【サステナブルPB特集!】<第4回>“日常の選択が環境への貢献に” イオントップバリュの環境配慮の取り組み(前編)
「サステナブルPB※特集」第4回では、イオン株式会社のプライベートブランド「トップバリュ」が進める環境配慮の取り組みを取材しました。
イオンは「2025年度中にすべてのトップバリュ商品を環境配慮商品に切り替える」という目標を掲げており、その方針や推進体制、具体的な商品事例、そして今後の課題について、イオントップバリュ戦略本部 副本部長の宮澤正紀さんにお話を伺いました。
また、本取材を通じて見えてきた、サステナブルPBの展開が企業経営に与える影響や、うまくいくケースとあまりうまくいかないケースの違いなどについて考察していきます。
公益財団法人流通経済研究所
研究員 寺田 奈津美
※本稿では、環境負荷をできるだけ抑えた環境配慮型商品、サプライチェーン上の人権やフェアトレード、アニマルウェルフェアに配慮したエシカル商品、さらには社会課題の解決を目指すソーシャルグッド商品などを総称して「サステナブル商品」とし、こうした商品を開発・展開するプライベートブランドを「サステナブルPB」としています。
📌 第3回の記事はこちら ↓

1. トップバリュの環境配慮方針|“日常の選択が環境への貢献に”
――トップバリュにおける環境配慮商品の展開の背景や基本方針について教えてください。
宮澤さん:トップバリュにおいては、まずイオングループの理念を具体化することがプライベートブランドとしての基本的な役割です。その一環として、環境配慮の推進を重要な位置づけとしています。
取り組みの考え方として重視しているのは、お客さまが普段の買い物で自然に商品を選んだ結果、それが環境負荷低減への貢献につながる、という形です。つまり、「この商品はサステナブルだから選んでください」と強調するのではなく、日常的にトップバリュの商品を選んでいただくことで、気づかないうちに環境負荷低減に貢献できる状態を目指しています。
トップバリュでは、イオンのサステナビリティ基本方針に基づき、「脱炭素社会の実現」「生物多様性の保全」「資源循環の促進」という三つの柱に沿って、環境配慮商品の開発・展開を進めています。

