Isaiah Rashadが語る「防弾」の境地
2026年5月。5年ぶりのアルバム"It's Been Awful"を携えたIsaiah Rashadは、メディアをまわりながら一貫して率直だった。Breakfast ClubでもHOT 97 Nessa on Airでも、彼は穏やかに座り、かつてないほど自分の内側を開いて見せた。
HOT 97で「今、どんな状態か」と問われたとき、Isaiah Rashadは静かにこう答えた。「この年齢になったら、俺のことを何も奪えるものはないと思う。俺に言えるどんな言葉も、俺自身がすでに自分に言えている。防弾(bulletproof)の気分だ。」34年かけてたどり着いた感覚だと、彼は付け加えた。
「防弾」という言葉は、無傷でいることを意味しない。何度も倒れ、何度も自分自身を見失い、それでも前を向き続けた果てに生まれる感覚だ。2026年春の一連のインタビューが描き出すのは、そういう人間の姿だ。
アルバムタイトルは「告白」だ
Breakfast Clubで「アルバムタイトルはまるで告白みたいだ。何が最悪だったんだ、業界か、私生活か?」と問いかけると、Isaiah Rashadはすぐに答えた。「あらゆることの複合だ。アーティストとしての期待と、自分の男性性の解体。自分を知っていくことがたくさんあった。」
アルバムはもともと"All My Heroes Are Junkies"(俺のヒーローたちは全員ジャンキーだ)という名前になるはずだった。しかしHOT 97でIsaiah Rashadはこう語った。「それは直接すぎると感じた。だから"It's Been Awful"にした。これなら今この瞬間、地球上のすべての人間が自分なりの意味を見出せる。もっとユニバーサルな言葉だ。」
アルバムタイトルが指し示す「最悪」は、Isaiah Rashadの個人的な苦難だけにとどまらない。HOT 97で話すIsaiah Rashadの言葉は、自分自身の傷と、それを包むより広い社会的な痛みの両方を同時に指していた。「個人の権利が今まさに俎上に載せられている。だから誰もが自分なりの『最悪だった』を持てる。」
しかしこの「最悪」を語る言葉が、決して沈鬱なトーンに流れないのは、「神意」への信頼があるからだ。Chattanoogaの教会で育ち、成長してからは礼拝から遠ざかった彼だが、Breakfast Clubでこう言い切った。「俺の人生はずっと何かに導かれていると感じている。ただ金を稼ぐためのアーティストじゃない。何かを変えるためにここにいる。だから起きたことは起きるべくして起きた。俺の人生はそれで良くなった。」
HOT 97のインタビューの時期、Isaiah Rashadが自身のSNSに投稿した言葉はこうだった。「ここへ辿り着くのは、美しい混乱の旅だった。何年もかけて様々な帽子と顔を試し、ようやく自分が居心地よくいられる皮膚を見つけた。このアルバムは、そこへ辿り着く過程への愛情の手紙だ。そこを超えて、自分を守り続けてくれたもの、音楽へ、正気のために注ぎ込めるものへ、恋に落ちることへの手紙だ。」
タイムカプセルとしてのアルバム観も、Breakfast Clubのラストで語られた。「21歳から24歳、それから29歳から30歳にかけて、そして今34歳。それぞれのプロジェクトが各時代を封じ込めたタイムカプセルだ。今、俺は20代に思い描いていたような、音楽と人生への感覚をようやく手にしている。進み続ける意欲がある。」
「最初に自分を裏切ったのは自分だ」
2022年、Isaiah Rashadの性的な動画が流出した。プライベートな場面を録画されたその映像は、彼が双性愛者または「性的に流動的」であることを世間に知らせることになった。タイミングは最悪だった。その流出は前作"The House Is Burning"のリリース後に起きていたのだ。
Breakfast Clubで「それは君を壊したか、解放したか、それとも両方か」と問われ、Isaiah Rashadは「両方だ」と答えた。「自分の物語を誰かにコントロールされる状況に、自分を無責任に置いた。そこに最大の後悔がある。」
「バイセクシャルの黒人男性であることのマニュアルは、どこにもない」とIsaiah Rashadは率直に語った。セクシャリティを秘匿していたわけでもなく、積極的に公表する準備があったわけでもなかった。ただ「どのように排斥されずにいるか」がわからなかったというのが、正直なところだった。「隠していたのは自分らしさではなく、自分を無責任な状況に置き続けた。あらゆる薬物や影響の下に自分を置いていた」と付け加えた。
HOT 97でNessaが「あなたを裏切ったのは誰か」と問うと、Isaiah Rashadは即座に言った。「俺が最初に自分を裏切った。俺から出て行ったものは、全部俺が許可して出て行ったものだ。俺は被害者だとは思わない。」このトーンは、自己否定でも自己糾弾でもない。「車を飛ばしすぎて警察に止められたら、それは俺の責任だ。言い訳は何も生み出さない」という、清算に向けた静かな覚悟だ。
この自己責任の論理は、周囲の反応の話にも繋がる。TDEのスタッフからの第一反応は「財布は持つな。それだけだ。愛してるよ、ただ財布持って来んな」だった。TDEの創設者Anthony Tiffith、通称Topからは「手を菓子壺に突っ込むな」という一言があった。過剰でも排除でもない、親のような介入だった。
さらにHOT 97では、TDEが一時期Isaiah Rashadを契約解除することも示唆していたという話が出た。「でもそれは『お前は使い物にならない』という意味じゃなかった。『回復の道に向かうために、一旦座らせる』という意味の、強い脅しだった。愛情があったから、そういう行動を取ったんだ。」TDEというレーベルのコミュニティとしての側面については、こちらの記事が詳しい。
他者への非難をやめたとき、アルバムは自然に転がり始めた。「言い訳をやめた瞬間に、アルバムがただ動き出した」とHOT 97でIsaiah Rashadは語った。
弟と共に歩んだ、底からの回復
流出事件の後、Isaiah Rashadは一人ではなかった。弟のKeemことKeem the CipherがCaliforniaに移り住んできた。「2年半から3年、俺のソーバーバディ(依存症回復の仲間)だ」とHOT 97でIsaiah Rashadは語った。Nessaが「弟のことが大好きすぎる」と声を上げると、Isaiah Rashadは笑いながら「あいつは俺の一番年下の兄貴みたいなもんだ」と言った。
その弟Keem the Cipherは27歳で、"It's Been Awful"の半数のトラックをプロデュースした。Isaiah Rashadが最初の3作で組んだプロデューサー陣が彼を鍛えた。Isaiah Rashadは自分なりのブートキャンプで弟を育てたという。「1日に7から10ビートを作り続けている。それは俺が頼んだわけじゃなく、朝起きたら勝手にやっている。」
アルバムの楽曲は、この回復の時間の直接的な反映だ。8曲目の"Do I Look High?"はその最たる例だ。Isaiah RashadはHOT 97で「第2バースを6ヶ月先に書き、第1バースを最後に書いた。ずっとそのままにしておいたのは、あまりにも正直すぎると感じたからだ」と語った。そして「まさにその通りのことについての曲だ」と端的に認めた。曲のタイトルがそのまま問いになっている。
I only ask one thing
Don't lie to me
Look at my eyes
Do I look high?
