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【サステナブルPB特集!】<第4回>“日常の選択が環境への貢献に” イオントップバリュの環境配慮の取り組み(後編)

公益財団法人流通経済研究所
研究員 寺田 奈津美

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7.      お客さまに最も近いブランドとしての強み|声を生かす商品開発と訴求の工夫

――環境配慮商品の開発において、他社のプライベートブランドやナショナルブランドとの違い、トップバリュならではの特徴や強みについて教えていください。

宮澤さん:環境に限らずですが、私たちがナショナルブランドと圧倒的に違う点は「お客さまに一番近いブランド」であるということです。売り場で商品を購入するお客さまの声を、データとして収集するだけでなく、実際に生の声として常に受け取っています。

例えば「こうしてほしい」という要望や改善点のお申し出、逆に「ここが良い」というお褒めの言葉などが日々寄せられています。実際、年間で7万件近くのお客さまの声が届いています。そのすべてに完璧に応えるのは難しい部分もありますが、それだけ多くのフィードバックが常に集まるというのは、他のブランドにはない大きな特徴です。

さらに、お客さまだけでなく、店舗で働く従業員からの声も拾い上げています。売り場の現場を通じて得られる意見も、商品開発や改善の大きな糧になっています。

現場の従業員からの声を含めて、どういうお客さまニーズがあるのかを直接把握できることがトップバリュならではの強みだと考えています。 

――お客さまからの反応や、商品・ブランドを伝えるための工夫について教えてください。

宮澤さん:お客さまからは、以前に比べてポジティブな反応が増えている印象があります。例えば、「スポッとecoボトル」のモニター調査では、80%以上が「リサイクルしやすくて良い」という評価をいただいています。

また、国際フェアトレード認証商品や、アニマルウェルフェア※配慮商品についても関心が高まっており、問い合わせが増えています。

環境配慮や付加価値のある商品はコストや手間がかかるため大量販売には向きませんが、着実に広がってきてはいます。象徴的なのがアニマルウェルフェアに配慮した平飼いたまごで、お客さまからは「動物福祉に配慮した商品が身近な店で買えるので助かります」といった声をいただくこともあり、ここ数年で主要な小売事業者でも取り扱いが進みました。私たちの商品はその動きを先導してきたと考えています。

価格は通常より高めですが、市場相場と比べれば手頃であり、多くのお客さまから高く評価されています。直近のデータでも、昨年度と比較して売上200%と需要も増加しています。関心の高いお客さまにとって「この価格で買えるのは魅力的」という位置づけになっているのではないかと思います。

トップバリュ「平飼いたまご」のラインナップ
(出所:トップバリュホームページ「トップバリュの平飼いたまご」)

宮澤さん:アニマルウェルフェアの商品は、価格や流通の面で課題のある商品も少なくありません。例えばケージフリー卵は動物福祉の観点では優れていますが、管理コストが高くなるため、一般的なケージ飼いの卵より価格が上がる傾向にあります。日本ではまだ消費習慣が十分に定着していない中で、この商品を展開するのは大きな挑戦です。

さらに「平飼い」や「ケージフリー」といった基準や販売方法には微妙な差があり、商品ごとに慎重な判断が必要です。課題はありますが、少しでも環境や動物福祉につながる商品を開発し、必要とする方に届けることを目指しています。

ケージ飼いと平飼いのイメージ図(筆者作成)

 ――お客さまに環境配慮商品の価値を伝えるポイントはありますか。

宮澤さん:いかに「見たいと思える内容」を「わかりやすく伝えるか」が最も重要です。専門用語ばかりだと伝わりにくいため、情報を絞り、誰でも理解できる形で発信するよう心がけています。

また、理解するだけでなく、関係者やお客さま自身が情報を得て、何らかの行動につなげてもらえるようにすることも大切です。当社からの発信だけでは限界があるので、外部のツールやメディアも活用して幅広く情報を届けています。 

――商品のパッケージや訴求内容をわかりやすく工夫することに加え、広報活動や他社との協力によるフェア開催を通じて、より大きな訴求力を持たせているのですね。

宮澤さん:そうです。例えばこちらは3Rマークが付いた商品です。自社基準に基づき、リサイクルや環境配慮の観点から選定した商品にこのマークを付けています。このマークは他社での使用も認めており、従来は考えられなかったことですが、大手メーカーから「使いたい」という要望が寄せられ、実際に2社で採用いただいています。こうした動きにより、イオン単独にとどまらず、グループ全体や取引先と協力しながら環境配慮商品の情報を発信する取り組みが広がってきています。

(出所:トップバリュホームページより作成)

 宮澤さん:また、ネーミングや伝え方も重要です。「チョコか?(次章で詳しく紹介)」のように、「これは何の商品なの?」と興味を持ってもらえる最初のきっかけを逃さないことが大切です。

今までは比較的真正面から説明するネーミングの商品が多かったのですが、今は柔軟な発想で、「手に取ってもらうこと」を第一にしています。特に環境系の商品は堅い印象を持たれがちなので、こうした工夫が、より多くのお客さまに興味を持っていただくきっかけになるのではないかと考えています。 

