泰夢(たいむ)のお話:45
ゲーム対決を持ちかけて来たカズくん…泰夢はどうするのでしょう?
それでは、どうぞ!!
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学習スクールの長づくえをはさんだ向こうとこっちで、泰夢(たいむ)とカズくんの目がバッチリと合う。
ニヤニヤとわらいながら、ワザとけしかけてくるようにゲーム機をヒラヒラとさせるカズくんの様子に泰夢は少しハラがたって、そして、自分の右と左からガヤガヤの二人がさらにキーキーとさわぎたててくるので、もっとハラがたった。
「おい、どうした……?
負けるのがこわくて、ビビってんのか?」
「━━うるせーよ。
そんなワケねーじゃん!」
カズくんが言うのにそう返して、手に持っているゲーム機にチラッと目をやると、そこにはいま泰夢たちの間でも人気がある対戦バトルゲームのタイトル画面が見えた。
それは、泰夢が華恋(かれん)にそっくりだ、と言ったキャラがいるゲームだった。
ここに来て最初の日の夜に華恋が自分に見せてくれた、本当にカッコよくて思わずはく手をしてしまったあの空手の型を思い出す。
(……ホント、スゴかったよなぁ。
華恋ちゃんってやっぱカッコイイしさ、
たぶん学校でもさ、きっと人気ある方なのかもな……)
やるのかよ、やんねーのかよ!と、カズくんが鼻をふくらめてニヤニヤしながら声をあらげるのを見て泰夢はそう思った。
自分の勝手な想像━━しかし、泰夢の中ではこれは確実にそうだと思えることで、さっきカズくんに華恋の事を話した時の、あの顔色の変わり具合を目の前で見ていればイッパツでわかることだった━━だけれども、同じ学校の男子からもそんな風に思われるのは、やっぱり人気があるのだろう。
「なぁ、どうしてもやんなきゃダメ?
オレってさ、ホントに大事な用事があるんだけどさ……」
カズくんとガヤガヤたちの三人にさわがれ、つめよられながら泰夢がため息をもらす。
もちろんその用事とは自分の学校のクラスメートや友だちとゲームをするためで、それをちゃんと伝えようとも思ったのだけれども、自分とゲームをしろとさわいでいるカズくんに、これからゲームをするから、カズくんとはゲームができないと説明すると、もっとややこしい事になりそうなので、さすがに話さなかった。
(ちぇ、いっそのこと今日はもうあきらめて、
ここでカズくんと二人でゲームでも━━って、そりゃないか)
カズくんが持っているゲームは、泰夢のゲーム機の中にも入っている。
ゲーム好きな泰夢が得意としているタイトルの一つで、友だちともよく対戦をしたり、友だちじゃない人たちとも戦ったりしていた。
このゲームはネットに接続していろんな人と遊ぶことができ、その中で泰夢は、世界中にいるたくさんのプレイヤーを相手に、何度も連続で勝ち続けたことがあってちょっと知られているのだ。
(カズくんってもしかして、オレと友だちになりたいのかな?
……いや、やっぱちがうよな。
このカンジってさ、完全にオレをあおってんじゃん)
カズくんの態度はいかにもちょう発してくる感じだったし、子分であるガヤガヤの二人も、
「━━おまえ、知ってるか?
カズくんって、めっちゃ強いんだぞ!」
「ウチのクラスん中じゃ、イチバンの最強だしよ、
たぶん学校でも勝てるヤツがいない、ムテキのゲーマーだぜ!」
と、手足をバタバタさせこうふんして大さわぎをする。
(うわぁ……
コイツら、マジでめんどうくさいじゃん。
ホント、あんまりさわいでほししくないんだけどさ……)
カズくん率いる三人組が調子に乗って声を上げるので、教室のなかでそれぞれお弁当を食べたり、おしゃべりをしたりしていた他の生徒たちも、泰夢のいる方へチラチラと目を向けはじめ、そのうちになんだなんだと言いながら少しずつ集まってきた。
これを見たカズくんたちは、おたがいに目で合図をしてうなずくと、さらに大きな声で、
「おーい! いまから対戦するぞー!」
「カズくんが、泰夢あいてにスゴテクを見せるってさ!」
と、勢いよくまくしたて、教室にいる生徒たちを手招きした。
(……ちくしょー、そういうことか!)
ここに来て、泰夢はようやくピンときた。
どうやらカズくんはゲームで泰夢を負かし、自分の力をみんなに見せつけようとしているらしい。
言えばそれは『ケンカ』のかわりだった。
ここでの一番は自分だ、よそ者は自分よりも弱いんだと、学習スクールの生徒たちに知らしめるために、泰夢をゲームにさそったのだ。
いかにも体と声と態度が大きいヤツが考えそうなことだ、と泰夢は思い、余計なことにまきこまれて心の底からガックリとした。
いつもであれば、こういうタイプとは関わり合いにならないように、上手くにげてきた泰夢だったけれども、ここまで完全につかまってしまって、さらに周りの生徒たちも注目している中では、それもできそうにない。
それにもう一つ……カズくんがゲームではなく、本当になぐったりけったりしてきたら、いちもくさんににげていたと思う。
(…………)
あらためて見てみると、カズくんは本当に体が大きくて、力もありそうな感じだった。
いつもの泰夢だったら、こんなヤツが目の前でゲンコツをふり回すのを見ただけで、すーっとおなかのあたりまで血の気が引いてしまい、まともに立っている事もできなかったかもしれない。
けれども、ゲームだったら絶対にカズくんには負けないという自信が泰夢にはあった。
「━━やるよな、泰夢?
もしやらないんなら、いますぐオマエの負けな。
明日から、この教室に来てもだれともしゃべるなよ……」
なんともカズくんらしい、一方的なルールのおしつけだった。
そしてもちろん、泰夢にとっては絶対に受け入れることができないルールだった。
「わかった、やってやる。
その代わりこっちが勝ったらさ、
二度とオレにあれこれ言ってくんなよな━━」
かたにかけていたデイパックを長づくえの上に置くと、泰夢は自分のゲーム機を引っぱり出した。
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ついにゲーム機を出した泰夢…いよいよ男子同士のバトルが始まります!
では、次回もお楽しみに!
小林るい