「俺はただ一つだけ頼む
嘘はつかないでくれ
俺の目を見てくれ
俺はハイに見えるか?」
中毒者が最終的に直面するこの問いは、「正直さ」と「欺瞞」の間で引き裂かれる状態を凝縮している。
12曲目の"Act Normal"について聞かれたとき、Isaiah Rashadは「書きながら泣いた」と言った。「自分が常に自分に語りかけていることを、人前で書き落とすのが苦痛だった。それが一番難しかった。」
依存症への向き合い方は、Breakfast Clubでも一貫している。「ジャンキーのことを、ジャンキーほど知っている人間はいない。俺はAAに通っている。別のジャンキーに『ジャンキー』と呼ばれることに、居心地の良さがある。薬物を一度もやっていない人間には、俺のことを語る資格はない。でも依存症者同士ならわかり合える。アルコールを今日は飲まなくても、俺は一生アルコール依存症だ。」
依存症が遺伝的な側面を持つことも認める。「うちの家族は両方の側からそういう素因がある。母親が昔から『アルコールに気をつけろ』と言っていた。」大学時代、Middle Tennessee State University(MTSU)ではEverclearという極度に度数の高い酒に火をつけて飲む儀式が「最初の木曜日の洗礼」として存在した。21歳でTDEと契約し、ブログ時代の音楽産業に没入した後、問題はより深刻になった。それでも今、弟と共に前を向いている。
「防弾」の境地とコミュニティへの奉仕
Breakfast Clubで、Isaiah Rashadはヒップホップの「称えるもの」について鋭く切り込んだ。「称えられているのは乱交的な性質と冷酷さだ。良い父親でいることは称えられない。感情によってコミュニティをリードすることも称えられない。本物の男は泣く。本物の男は感じる。本物の男は自分を疑問視する。」
ヒップホップが称揚する男性像と、Isaiah Rashadが体現したい男性像は根本から違う。この乖離を直視することが、アルバムの核心にある問いの一つだ。「ひたすら自信満々で、傷つかないふりをして生きていると、子どもが間違った方向に行く可能性がある。あの強さに見えるキャラクターの中に自分を閉じ込めなければならない、と感じさせてしまう。」
一方でHOT 97でのIsaiah Rashadは、自己開示を単なる告白にとどめない。「コミュニティのためにやっている。エネルギーを与えて受け取ること。与えれば与えるほど、受け取る。これはある意味で説教だ。教会で育ったけれど、だんだん行かなくなった俺にとって、これが一番近いものだ。」
「外から見ると、お前はちゃんとしてるように見える。でも誰も電話したくないときに誰かに電話しなければならなかったこと、一人でいたいという本能に逆らって外に出て行かなければいけなかったこと、インタビューへ向かわなければいけなかったこと、散歩に行かなければいけなかったこと。そういうことの積み重ねが、しんどいんだ。それが"It's Been Awful"の意味だ。」
このコミュニティへの奉仕という感覚は、「防弾」の境地の正体でもある。HOT 97で「今、自己主導権はあるか?」と問われたとき、Isaiah Rashadは「ある。完全に」と答えた。「かつては自分の制限に閉じ込められていると感じていた。でも今はある。」主導権とは、Isaiah Rashadにとって「動く自由、選択する自由」だ。
「良いことも運命だと数えるが、悪いことも運命だ」と彼はいう。流出という出来事も、依存症との闘いも、弟との回復の日々も、全てが「ここへ向かうべくして起きた」ことの一部だと受け取っている。「FedExの仕事を探していて、偶然スタジオに辿り着いて、そこで最初の6、7曲を書いた。それが契約につながった。あの一連の出来事がなければ今の俺はない。だから悪いことも、俺が向かうべき場所へ導くものだ。」
「縦になっている。呼吸している。前に進んでいる。」それが「防弾」の実態だ。Isaiah Rashadは今日、防弾だ。明日はまた改めて確認する、とBreakfast Clubで笑いながら言った。
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