泰夢(たいむ)のお話 その二:18
オバジイと泰夢……いったい何を話すのでしょうか?
それでは、どうぞ!!
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オバジイの説明によれば、『共同研究』と分かるように自分と華恋(かれん)の名前を書いておけばおおむね良いらしい。
なんだ、ずいぶんと楽ちんなんだぁ、と泰夢(たいむ)は頭の上で手を組んでグーッとのびをする。
もちろん、そうなるまでには泰夢のたん任であるオバジイと、華恋の小学校のクラスたん任の先生とのやり取りがたくさんあったのだが、それは泰夢の知らないことだった。
(もぞう紙にするか、『まとめノート』か……
それだったら、小さい方だな。
大きいとさ、やっぱ持ってく時とかいろいろ大変じゃん!)
『まとめノート』は学校で使うノートと同じ大きさの紙に研究したことを書いて、それをファイルにまとめるやり方だ。
ファイルに紙をはさんで『まとめノート』を作るのではなく、文具店などで売っている無地や方眼の入ったノートをそのまま使う方法もあるけれども、泰夢の学校ではファイルの方がよく使われていた。
もぞう紙の方は学校のクラス新聞を作ったり、授業で学校の周りの地図などを書いたりする時によくつかう大きい紙だ。
長い方は一〇九センチと一ミリもあるから、泰夢がもぞう紙を持って立つとちょうど顔が出るぐらいの長さがある。
ちょっと考えても、これを持ち歩くのは大変そうな気がした。
(うーん……
持つとしたらクルクルって細くまいて━━おっ?
それってさ、にん者っぽいじゃん!)
長いぼうのように細く丸めたもぞう紙を、ゲームに出てくるにん者のアクションみたいにブンブンとふり回す自分を想像して、ちょっとカッコいいかも! と鼻をふくらめる。
だがしかし、そうしてもぞう紙を持ち歩いているうちにクシャクシャになってしまって、黒板にマグネットでくっつけてみんなに向けて発表をしたり、教室の後ろのけいじ板なんかに張ったりする時に、紙にシワがたくさんできてボコボコになった自由研究を前に、がっかりとする自分のすがたも頭の中にうかんで、それよりもやっぱりランドセルにポンと放りこめるし、ファイルの厚紙でしっかりと守られている『まとめノート』の方が、勝手が良さそうだと思った。
「うん……自由研究で説明しなきゃいかんのは、そのぐらいだなぁ。
そう言えば、テーマは決まったのかい?
山か神社かどちらかにすると言っておっただろう……」
学習用タブレットから聞こえたオバジイの声に、泰夢が顔を向ける。
「ああ、それね!
最初は『山と川』にしようと思ったけど、
それは他の人もよくやってるって聞いたからさ……」
「なるほど……
ということは、『山や川』はやめて、
『神社とお祭り』を調べることにしたんだな?」
「そう! 山や川はどこにでもあるし、みんなやってるからね!
だけどお祭りなんかには、土地ごとの『由来』ってのがあってさ、
それを調べると面白いと思ったんだよね!」
泰夢が得意そうにむねを張って言う。
これはそっくりそのまま、この図書館に務めていて泰夢と華恋にいろいろと気をかけてくれているミハシロさんが言っていたことの受け売りだったけれども、泰夢の中ではもうすっかりと自分の考えになっていた。
「たしかに……それは面白そうだなぁ!
そっちには河岸段丘(かがんだんきゅう)があるから、
どうくつなんかも多いだろうし……」
「どうくつ……」
泰夢の目がキラッと光る。
自由研究のテーマが決まっていなかった時に、図書館の本で調べてそのことを知って、ドキドキしたことを思い出す。
もしかしたら自由研究をやっている間に、まだ見つかっていないどうくつを発見してしまうかも……と、図書館の自習室にある大きなつくえの上に、大きなイラストがついた本のページを広げてながめていた時の、むねのおくがザワザワして、手足がふるえてくるような感じがよみがえってくる。
「……そういう土地にある神社の由来だったら、
『ヨモツヘグイ』が出てくるような話が、
あるかも知れないなぁ……」
「よもつへぐい……?」
アニメやゲームに出てくるじゅもんか何かのような、聞き慣れない言葉に、泰夢の動きが止まった。
「それって……なに?
スゴいまほう?」
グイッと顔をタブレットの画面に近づける泰夢に、オバジイがわっはっはっは! と大声で笑う。
「そうか、そうか……まあ、あまり聞いたことはないだろうなぁ。
……そうだな、『ヨモツヘグイ』というのは、
日本に古くからある神様のお話の事だよ」
「神様のお話……
それってさ、どんな話なの?」
どうくつの話が出た時よりも、もっと目をキランキランとさせる泰夢に、オバジイがゆっくりとアゴをなでながら、話を始める。
「そうさな……地面の下には、黄泉(よみ)の国という世界があって、
地上の者がそこの国の食べ物を食べると、
二度と地上にもどれなくなってしまう、と言う話だなぁ」
「もどれなくなる……」
そう言って真面目な顔になる泰夢に、オバジイが、うんうん、そのとおりだ、と深くうなずく。
「……ある時に『イザナミ』という女神様が、
黄泉の国の食べ物を食べてしまい、
地上に帰ることができなくなってしまったんだなぁ」
「えーっ!
それって、ちょうヤバいじゃんか……
━━イザナミって女神様は、どうなっちゃったの?」
両手をギュッとにぎりしめ、熱心な目をして話の続きを求める泰夢に、オバジイはゆったりと自分のいすにすわり直してから、『ヨモツヘグイ』の続きを話し始めた。
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オバジイが話す洞窟と神様にガッツリ食い付く泰夢……続きが気になります。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