出所:「AEON REPORT 2024」
宮澤さん:2024年までに全SKUの50%を環境配慮商品にすることを目標にスタートし、現在は2025年に100%にするという目標を掲げ、その達成に向けて予定通り取り組みを進めているところです。
2. 組織体制と社内浸透の工夫
――次に、開発や推進に関わる社内体制について教えてください。
宮澤さん:私が所属する戦略本部の中に、環境推進を担当するチームがあります。例えば、商品開発はMD(マーチャンダイジング)と呼ばれる担当者が実務面を担当しますが、サステナブル関連の認証手続きなどに関わる部分では私たち環境推進チームも連携し、スムーズに進められるよう体制を整えています。
「環境配慮商品とは何か」については、環境推進チームが明確な定義を設けています。その定義に基づき商品をチェックし、環境への配慮が適切に行われているかを確認する仕組みを運用しているのも、戦略本部の重要な役割の一つです。
また、社内における基礎知識の共有も重視しています。例えば「どの資材を使えば環境配慮商品になるのか」といった疑問に対応できるよう、知識や情報を整理し、開発に活かせる形で共有しています
現在、環境推進チームは5名体制で活動しています。商品数や取り組みが増えるにつれて業務量も増加しており、実務上の課題も出てきていますが、それは同時に取り組みが着実に拡大してきた証でもあると考えています。
――商品開発の過程では、すべてを環境推進チームが担うのではなく、各部署が実務を進める形になるのでしょうか。
宮澤さん:はい。実際に商品をつくるのは担当部署で、環境配慮の観点からチェックを行うのが私たちのチーム、という分担になっており、明確に定められたチェック項目について、その基準を満たしているか一つひとつ確認しています。商品数が増えるほど作業量も増えるため負担は大きいですが、単に「環境に配慮しています」と掲げるだけでなく、実際に確認作業を積み重ねながら進めています。
現在は3R商品の取組みをしておりますが環境インキ(バイオマス・水性)など比較的定型的な取組みが中心となっており、将来的にはより発展的な方法も取り入れ、新しい商品開発につなげていきたいと考えています。
――社内にサステナビリティを浸透させるための施策や、従業員の理解促進に向けた工夫について教えてください。
宮澤さん:社内では、従業員の環境意識を高める活動を行っています。環境配慮の推進は、イオングループ各事業会社での取り組みが非常に重要になります。各事業会社には環境担当者がいますが、以前は直接やり取りする機会はほとんどありませんでした。
そこで約1年前から「トップバリュ サステナブル通信」を発行し、新商品やサステナブル商品に関する情報を月に1度、グループ全体の環境責任者や関係者に配信しています。読みやすく楽しめる内容を盛り込み、あわせて販促物なども用意することで、各事業会社が販売方法や品揃えのベストプラクティスを共有しやすいようにしています。
――そのような取り組みに対して、社内からどのような反応がありましたか。
宮澤さん:正直なところ、「こういう内容にしてほしい」といった積極的な要望はまだ多くありません。ただ、事業会社が増えるにつれ「自社には配信されていないので送ってほしい」といった依頼が出てきており、配信先は少しずつ広がっています。
しかし、これらの情報を環境担当者だけに届けるだけでは不十分であり、売り場づくりを担う商品部など、環境担当以外の部署にも共有していく必要があると考えています。そのため、会社への情報発信において「誰に情報を送るべきか」を精査しながら、サステナブル通信の配信先を追加し、フィードバックを受けて改善を重ねています。こうした取り組みを積み重ねることで、結果的に情報がグループ全体へ広がっていくのではないかと感じています。
――多くの従業員がいる企業で、開発や現場に直接関わっていない従業員にも「自分ごと」として捉えてもらうために、どのような工夫をされていますか。
宮澤さん:その点は大きな課題です。サステナビリティの取り組みを個人レベルで理解し、行動につなげてもらうのは簡単ではありません。実際には、トップバリュの商品が環境配慮型に切り替わること自体が、社内浸透の一つの手段になっています。
取り組みを浸透させるために、メディアに対して記者会見やプレスリリースを積極的に行い、その際に「サステナブル」というテーマを大きくアピールして情報を伝えることに力を入れています。そのようなメディア発表をきっかけに取り組みを知る事業会社も多く、数年前から情報発信を増やしてきました。トップバリュというブランドへの期待も大きく、それに応える形で売上だけでなく認知度を高めることも重視しています。
3. 環境配慮商品の展開状況と商品事例「スポッとecoボトル」
――現在の環境配慮商品展開と、代表的な商品例について教えていください。
宮澤さん:2025年7月末時点での環境配慮商品の合計は、7,207アイテム、そのうち、脱炭素に関連する商品は5,314アイテム、自然保護に関する商品は1,893アイテムあります。

宮澤さん:資源循環では、2025年8月末時点での再商品化資源回収量は6,180tです。また、CFP(カーボンフットプリント)の算定にも取り組んでいます。スコープ3算定はまだ課題が多く、CFP算定済商品は10月1日現在で2アイテムのみですが、国や関連機関と連携して算定の仕組みづくりを進めています
具体的な商品について、特に注力しているものをご紹介します。例えばこのドレッシングは、地産地消の観点から国産食材を活用し、さらに環境に配慮した容器包装の工夫を取り入れています。「サステナブル」であることに加え、品質やおいしさといった基本的な価値もきちんと担保している点が特徴です。
この商品は国産食材にこだわり、高知県産の生姜や瀬戸内産のレモンを使用しています。さらに、パッケージには独自に開発した「スポッとecoボトル」を採用しており、従来のプラスチックボトルが抱えていた課題を解決することを目指しています。
従来のマヨネーズやドレッシングの容器は、洗浄工程で油を完全に落とすことが難しいため、リサイクルに組み込める「PET容器」ではなく「その他プラスチック包装」に分類されていました。
そこで、このボトルには内側に薄いフィルム状容器を入れた二重構造になっており、使用後にそのフィルムを引き抜くことで簡単に分別できます。そして、外側のプラスチックボトルをきれいな状態で回収できる仕組みになっています。この工夫により、本体容器の80%を超える外容器がリサイクル可能となります。
さらに、この仕組みはリサイクル効率を高めるだけでなく、中身の使い切りにも効果があります。従来の容器では最後にどうしても少し残ってしまい、そのまま捨ててしまうことも多いと思いますが、新しい容器では中身を最後まできれいに絞り出すことができ、食品ロスの削減にもつながります。

