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泰夢(たいむ)のお話:43

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学習スクールで三人組に囲まれた泰夢。その時、華恋は……?
それでは、どうぞ!!

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 昼休みになり、学習スクールの教室から生徒たちがなだれのように飛び出していく。
 華恋(かれん)も自分の教科書やノートをレッスンバッグの代わりに使っている大きなトートバッグにしまいこむと、お昼ごはんを食べようと自分のすわっていた席を立った。
(なんにもないから━━なんて言ってたけど、
 ホントにだいじょうぶなのかな……)
 朝、バスに乗って来た時はそうでもなかったのだけれども、学習スクールに着いてから、授業の合間の休み時間ごとに泰夢(たいむ)のきげんがどんどんと悪くなっていくのがわかった。
 いっしょにスクールに通い、泰夢の祖母の家で夕ご飯を食べて、その後で勉強したり、遊んだりする……そんな日をしばらく過ごすうちに華恋は、泰夢のいろいろなことが分かるようになっていた。
 きらいな食べ物に好きな食べ物、めっぽうゲームが得意なこと、何かあるとすぐにおばあちゃんにあまえること、そして、言いたいけど言えないことやなやんでいることがある時は、決まったように「なんにもない、なんでもない」とすぐに強がるような態度をとること。
 だから華恋は、今日の泰夢の様子がちょっとおかしいのには、きっと原因があるのだと思っていた。
(あれは、絶対に何かあるハズだもの……
 泰夢くんのことは、わたしがちゃーんと見てあげなくっちゃ!)
 たった一人でおばあちゃんの家で毎日を過ごしている泰夢を、華恋はすごいと思っている。
 そして、自分ができることだったら何でもして泰夢を助けてあげたいと思い、それはだんだんと「わたしが面どうを見てあげなきゃいけない」という、今ではそうした使命感のようなものになっていた。
 もちろん華恋に弟や妹はいないけれども、もし自分がお姉さんだったらこんな気持ちなのかもしれないと思い━━実際に華恋はいま十一才で、泰夢は一〇才であり、二人がその事を知った時に泰夢は「でも、学年はいっしょなんだからさ、同じってことじゃん!」とムキになって言い、それを見ていた華恋は心の中で、そういう所をへんに気にするのがいかにも年下っぽいんだよね、とひそかに思ったのだ━━そして、泰夢のことを少しだけ年が離れた弟のように感じていた。
 昼ご飯をいっしょに食べながら、もうちょっと話をしてみようかなと泰夢をさそおうとした華恋だったが、それよりも早く同じ学校の友だちに声をかけられてしまった。
「━━華恋ちゃーん!
 となりの自習室、席取ってあるから、
 わたしたちといっしょにお弁当食べよーよ!」
「えっ……う、うん。
 べつにいいけど……」
 数人の女子にうでを取られ、教室を出る華恋。
 ちょっとふり返って見たその先に、いつものようにデイパックへらんぼうに教科書やふで箱をほうりこんでいる泰夢のすがたが見えた。
(……しょうがない。
 まぁ、泰夢くんとは帰りのバスでも話せるもんね……)
 と、友だちに引っ張られて華恋はそのまま教室を出ていった。
 一方、そんな華恋のやり取りを知ることもなく、不細工にふくらんだデイパックのかたベルトをひっつかんで、泰夢も席を立とうとした。
 教室の時計を見ると、十二時になる少し前だった。
(いまからソッコーでコンビニに行けば、
 イートインスペースんとこがまだ空いてるかも……)
 お昼休みは短いけれども、ゲームの中で地元の友だちと会いたかったし、うまくすればクエストの一つもクリアできるかもしれない。
 そう考えた泰夢だったが、
「ちょっと、話があんだけどよ━━」
 という声とともに、にゅっとつき出された手に、持ち上げようとしたデイパックをおさえられてしまった。
 いつの間にか、カズくん率いる三人組が泰夢の周りに立っていた。
 長づくえをはさんで目の前にカズくんが立ち、泰夢の両わきにそれぞれ残りの二人がついていた。
(ちぇ……ここで来んのかよ。
 帰りの時は華恋ちゃんだっているしさ、
 コンビニで通信して遊ぶ時間って、ほとんどないってのに━━)
 自分の考えていた計画をいきなりさまたげられて、とたんに泰夢がふきげんになる。
 デイパックをおさえつけるカズくんの手をはらうと、
「こっちは、べつに話なんかないけど……
 悪いんだけどさ、オレいまいそがしいしさ、また別の時にしてくれる?」
 そう言って、下からカズくんをにらみつける。
 立っているのとすわっているのの差もあるけれども、体は明らかにカズくんの方が大きい。
 けれども泰夢は、全くひるまなかった。
 自分の大切な時間が意味も無くつぶされそうになっているという事に、本当にはらがたったのだ。
 泰夢のこの態度に、両わきの二人がビクっと体をふるわせて、ゴクリと息を飲むのが聞こえた。
 その様子からすると、たぶんこの学習スクールやかれらが通う学校では、カズくんにそんな事をいうヤツはいないのだろう。
 よく思い出してみれば、学習スクールの初日に三人組と少しモメた時もそんな感じだった。
 あの時は、リーダーのカズくんもびっくりして言葉を引っこめたけれども、泰夢のことを少しは知ったのか、今日はひるまなかった。
「いや、ダメだね。
 オマエって、ほかの学習スクールから来たよそ者なんだろ?
 だったらここのルールをちゃんと守れよ」
「……ルール?
 それってよくわかんないけどさ、
 オレ、別にスクールの規則破ったり、へんなコトとかしてねーじゃん」
 そう言い返すと、カズくんはぐっと顔を近づけて、負けじと泰夢をにらみつける。
「ちっ……オマエさ、マジで生意気なんだよ。
 オレたちこっちに住んでる生徒と仲良くすんなって言ってんだよ!」
「……はあ? なんだよそれ?
 マジで、ワケわかんねーじゃん。
 つーかさ、オレさ、別にだれとも仲良くしてない━━」
 そこまで言って泰夢はハっとなった。
 頭の中に、華恋のすがたがうかんだのだ。
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泰夢の中でも、華恋の存在は確かなモノになっているようです!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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