【フードバンク取材】ふくおか筑紫フードバンク:食支援の多様なチカラが結集するフードパントリー
公益財団法人 流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美
研究員 船井 隆

食支援における協働の力
食支援の現場では、複数の団体や組織が役割を分担しながら、ひとつの流れをつくっています。企業との調整役として食品寄附の受け皿となるような団体、それぞれの地域で支援が必要な方へ食品を届ける団体、そしてその間をつなぐ団体。多様な力が重なり合うことで、食支援はつながっています。
今回は、その様々な役割が結集する協働の事例として、ふくおか筑紫フードバンクがエフコープ生活協同組合と連携して行うフードパントリーを紹介します。事務局として運営する認定NPO法人チャイルドケアセンターの副島様へのインタビューと、実際にフードパントリーの現場を取材した内容をレポートします。
【インタビュー】子ども食堂から始まった地域の支え合い
ーーまずは、団体について教えてください。
副島さん:
ふくおか筑紫フードバンクは、認定NPO法人チャイルドケアセンターが運営する食品支援の取組です。2015年に大野城市で子ども食堂の支援を始めたことが活動の出発点でした。

当時はまだ現在のように食品ロスの問題が社会的に広く認識されていたわけではなかったこともあり、私たちも純粋に子どもの支援のために、必要な場所に食品を届ける基地となることを考えて活動を始めました。ですので、最初は、フードバンクという仕組みや運営について専門的な知識やノウハウをもっていたわけではありませんでした。
しかし、取組が新聞に掲載されたことをきっかけに、多くの食品寄附が集まるようになりました。大きな反響もありましたし、提供された食品を効率よく流していくための仕組みが求められるようになったことから、2016年に正式にフードバンク事業を立ち上げました。
ーー時代の流れや社会の状況を反映して取組が始まったんですね。現在はどのような活動をされているんですか。
副島さん:
活動の中心は、筑紫地域5市(大野城・筑紫野・春日・太宰府・那珂川)にある子ども食堂の継続的な運営を支えることです。核家族化や共働き家庭の増加により、子どもの孤食や体験不足が課題となる中で、地域の見守りの中で温かい食事や学びの体験ができる「こども食堂」を増やすことを目的としています。

寄附食品は、一般の企業や個人に加え、定期的に寄附をいただくパートナー企業(協力会員)から提供を受け、子ども食堂の運営団体である利用会員へ届けています。

寄贈量は2019年以降増加し、2021年に95.3トンのピークを迎えました。その後は年間90トン程度で安定しています。物価高騰の影響でフードドライブからの寄附は減少しているものの、企業からの寄附は堅調に推移しています。

また、子ども食堂の支援だけでなく、低額所得者や障がい者、高齢者など生活に困難を抱える人々への直接的な食材支援にも取り組んでいます。2023年度からは居住支援法人との連携により、経済的に困難な状況にある住宅確保要配慮者(※)への食品提供も進めており、支援の対象と活動領域が広がっています。
(※住宅確保要配慮者に対する支援枠組み(住宅セーフティネット法)についてはこちらをご覧ください:住宅:住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~ - 国土交通省)
ーー食品アクセス確保の観点からは、居場所支援としての側面もある子ども食堂に加え、住宅確保要配慮となる方へ食の支援も提供されているのは意義が大きい取組ですね。困窮者への効果的なアプローチにつながると考えられます。ぜひ、新しい事例として継続されてください。
このあと、フードパントリーの現場も見学させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【現場取材】地域のチカラが結集するフードパントリー
ふくおか筑紫フードバンクの活動の中で、非常に印象的なのが、エフコープ生活協同組合の太宰府支所で月1回行われるフードパントリーです。筆者(船井)は今回、このパントリーの現場を実際に取材しました。
仕組みとしては、【①ふくおか筑紫フードバンク等が集めた食品が、②エフコープが提供する倉庫スペースに集約され、③毎月の第一木曜日に、連携するこども食堂や地域の協力企業のみなさんが集まって仕分け→持ち帰りの作業を一気に行う】というものです。
毎回、20~30程度の子ども食堂運営団体が参加し、各団体あたり100〜200kgほどの食品提供につながっているそうです。

(団体HPより転載)