環境やサステナブルへの取り組みは大切ですが、専門知識がないと実際の内容や進め方を理解するのは容易ではありません。そこで当社では、トップバリュのホームページに「サステナブル」ページを設け、取り組みを分かりやすく整理・見える化しています。このページでは、トップバリュ商品の環境配慮への切り替え状況を公開しており、2025年までに100%を目指す進捗を数値で示すことで、イオンの環境への強い意志を社内外に明確に発信しています。

さらに、サステナブル関連商品も整理して紹介しています。例えば、レインフォレスト・アライアンス認証原料を使用した商品については、内容を分かりやすく図解で説明し、理解を深められるよう工夫しています。

(出所:トップバリュホームページ「たのしくわかるサステナブル」)

 宮澤さん:このように、環境配慮商品や取り組みを直感的に理解できるページを用意することで、環境知識の向上とともに、お客さまもお買い物を通じて取り組みに参加している実感を得られる仕組みを整えています。デザイン面でも「見やすく、わかりやすい」ことを重視し、誰にとっても理解しやすい情報提供を心がけています。

⭐トップバリュの「たのしくわかるサステナブル」ページでは、取り組みの内容と、サステナブルに関する知識をたのしく学ぶことができます。

8.      拡大領域|オーガニック商品と代替チョコ「チョコか?」

特に好評で、今後拡大を考えている商品はありますか。

宮澤さん:サステナブル商品全般を拡大していく予定ですが、特にオーガニック商品には力を入れています。

最近発売したオーガニックのレモングラスティーもその一例です。従来はナショナルブランドでスポット的に販売されることはありましたが、当社としては初めてペットボトル入りの定番商品として提供しました。レモングラスの香りが強いため好みは分かれるかもしれませんが、気に入っていただいた方からは非常に高い評価をいただいています。今後もこうした商品の訴求を進め、拡大していきたいと考えています。

オーガニック レモングラスティー(筆者撮影)

環境にやさしい農法で栽培された長崎県・五島産の有機レモングラスを使用。レモングラスの爽やかな香りとすっきりとした後味が特徴。冷やして飲むのがおすすめです。 

宮澤さん:また、代替チョコレートを使った新商品「チョコか?」シリーズも発売しました。これは従来のカカオを使用したチョコレート商品ではなく、ヒマワリの種由来の成分でできたチョコレートのような食感を持つ商品で、原料や製法に工夫を凝らしています。試食いただいたお客さまの多くが「まるでチョコレートだ!」とおっしゃるほど完成度が高く、味も高く評価されています。

この商品が生まれた背景には、カカオの高騰があります。カカオ豆の価格は2023年1月から2024年1月にかけて、1年間で約2倍に上昇しました。そうした中で、価格を抑えつつチョコレートと同じような味わいを別のもので作れないか、という発想から企画しました。

この商品は海外企業が開発したひまわりの種由来のチョコレート代替品を原料として使用したもので、2025年9月には新たにブロックタイプ3品目も発売しました。今後は、このシリーズを広げつつ、環境に対応した新しいコンセプトの商品展開も進めていきたいと考えています。

ひまわりの種を原材料に使用した「チョコか?WITH BISCUIT」(2025年6月発売)
2025年9月2日に発売された「チョコか?」ブロックタイプ

🔗プレスリリ―ス
“ひまわりの種”から生まれたチョコレート代替品 カカオを使用せずに作った トップバリュ「チョコか?」に待望のブロックタイプが新登場!

9.      商品ライフサイクルの評価と継続判断|短期と長期の視点

――商品を継続するか終了するかの判断は、どのように評価・モニタリングしているのでしょうか。

宮澤さん:商品の終売を判断するのは非常に難しいところです。例えばオーガニック商品のように、市場に先行して投入するケースもあります。過去にはレディーミールを20年以上前に発売しましたが、当時は時期が早すぎてほとんど手に取ってもらえませんでした。しかし5年ほど経って市場が成熟すると、一気に他社が参入するということもありました。

このように、1年で評価すべきか、2〜3年待って判断すべきかは時代や状況によって異なり、一律には決められません。基本的にはモニター調査などを通じて定期的に評価し、フィードバックを商品改善につなげるサイクルを回しています。ただし、最終的に「終了するのか、成長を期待して継続するのか」を決めるのはケースバイケースです。現在の市場環境では、短期的に売れている商品でも長期的に継続的に売れ続けるかどうかは不透明であり、判断のタイミングが大きな課題となっています。

――短期的な売れ行きだけでなく、ある程度長期的な視点で価格や売上を評価しながら、継続的に販売することで、社会的価値を提供し続け、環境配慮を消費者の日常に自然に組み込むことを目指しているのですね。

宮澤さん:はい。若い世代、特に小中学生にとっては環境への配慮は当たり前のこととして身近に感じている人も多いですが、逆に上の世代にとっては「特別なこと」と受け止められることも多く、世代間の意識差は大きいと感じます。また、若い人にとって当たり前のことでも、価格が高ければ手が届かないこともあります。だからこそ、無理なく手に取れる価格で提供することが重要であり、環境配慮商品を自然に選べる環境を作ることが私たちの目指す方向だと考えています。

