、宇宙という舞台のせいか、宇宙服という衣装のせいか、なぜかとんでもないことをしているような感覚に陥っていた。
それこそ、世界を救うために何か大事業を成し遂げているかのような。
だがムッタは、その考えにブレーキをかけた。
そうした大それた使命感に囚われると、自分を見失ってしまう。
だからこそ、意識的に気持ちを律する。
今やっていることが世界のためになるかどうかは、「結果」で決まればいい。
俺はただ一人を思ってやればいい ~南波六太~
あれこれ深く考える必要はない。
今はただ、このミッションが完了したときの、シャロンの笑顔を思い描いていればいいのだ。
115
せりかたちの努力の結晶である「ALSタンパク質結晶」は、補給艦FUJIによって無事に地球へ届けられた。
そして今度は、彼女たち自身の帰還の番だった。
せりかは、父が生きていた頃のことを思い出していた。
ALSを患い、少しずつ力が入らなくなっていった父。
誕生日にクラッカーを引こうとしても引けず、ほんの一瞬、寂しそうな表情を浮かべていたあの日の姿。
やがて宇宙船は大気圏へ突入する。
せりかは、子どもの頃に書いた「未来の自分」宛ての手紙を、左腕のポケットに忍ばせていた。そこには、こんな言葉が綴られていた。
「ISSに乗れましたか? 静かに眠れましたか?」
「実験がうまくいっているとうれしいです。お父さんもきっと喜んでくれてるでしょう」
「それからもしお父さんが、うまくあなたを祝ってあげられなくても許してあげてください」
お父さんはヒモを引く力がないかわりに、心の中で密に祝福してくれてると思います
クラッカー1万発くらいの力強さで ~伊東せりか~
窓の外には、大気圏突入によって生まれるプラズマが広がっていた。
それは宇宙飛行の終わりを告げる、祝福の火花。
けれどせりかにはその光が、父が鳴らしてくれている、無数のクラッカーのように見えた。
せりか達は無事に帰還した。
116
アンディは、NASAに入るときの面接を思い出していた。
その面接官は、自分が尊敬する宇宙飛行士ハガードだった。
身長188cmの彼は「世界一大きい宇宙飛行士」と呼ばれていた人物だ。
アンディ自身も身長190cmの大柄な体格で、表情が乏しいことから周囲に怖がられることが多かった。
それは彼にとって、長年のコンプレックスでもあった。
面接の場で、ハガードはアンディにこう質問した。
「2人以上の誰かに、同じことを褒められた経験はあるか」
そのときのアンディには、答えが出なかった。
けれど後になって思い出したことがある。
幼い頃、母に言われた言葉だ。
「あなたは辛さに鈍感な子だわ。でも悪いことじゃない。誰よりもタフな人間になれる可能性があるってことよ」
そして、ブライアンにもこう言われたことがあった。
「お前はいい意味で鈍感なやつだな。だがそれがお前の強さだ。タフな宇宙飛行士になれるぞ!」
その二つの言葉を、後日アンディはハガードに伝えた。
するとハガードは、迷いなくこう言った。
2人以上が同じことを褒めてくれたなら、それは間違いなくお前の真実だ
信じていいんだ ~ビル・ハガード~
アンディはその言葉を、今も胸に刻んでいる。
「俺が本気の時はもっとガンガン働けるぜ」
シャロン月面天文台建設ミッションでも、その鈍感さという名の強さは存分に発揮されていた。

