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泰夢(たいむ)のお話:70

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いったい泰夢は何を思って、何を決意したのでしょうか……?
それでは、どうぞ!!

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 つり橋へ続く階だんの一番上、つまりバスが通る道路のはしにあるところに泰夢(たいむ)は立っていた。
 何度も折り返してずっと下にあるつり橋にまで続いている階だんの、その最初の曲がるところにピョンピョンと調子よく飛びながら下りていく華恋(かれん)の後ろすがたが見えた。
(ホントに、スゲーじゃん……)
 だんが高かったり低かったり、ゆがんでくずれたりしているのに、かなりの早さで下りていく華恋もすごかったけれども、泰夢が思わず目をうばわれてしまったのはそれではなく、川のある場所までの深さだった。
 全体を見ると、道路からかなり深いガケになっていて、その一番底のところに川が流れているのが見える。
 川のすぐ近くのところにはゴツゴツとした大きな岩があった。
 もう少し下って川が曲がって広くなっているところには、小さな石がしきつめられたようになっていて、太陽の光でそこだけ白っぽく見えた。
 そういうのもあってか、川の水自体は黒くキラキラと見えた。
 曲がって広くなっているところのさらに先は、再びゴツゴツ岩のゾーンになっていて、そこでは流れが急になっているらしく、水は黒ではなく白いしぶきとザザザァーっという音を立てていた。
 そこにおおいかぶさるように、太い枝とそこに生いしげった深い緑色の葉っぱを、川の右側と左側からもっさりとのばしているたくさんの木々が見え、それがずーっと、泰夢から見えて川下にも、そして首を反対側にして見て川上の方にもえんえんと続いている。
 その様子から見れば、自分と華恋がわたろうとしているつり橋なんていうのは、ほんの細いひものようなもので、階だんの一番下から川の向こう岸へ続いて、そこにまたつづら折りの階だんになっていた。
 こんな細いひもみたいなつり橋で、川の向こうにわたれてしまうのだから本当に大したものだと泰夢は思う。
 今も見た通り、川まではスゴいガケになっているし、そのガケは生いしげった木でおおわれていたし、無事に下の川までたどり着いたとしても、そこから川をわたらなくてはならない。
 ここからじゃ分からないけれども、遠くにドドドドーっと鳴っている川の音からするときっと水の量も多いだろうから、これをわたるのにだって相当に苦労するはずだ。
(……ここに橋を作ろうって思った人、スゲーよな)
 これがなければ、華恋の家がある川の向こう側へ行こうと思ったら、ここよりもずっと川上にある、バスが通れるあの大きな橋のところまで何時間も歩かなくてはならないのだ。
(いや……まてよ、
 あのおっきな橋だってさ、最初からあったワケじゃないじゃん?
 ━━っていうかさ、日本にある全部の橋って、めっちゃスゴくねぇ?)
 うでを組んでウンウンとうなずくようにする泰夢。
 いつも何も考えずに通ってしまう橋も、こうしてよく考えてみると本当に便利なものであり、そして川をこえるというのは実はとてもむずかしくて大変なことなのだと思った。
 そうして、これをなんとかしようとして、ちえをしぼって考えて橋を作ってしまった人間のすごさに改めておどろく。
(うーん、世の中ってさ、
 ホントはスゴいものだらけなんだな……)
 よく考えれば、橋だけじゃなくて、家や学校、ビルなんかの建物、道路や線路もそうだし、そこを走る自動車や電車だってそうだ。
 本や図かんで建設物や建造物の成り立ちを見たり読んだりして、その時もスゴいなと思うけれども、こうして目の前で見て自分で考えると、本当のスゴさや大変さをもっとしっかりと感じることができるように思えた。
(…………)
 だからさっき見て、正直「ボロボロでしょぼいな」と思ってしまったこの石の階だって、ガケにそってなるべく平らにして、そこに切った木を打ちこんで、ちょうどいい大きさの石をさがしてきてキレイにならべて……というのがあって、作られたのにまちがいないのだ。
「転ばないように、気をつけてね」
 と、階だんの下の方で華恋の声がした。
 華恋はもう最初の折り返しの広い場所についていて、両手を口に当てて泰夢をよんでいた。
「……マジか。
 華恋ちゃんってば、もう先に行っちゃってるじゃん!
 これじゃ、またおこられちゃうよ」
 おでこにシワを作った華恋の顔が頭にうかんで、かたをすくめる。
 早く行かないともっと機げんが悪くなるだろう。
 例のボロボロの階だんの方を見て、それから自分の足の下にあるガケの方を見る。
 ガケはもちろん階だんよりも急坂で、草や木がたくさん生えている。
 階だんは下りるのが大変そうで、華恋のところまでゆるやかにななめに下っているので、長くかかる気がした。
 一方、足の下のガケはもちろん大変だけれども、真っ直ぐに下にあるのでそっちの方が短そうだった。
 ということは、このままガケを下りれば華恋よりもずっと先に着く。なにしろ階だんはガケを右へ左へと大きく折り返しているのだ。
「ボロボロの階だんと、急なガケかぁ…
 どっちもメンドウそうだしさ、
 だったらさ、短い方が絶対にいいじゃん!」
 両手を上げて、ヨシっと気合いを入れると、そのまま折り返しの所にいる華恋へ大きく手をふる。
「━━━━!」
 泰夢のヘンな動きに気づいた華恋が何かを言いかけたが、それよりも早く、親指を立ててビシッとポーズを決めた泰夢は、まっすぐ下のガケに向かってひらりとその身をおどらせた。
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……泰夢、やっぱりやっちゃいましたね。
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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