10.      今後の課題と注力テーマ

――環境配慮の取り組みを進める上で、現在、課題や障壁となっていることはなんですか。

宮澤さん:最大の課題はコストです。これは開発を進める中で常に出てくる問題ですが、単に価格やコストが上がるだけではなく、その分、商品設計においてしっかりと付加価値をつけ、適正な価格を設定することが重要だと考えています。現状では多くの環境配慮商品がお買い得価格に設定されており、その商品の価値を十分に価格に反映できているのか、適正な価格設定とはいくらくらいなのかを模索している状況です。

また、第三者認証の取得や商品表示のルール整備など、企業間や行政との連携も欠かせません。環境配慮商品は多くの関係者が関わるため、定義を明確にし、わかりやすく伝える工夫が必要です。

――今後注力していきたいテーマや力を入れていきたいとお考えのことについて教えてください。

宮澤さん:テーマとして特に注力していきたいのはプラスチック削減です。これはイオン全体の方針にも沿ったテーマであり、世界的にも優先度が高い分野です。私たちとしても最重要課題の一つと位置づけ、自然循環の実現に向けてグループ各社との連携強化を進めていきたいと考えています。

11.      経営への影響と目指すブランド像

――プライベートブランドで環境配慮やサステナビリティに取り組むことは、経営全体にとってどのような影響を与えるのでしょうか。

宮澤さん:私たちは「イオン=トップバリュ」というブランドイメージを確立することを目指しています。お客さまに「トップバリュがあるからイオンに行こう」と思っていただける価値を提供したいと考えています。その価値は、価格の安さや味の良さにとどまらず、環境や社会への配慮も含まれるという点を、トップバリュを通じてお客さまや社会にしっかりと伝えていくことを重視しています。

トップバリュはイオン独自のブランドであり、他店でも購入できるナショナルブランドとは異なります。だからこそ、イオンを象徴する存在として、トップバリュを通じてイオンの理念を発信することが、最も強いメッセージになると考えています。

――サステナビリティの取り組みを通じて、トップバリュが目指す将来的なブランド像について教えてください。

宮澤さん:お客さまに支持されることを前提に、サステナブルと、価格や品質のバランスを大切にしたブランドを目指しています。日常の買い物を通じて、無理なく環境や社会に配慮し、その結果としてより良い未来につながるきっかけを提供できるブランドを目指しています。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

宮澤さん:環境への取り組みは個社だけで完結するものではなく、ステークホルダーや業界全体での協力が不可欠です。イオン単独ではなく、業界団体や他の小売企業とも連携し、環境課題に取り組んでいく必要があります。特にこれから社会に出る学生の皆さんには、この連携の重要性を理解し、柔軟に考え、行動していただきたいと思います。環境課題は世の中全体で取り組んでいくものだという意識を持ち、ともに進んでいきましょう。

まとめ

今回は、イオングループのPB「トップバリュ」の環境配慮の取り組みについて、ブランド設立の背景や推進体制、商品評価や効果的な訴求方法、PBにおける環境配慮推進の経営への影響や、目指すブランド像などについてお伺いしました。その中で、次のような重要なポイントが示唆されました。

✅ サステナブルPBを展開することで、企業経営にどのような影響があるのか?

「イオン=トップバリュ」というブランド像の確立を通じて、価格・品質だけでなく環境や社会的価値を消費者に届ける手段となっている。短期的な売上効果に加え、中長期的にはブランド力強化と社会的信頼の醸成に寄与している。

• 社外への発信力とリーダーシップ
 認証団体や行政、他の小売企業との横断的な連携を進め、業界全体を巻き込む形で環境課題解決の推進役を担っている。

• 社内意識の浸透と基盤整備
 「サステナブル通信」や社内の定義づけ・チェック体制を整えることで、従業員への共有が進み、日常業務レベルで環境配慮が根付いてきている。

• 商品開発とイノベーション
 「スポッとecoボトル」や代替チョコ「チョコか?」など、環境と生活者視点を両立させた新商品が登場し、付加価値の高い商品領域の拡大につながっている。

ただし、認証取得の負担やコスト増、スコープ3の算定といった構造的な課題が残っており、価格設計や売場での認知をどう確保するかが次の焦点となる。

 ✅ うまくいっている要因と、予想されうるうまくいかない要因は?


今回のイオントップバリュの取り組みの大きな特徴は、商品の魅力や価値を伝えるだけでなく、「背景にある環境・社会課題」や「企業努力」を、学習コンテンツとして誰もが理解できる形で発信している点です。商品を通じて関心を持つきっかけを与え、さらにホームページで知識を深めてもらう仕組みによって、単なる購買体験を超えた社会的な啓発の役割を果たしています。

 宮澤さんからいただいた力強いメッセージに、環境への取り組みが一企業にとどまらず、社会全体で進めていくべきテーマであることを改めて実感しました。私たちもまた、この動きを後押しする存在として、企業やさまざまなステークホルダーとの連携を支援していきたいと思います。

宮澤さん、ありがとうございました!

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