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泰夢(たいむ)のお話:44

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三人の男子生徒に囲まれてピンチの泰夢……頭をフル回転です!
それでは、どうぞ!!

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 言葉につまった泰夢(たいむ)を見のがさず、カズくんたち三人組はいよいよ調子に乗って声を上げる。
 その様子にまだ学習スクールの教室に残っていた他の生徒たちも、なにごとかとそちらにふりむいた。
(ちぇ……
 これってば、マジにめんどうくさいコトんなったぞ)
 頭にうかんだ華恋(かれん)をいったん追いはらって、考えをめぐらせようとするが、泰夢の右と左に立ったお付きの二人がじゃまするように同時にまくしたてる。
「カズくんの言う通りだぜ。
 お前はヨソもんなんだから、こっちのヤツと話すなよな!」
「そーだよ、女子とかともしゃべんなよ。
 マジで禁止なんだから、ちゃーんと覚えとけ!」
 すぐそばでいきなり大声を出され、泰夢は思わず両手で耳をふさぐと、長づくえの上に置いたデイパックにつっぷした。
 この様子を見たお付きの二人は、ここがチャンスとばかりにさらに言葉をあびせかける。
 リーダーのカズくんも、うでを組んでその様子を見ながらニヤニヤと笑い「コイツ、調子に乗ってるからな。オマエらもっと言ってやれ!」と、二人をたきつける。
(……ちぇ、
 調子に乗ってんのはどっちだよ!)
 耳をふさぎながら、泰夢は頭の中をぐるんぐるんとフル回転させて、なぜこの三人組がへんな言いがかりをつけてきたのかを考える。
 泰夢が学習スクールで話すのは、華恋しかいない。
 ほかの生徒とは「話す」というよりもあいさつをするぐらいで、泰夢一人では話したりはせず、大体は華恋といっしょにいる時に話をする。
 ということは自分が話しているのはいつも華恋で、三人組がいう「こっちのヤツと話すな」は、つまり「華恋と話すな」ということなのだ。
(……そういうことかよ。
 だったら、ホントにめんどうくせー……)
 実は、泰夢の学校のクラスでも同じような事があった。
 男女がちがうし自分はまきこまれなかったけれども、クラスの女子二人がそうじの時間に急にとっくみあいのケンカを始めて、それをきっかけに女子たちのグループ━━この時に泰夢と周りの男子たちは、女子の中にもグループがあるのを知り、さらには男子のそれとちがって細かくいくつにも分かれているコトや、それぞれのグループ同士のかべが高いことなどを知ったのだった━━が入りみだれて大さわぎになったのだ。
 そのきっかけが「そうじ中に男子とずっと話をしていた」というもので、それはただの男子ではなく━━その場では女子のだれもがこれを口にせず、男子も何人かはピンときていたようだったが、もちろん泰夢はわからなくて、ずいぶん後になってから友だちから聞かされたのだが━━「好きな男子」だったらしく、どうにもそれが気に入らないという事が、そうじの時間を通り越して5時間目をきん急のクラス会議に変えてしまった一大事件の原因だったのだ。
(━━だとしたらさ、
 カズくん……か、残りの二人のどっちかが、
 華恋ちゃんのことを好きだってコトじゃんか!)
 正直に言えば泰夢はあまりその辺りのことがよく分からなかった。
 友だちの中にも、だれそれが好きだと言い出すヤツがいて、話を聞くといっしょに遊んで面白いとか、気があってふざけあってとか、どうもそういうのとはちょっとちがうらしいのだ。
(まぁ、どうでもいいけど……
 でもさ、だったらさ、話はけっこーかんたんじゃん!)
 カズくんが━━と、泰夢は思っていた。悪いがお付きの二人はガヤガヤ言うだけで、リーダーに言われるまま何も考えずに行動するタイプの、ドッジボールで強いヤツからニラまれて真っ先にかべになるような、そんな感じだったからだ━━華恋ちゃんを好きで、それで自分に話すなと言ってくるんであれば、自分の立場をしっかりさせればいい話だった。
 デイパックから体を起こし、泰夢はまっすぐにカズくんを見る。
「あのさ━━名前、カズくんだったよね。
 オレ、さっきも言ったけどさ、
 こっちのだれともぜんぜん仲良くしてないから」
「はん……ウソつけ!
 オメエ、ペラペラしゃべってんだろ?
 学習スクールの連中と仲良くしてんの、オレは見てんだぞ」
「あー、それってさ、
 華恋ちゃん━━じゃなくて、寺田さんのことだろ?」
「……そ、そ、それだけじゃねえぞっ!
 寺田もそうだけど、ほかのヤツとも話してんじゃねーか!」
 今度はカズくんが顔を真っ赤にして言葉をつまらせる番だった。
 それを見た泰夢は、どうやら自分の考えが当たったぞ、と一気にたたみかけていく。
「オレさ、いま、ばあちゃんちにとまってんだけどさ、
 そこがちょうど寺田さんの家の近所でさ、
 でもってさ、ばあちゃんと寺田さんちがめっちゃ仲いいんだよ」
「…………」
「オレ、この前来たばっかだし、
 こっちのことよく知らないからさ、
 寺田さんに街まで案内してもらってる……って、それだけじゃん」
 そこまで言ってもう一度カズくんを見ると、みけんがクチャクチャにシワになるほどまゆ毛をよせて、はなの穴をフゴフゴ言わせている。
 顔はあいかわらず真っ赤だったが、さっきまでのおこっている感じはだいぶ無くなっているような気がした。
(ふう……
 どうなるかと思ったけど、なんとかなりそうだな)
 教室の時計をちらりと見ると、ちょうど12時になったところで、イートインにすわることはできないかもしれないけれど、ネットにつなげてゲームをするぐらいはできそうだった。
「あのさ、カズくんの話って、これで終わりだよね?
 だったらさ、オレ、もう行っていい?」
 そう言ってデイパックを片方のかたにかつぐと、泰夢が席を立った。
 ガヤガヤの二人をおしのけてその場をはなれようとしたが、しかし二人が体をはって泰夢の行く手をはばむ。
「なんだよ……
 そっちの用は、もうすんだだろ?
 オレ、行きたい所があるんだからじゃますんな━━」
「……まだ終わってねーよ!」
 むりやり通ろうとする泰夢に、まるでケンカをするような声が飛んだ。
「泰夢━━持ってきてんだろ?
 オメエが毎日やってんのは、オレだって知ってんだぜ……」
 まだ何かあるのかよと、ため息をつきつつ泰夢がふり向くと、カズくんがすごい目をしてこちらをにらみながら、ポケットからゲーム機を引っぱり出していた。
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華恋は男子の間で人気のようですが、泰夢は変わらずピンチです!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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