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泰夢(たいむ)のお話 その二:19

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オバジイが話す神様のお話に、泰夢はすっかり引き込まれたようです。
それでは、どうぞ!!

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 学習用タブレットの向こうにいるオバジイの話を、泰夢(たいむ)が息をするのもわすれて聞いている。
「……それでだ、妻を助けに来たイザナギ様だったが、
 『絶対にすがたを見ないでくれ』という約束を破ってしまい、
 ついつい、そのすがたを見てしまったんだなぁ」
「……マジか、イザナギ様。
 約束やぶったら、ゼッタイにダメじゃんか!」
「そうだな……だからその後、イザナギ様は大変な目にあった。
 黄泉(よみ)の国にいたイザナミ様の体は、
 もうすっかりくさってしまって、生きていた時のすがたではなかった」
「うへぇ……だから、イザナミ様は『見ないで!』って言ったんだよ!
 ウチの母さんだってさ、いーっつもさ、
 『このままじゃ外に出られない!』って言ってるもんな!」
 両方のうでを組んで、泰夢がウンウンと頭を上下に強くふる。
 父親と泰夢がもりあがって、ちょっと外に出てお昼ご飯を食べようとなった時、いつも母親はこれを言う。
 そこからたっぷりと『お出かけ前の待ち時間』があるのが、泰夢の家でのいつものことだった。
 もちろん、ちゃんとおけしょうをして、よそ行きの服に着がえた母親はとてもキレイだし大好きなのだけれども、いつも家にいる時の、かみの毛をゴムひもで一つにまとめて、ゆったりしたジャージを着ている格好でも別にいいじゃん? と泰夢は思う。
 だけれども、母親はぜったいにそれをゆるさない。
 そうして泰夢と父親がすっかりとあきてしまって、出かける気分も無くなってしまったぐらいになってから、ようやく母親の支度が整うのだ。
 体がくさってしまうというのはきっと、ゲームなんかに出てくる『ゾンビ』みたいになったということだろう。
 それだったら、イザナミ様だって『何があっても絶対に見ないで!』って言うだろうと思い、もし自分がそんな風に言われることがあったら、絶対に約束を守って見ないようにしようと心にちかった。
(あっ、そうだ!
 今度母さんが出かける前に部屋にこもったら、
 『ヨモツヘグイだから、絶対見るな!』って父さんにも言っとこう!)
 われながら名案だ! と泰夢がふたたび深くうなずく。
「……自分のすがたを見られたイザナミ様は、とてもおこった。
 そうして約束を破ったイザナギ様を、
 黄泉の国の化け物たちに追いかけさせたんだなぁ」
「えーっ! イザナギ様、ピンチじゃんか!
 っていうかさ、イザナミ様ってさ、そんなにおこったの?
 こりゃ、いよいよ父さんにもちゃんと言っとかなくちゃな……」
「わっはっはっは! 泰夢のお父さんとお母さんの話か?
 よく分からんが、見ちゃあいかんと言われたものは、
 見んほうが身のため……ということだ」
「うーっ、ブルブル!
 オレ、ゼッタイに見ないようにしよーっと!
 ……それで、イザナギ様はどうなっちゃったの?」
 泰夢の話に大きな体をユサユサさせて笑ったオバジイが、イザナミ様とイザナギ様の話を続ける。
「イザナギ様は、あの世とこの世の境い目にある、
 『ヨモツヒラサカ』という坂をにげた。
 それでも追っ手の化け物たちは、グングンとせまってくる……」
「…………」
 ぐっと低くなったオバジイの声に、泰夢が手をギュッとにぎる。
「もう追いつかれる……とその時、
 イザナギ様は、身に着けていたクシやかみかざりを投げた。
 すると、それはみるみるうちにタケノコやブドウの木になった」
「……うおぉっ!
 スゲーっ、マジでまほうのアイテムじゃん!
 イザナギ様、これで大逆転だ!」
「ああその通りだ……そのあとイザナギ様は、
 『ヨモツヒラサカ』に生えていたモモを化け物に投げつけて、
 そうして、最後は無事にげることができた……というわけだなぁ」
「クシとかみかざりとモモ……
 三つのまほうのアイテムかぁ!
 『ヨモツヘグイ』の話って、チョウ面白いじゃんか!」
 と、オバジイの話を聞いてすっかり感心していた泰夢だったが、その動きが急にピタっと止まった。
「うん……?
 どうしたんだ、泰夢。
 なにか思いついたことでもあったのかい?」
 そう言うオバジイに、うでを組んだ泰夢がおでこのあたりにシワを作りながら口を開く。
「━━今の話ってさ、もしかしてさ、
 昔話にある『三まいのお札』のお話といっしょじゃない?
 だって、三つのアイテムを使って、こわいヤツからにげるんでしょ?」
 泰夢の言葉に、画面の向こうのオバジイがポンと大きく手を打つ。
「なるほどなぁ……泰夢、良いところに気が付いた!
 『ヨモツヘグイ』と『三まいのお札』か……
 神話と民話━━これは、面白いかもしれんぞ」
 自分のヒゲを指でモサモサとさわりながら、オバジイがむずかしい顔でブツブツと独り言を言い始めた。
 その様子を見た泰夢は、得意の顔でプクっと鼻のあなをふくらめると、となりにいる華恋(かれん)の方を向く。
「これってゼッタイにいっしょだって!
 ……ねぇ! 華恋ちゃんだってさ、
 やっぱり『ヨモツヘグイ』といっしょだって思うよね!」
「━━へっ、へぇっ?
 よも、つヘぐ?
 なっ……な、なんの話?」
 それまでずっとだまったまま、頭の中でフワフワする『想い』に、一人で顔を赤くしたり青くしたりしていた華恋だったけれども、泰夢から急に声をかけられて、今度はその大きな目を白黒とさせた。
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どうやら華恋は、ずっと一人で思いを巡らせていたようですね!
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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