【マンガ】宇宙兄弟 小山宙哉 第35巻
オールカラー版で再読中。
心に響いた素敵な言葉を集めてみます。
126
月には今、連結クランプが作動しない「65オリオン」しか帰還船がない。
そのため現状では、ムッタとフィリップは地球へ戻ることができない。
地球では、月に残されたムッタとフィリップを「月から地球へ送る」プロジェクトが立ち上がっていた。
その名は 「From the Moon To the Earth」、通称 FMTE。
これはNASAだけのプロジェクトではない。
「ロシアの帰還船をNASAが受け取り、日本のロケットで日本から打ち上げる」
地球規模の共同プロジェクトだった。
帰還船を打ち上げるのは、民間企業「スイングバイ」。
その技術責任者・福田は、宇宙飛行士選抜試験の閉鎖環境試験でムッタと同じA班だった仲間だ。
ムッタとの関係性もあり、福田はインタビューを受ける。
「南波君を助けるためだと思ったら、いつもとは全然違う緊張感と集中力の高まりがあった」と語り、こう続けた。
打ち上げる時は“無人”ですが、これは我々にとって“有人”ミッションです ~福田 直人~
福田はロシアから届いた帰還船「ソユーズ」にそっと手を触れ、気持ちを込めて言った。
「南波君を乗せてちゃんと帰って来てくれよ」
二人を救い出すという想いを背負ったロケット「アマテラスⅠ」は、見事打ち上げに成功した。
127
接続不良により稼働しなかったシャロン月面天文台。
ムッタとフィリップは、見つかった不良箇所の修理を続けていた。
「点灯式は今日だ」
ムッタの気持ちは高ぶっていた。
しかし不良箇所は思いのほか多い。
二人は淡々と作業をこなしていくが、次第に疲れが見え始める。
フィリップがぽつりと弱音を吐いた。
「途方もない作業をず~っとやってると、これって意味あんのかなーって考えちゃったり」
それに対してムッタは、帰還船を打ち上げてくれた福田たちスイングバイの技術者のことを思い浮かべた。
彼らもまた、何度も何度もシミュレーションを繰り返してきたはずだ。
そしてその積み重ねがあったからこそ、自分たちは助けられることになる。
つまり、そのシミュレーションには間違いなく大きな意味があったのだ。
ムッタは言った。
俺たちもそれでいいんだよ
自分のやっていることの“意味”を探す必要はない
やったことの結果が、誰かの“意味あること”になればいいんだ ~南波六太~
それはフィリップに向けた言葉であり、同時に自分自身へ言い聞かせる言葉でもあった。
そして、ついに修復作業は完了した。
128
修復作業が終わり、あとはシャロン月面天文台のスイッチを入れるだけとなった。
地球ではシャロンがその中継を見つめ、ISSではエディたちジョーカーズの帰還チームも見守っている。
多くの人たちが、この瞬間を待ちわびていた。
点灯を前に、NASAの広報からスピーチを頼まれたムッタ。
「大量のパラソルアンテナの植え込み、ケーブルの連結、投下されたパラソルアンテナの捜索作業、スーパーコンピューター“SHARON”の運搬、クレーター周辺に太陽パネル4基の組み立て、中心部地下に“SHARON”、その上にパワコンと光学望遠鏡」
一つひとつを確かめるように続ける。
「全て繋がりました」
そして、少し間を置いて語った。
私たちが来なければ、ここはただの暗闇だった
私たちが来なければ、ここは動かない景色だった ~南波六太~
ムッタはスイッチを入れた。
次々と灯る光。
すべてが点灯した。
ついに成功したのだ。
ムッタはその場に座り込んだ。
「くたびれたな・・・はは・・・くたびれた」
長く、険しく、そしてかけがえのない道のりの先に、確かな光が灯っていた。
129
“小惑星シャロン”。
それは、亡き夫が発見し、シャロンの名前を付けてくれた天体だった。
地球からでは小さすぎて、これまでその形状をはっきりと捉えることはできなかった。
完成したシャロン月面天文台によって、天文台のエンジニアチームがさっそく観測を行う。
そしてついに、シャロンがずっと見たかった光景が映し出された。
「ありがとう ムッタ・・・ありがとう」
長年胸に抱き続けてきた想いが、静かに、確かに満たされた瞬間だった。
ほどなくして、シャロンからムッタへメッセージが届く。
そこには感謝の言葉とともに、少年の頃に交わした何気ない約束を、こんなにも大切なものとして叶えてくれたことへの喜びが綴られていた。
「必ず帰ってきてください
帰ってもう一度笑顔を見せてください
ついでにハグもしてくれたら最高です」
そして、こう続いていた。
これは私とあなたとの新たな約束です ~金子 シャロン~
約束。
ムッタにとってそれは、何よりも、守るべきものなのだ。