(団体HPより転載)
実際に現場で作業の様子を拝見すると、1時間足らずの間に多くのヒトとモノが動いて、倉庫に並ぶ大量の食品があっという間に運ばれていく様子が圧巻でした。この作業の労力やコストが、どこか1つの団体に偏ってしまうと非常に負担が大きくなると考えられますが、輸送・保管の効率が優れた設備にヒトとモノが集約され、月一回まとめて一気に作業をすることによって、参加者が「大変さ」を感じる前に終わってしまうのが持続可能な取組になっている秘訣とのことでした。
以下に、そのモデルの優れた点をご紹介します。
● エフコープが提供する「場所・設備・人手」
エフコープは食品そのものを提供しているわけではありません。 しかし、食品支援に不可欠な“物流基盤”を提供しています。
太宰府支所の広い倉庫&作業スペース
台車, 作業台, 仕分け棚
冷蔵庫, 冷凍庫などの低温保管設備
職員による作業サポート
これらは、実際の物流業務で使われている設備なので、食品を商業ベースの高水準で安全かつ効率的に扱うことができます。
なぜその設備の提供が可能かというと、エフコープの地域貢献の想いから、どのようにフードバンク活動に協力できるかを社内検討された際に、比較的余裕のある木曜日なら、午前中の自社配送荷物の出荷作業が終わってから次の入荷があるまでの間、空いたスペースと設備が提供可能だと考えられたそうです。月1回のパントリーのために食品を蓄積していくことをベースにしつつも、より効率よい形で、パントリー実施のタイミングに合わせて企業から寄附品が配送されるなどの工夫も進んでいます。

● 企業ボランティアのサポート
また、取材した日には、エフコープの方に加えて、地域に拠点を持つ西松建設の方もボランティアスタッフとして仕分け作業に加わっていました。同社では、勤務時間中に他の業務と重ならないようであればボランティアとしてこのパントリーに参加することが奨励されているそうです。建設会社の方はやはり資材を運ぶ、仕分けするという作業に熟達されていて、非常に頼れる存在とのことです。
その他にも、定期的にボランティアに参加される企業が複数あるとのことで、それら企業で実施されるフードドライブからの食品寄附と、人手としての時間の寄附の両面で地域の食品アクセス確保の取組が支えられています。
地元企業の方が、子ども食堂やフードバンクのみなさんと一緒に、大量の食品をさばいて車両へ積み込む光景には”地域で支える”という活気ある空気が満ちていました。

(団体HPより転載)
● 月1回のパントリーが「地域の軸」になる
子ども食堂や支援団体は、毎月このパントリーに集まり、食品を受け取ります。 個別に受け取りに行くよりも、月1回まとめて仕分けることで効率化され、団体側の負担や調整の手間も軽減されます。加えて、パントリーは単なる食品受け渡しの場ではなく、
団体同士の情報交換
活動の相談
地域の課題共有が自然に生まれる拠点
としても機能しています。取材した日には、定期的に食品寄附をされる企業の方も現場にいらっしゃったのですが、「この仕組みがあるから、なにか食品のロスが出そうなときに安心して相談することができる」とお話しされていました。信頼される寄附の受け皿としての機能が非常に強い場となっていることを感じました。
これらの取組で地域やボランティアとの関係を構築し、継続的に筑紫地区のこども食堂の設立や運営をサポートしてきたことから、ふくおか筑紫フードバンクは「令和7年度福岡県食品ロス削減優良取組知事表彰」を受賞されました。今後も持続的な推進が期待される事例です。
編集後記
今回の視察を通じて、食支援は単独の団体だけでは決して成り立たないということを、あらためて強く感じました。ふくおか筑紫フードバンクが企業からの未利用食品を受け止め、地域の子ども食堂や支援団体がラストワンマイルを担い、そしてその間をエフコープが「場」と「設備」と「人手」で支えている。この三者の連携が、食品を必要とする人のもとへ確実に届けるための流れを生み出していました。
また、ふくおか筑紫フードバンクでは、支援が必要な困窮者へより直接的にアプローチする仕組みとして、居住支援法人との連携も進めています。子ども食堂だけでは届きにくい層に食品を届ける取り組みであり、こうした多様なアプローチが食品アクセス確保に大きく貢献しています。
食品アクセスの確保には、目に見える食品そのものだけでなく、流通のためのコストや人手、設備といった“見えにくい部分”も欠かせません。今回ご紹介したパントリーの仕組みは、その負担を地域全体で分かち合いながら、持続可能な形で支援を続けていくためのひとつの答えだと感じました。地域の力がつながることで、食品アクセスの体制はより強くなっていきます。当研究所では、今回学んだ内容の優れた点を、他所にも展開するための支援をしていきたいと考えております。
副島様、エフコープをはじめとする関係団体のみなさま、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。
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