【マンガ】宇宙兄弟 小山宙哉 第33巻
オールカラー版で再読中。
心に響いた素敵な言葉を集めてみます。
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遠く離れた地球の両親と通信するムッタ。
陽気な母は最近流行っている謎のアニメの話をし、父は今日の晩ご飯の話をする。
ベティは、息子が貴重な通信時間よりも、これから始まるアニメを優先してしまい、あまり会話ができなかったと嘆いていた。
宇宙に来たばかりの頃は、あんなに通信を楽しみにしてくれていたのに。
二人とも少し寂しそうだ。
それに対し、ベテランのエディは笑って言った。自分の息子も同じようなものだと。
「これは実証済み」だという。
そんな和やかな空気の中、夕食の席でエディはジョーカーズのメンバーに大事な話を切り出した。
帰還の日程が決まったという。急だが、5日後だ。
太陽活動が活発化しており、不安定な状態が続いている。
フレアの影響を真正面から受ける前にミッションを終え、帰還する。
それがNASA本部の判断だった。
残された5日間で、シャロン月面天文台の完成と帰還準備を同時に進めなければならない。とてもハードな5日間になる。
だがエディは、このチームならやり遂げられると確信していた。
だからこそ、地球で待つ家族には不安要素は伝えない。
いつも通り、好きなアニメでも見ながら平和に待っていてもらおう、とメンバーに話した。
我々が地球に帰った時飛び込む場所はそんな平和の中がいい
これは実証済みだ ~エディ・ジェイ~
余計な心配はかけなくていい。
何度も宇宙を経験してきたベテランだからこそ言える言葉だった。
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エディは、生涯最後となるEVAに臨んでいた。
亡き弟ブライアンが残していった酸素生成装置「BRAIAN」で酸素を補給する。
自分たち兄弟の“宇宙”は、ここで終わる。
だがそれは終点ではない。
後から来る者たちへ、この道をつなげていく、それが自分たちの仕事だと、エディは思っていた。
作業中、エディに質問が飛ぶ。
最後の船外活動はどんな気分なのか、感慨深いものなのか、と。
それに対しエディは淡々と答えた。
毎回毎回これが最後かもしれないって思ってやってきたからな
いつもと同じだ
なんら変わらん ~エディ・ジェイ~
その言葉を聞いたムッタは、静かに気持ちを引き締める。そうだよな、と。
作業が無事終了したエディに、ムッタはいつもと同じ調子で声をかけた。
「お疲れ様 エディ」
NASAからの通信で、ハガードが問いかける。
「どうだ気分は? 名残惜しいか?」
エディは少しも気取らず、いつも通りに答えた。
「いやいあ 十~分楽しんだよ 早く基地に戻ってコーヒーでも飲みたいね」
最後まで、変わらないエディだった。
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月離脱用ステージ「ライブラ」の3番タンクの圧力が低下しているとの連絡がNASAから入った。
帰還のためにも確認が必要で、場合によっては修理も想定される。
そのため本日のミッションは二手に分かれることになり、カルロとベティが点検班を任される。
バギーでライブラへ向かう途中、ベティは月から見える星空を、いつか息子に説明してあげたいが、言葉で表現するのが難しいと感慨深げに話した。
するとカルロはいつもの調子で、思いつくまま全部言葉にすればいいと言い、「果てしなく続く深いミスティックブラックの声に呼応する煌びやかな・・・」と、長い説明を始める。
それに対してベティは呆れたように言った。
「あんたの言葉は全然入ってこない 重ねりゃいいってもんじゃないでしょ」
そして続けて、
「気持ちが入ってなきゃ伝わんないのよ」
現場に到着し、ライブラを点検するベティ。
「何か筋みたいなのがある」と違和感を口にした、その直後だった。
タンクが破裂し、爆風でベティは吹き飛ばされ、激しい勢いで岩に衝突する。
うずくまるベティのもとへ、カルロが全力で駆け寄った。
宇宙服に損傷はないが、中で負傷している可能性が高い。
苦しそうなベティを抱え、カルロはバギーに乗せて基地へと急ぐ。
スピードを上げるバギーの中で、カルロは真剣な表情で言った。
「大丈夫だベティ 俺が助ける」
そこに、いつものお調子者のカルロはいなかった。
ハアハアと息を切らしながらも、ベティは応える。
珍しく言葉少なめね
いいんじゃない
今のは伝わったわ ~ベティ・レイン~
言葉は少なくても、確かに気持ちは届いていた。
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基地に到着すると、緊急でベティの手術が行われた。
執刀したのはカルロ。
初めての手術だったが、ベティを不安にさせることなく、落ち着いた手つきで無事にやり遂げた。
しかし、これ以上の検査や治療は月の医療設備では不可能だった。
NASAは予定を前倒し、即時帰還させる判断を下す。
ところが、そこに政府側から待ったがかかる。
巨額の税金を投入した結果が「ミッション失敗、負傷したクルーを連れて帰還」では、今後の予算確保が難しくなるというのだ。
もちろんベティの命が最優先であることに変わりはないが、政府の意向にNASAは逆らえない。
NASAは苦渋の決断として、チームを二つに分けることを決めた。
帰還チーム4名、建設チーム2名。
問題は月に残る建設チームを誰にするのかだった。
予備の宇宙機はあるものの、ミッション完了後に確実に帰還できる保証はない。
太陽フレアの影響も、どう出るか分からない状況だった。
医療担当のカルロとベティは、当然帰還チームに入る。
残る4人の中から、建設チームを選ばなければならなかった。
「残る意思のある者はいるか?」
キャプテンのエディが問いかけると、4人全員が手を挙げた。
その中でムッタは、誰よりも高く手を挙げ、フィリップは両手を挙げて応えた。
二人は、自分たちが残る覚悟をすでに決めていたのだ。
それでもエディは迷った。
無事に帰れるか分からないミッションに、若い二人を残すわけにはいかない。
それなら老い先短い自分が残るべきではないか、そう考えていた。
悩むエディに、ムッタは静かに言った。
決めるなら“意思の強さ”で選んで欲しい
さっき挙げた“手の高さ” ~南波六太~
その言葉に、エディは覚悟を決めた。
二人に任せよう。
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建設チームのリーダーはムッタが務めることになった。
ジョーカーズは互いの無事と、地球での再会を固く約束する。
別れの時、エディはムッタに一本の腕時計を手渡した。
それは、自分が宇宙飛行士になった年からずっと身につけてきたものだった。
「こいつはある意味ミッションより重大だぞ」
そう言って、エディは続ける。
これはやるんじゃない、あくまで“貸し”だと。
地球に帰って必ず返せ
約束だ ~エディ・ジェイ~
その言葉を胸に刻み、ムッタは時計を受け取った。
やがて帰還チームは月を離れていく。
その背中を見送りながら、ムッタは思った。
「ありがとうエディ 最後に一番重要な任務をくれて」
それは、
“約束”を果たすための任務だった。