(出所:トップバリュホームページ)

(出所:トップバリュホームページ、左下写真は筆者撮影)
▼「スポッとecoボトル」の分別方法を動画でご確認いただけます👇
宮澤さん:今回はドレッシングで導入しましたが、マヨネーズなど他の調味料でも同じ仕組みを応用できると考えています。ただ現状では、店頭でまだ十分にお客さまに伝わっていない部分もあります。品揃えとしては置かれていても、その意義が理解されにくいケースがあるのです。
そこで、例えばマックスバリュやイオンの店舗などでは、売り場で「この商品はこういう特徴があります」と分かるようなPOPや表示をつけるなど、認知を高める工夫を始めています。そうすることで、お客さまに「知らずに買ったけれど、実は環境負荷低減に貢献している商品だったんだ」と気づいていただけるようにしたいと考えています。
私たちとしては、一人ひとりのお客さまにその価値を感じてもらうことが重要です。ですから、今おすすめできる代表的な商品として、このドレッシングを位置づけています。
4. サプライチェーンの最適化|包装・物流の工夫
――包装や物流の面での環境配慮の工夫について教えてください。
宮澤さん:この商品は、その代表的な事例です。もともとペットボトル容器は丸型でしたが、角型へと見直しました。一見すると小さな変更ですが、積み重ねると大きな効果を生みます。形状変更により1ケースのサイズが小さくなり、積載効率が大幅に改善しました。実際に、10トントラック1台あたりの積載本数は従来の18,432本から23,400本へと増え、同じ台数でより多くの商品を運べるようになっています。

宮澤さん:さらに、形状変更はプラスチック使用量の削減にもつながりました。従来のリサイクルペットボトルは約26gでしたが、新しい角型では22gと4gの軽量化を実現。1ケースあたりでは約50gの削減となります。これにより配送コストの削減だけでなく、陳列や補充の効率向上にもつながり、コスト削減に大きく貢献しています。

宮澤さん:この商品は、サプライチェーン全体で環境配慮と効率化を同時に実現した「象徴的な商品」の一つです。業界誌などでも高く評価されており、物流効率化によって結果的にCO2排出削減に貢献している点も大きな特徴です。
現在、原材料価格の高騰や物流コストの増加、さらにはドライバー不足といった要因で全体のコストが上昇しています。その中で私たちが目指すべきは、可能であれば原価を下げてご提供することです。しかし現実的には「原価を維持すること」自体が大きな課題であり、そのうえで「価格以上の価値をどう守るか」が重要なポイントになります。コスト上昇が避けられない状況において、今回の改善によって原価維持を実現できたことは大きな成果だと考えています。
5. カーボンフットプリント算定とスコープ3の壁
――カーボンフットプリントについてもスコープ3までの算出を進めていると伺いました。かなり手間がかかると思いますが、課題はありますか。
宮澤さん:お客さまが商品を購入して消費するまでの過程や、その中でどの程度の環境負荷が生じているのかといった領域は分かりにくいため、できるだけ分かりやすく提示していくことを目指しています。
また、店舗に商品が届くまでの配送でもCO2が排出されます。多くの企業では物流会社に委託しており、その際の排出量を把握するのは難しいのが現状です。全国各地に配送されるため、情報の収集や管理には大きな手間がかかります。イオングループの場合は、グループ内の物流会社を通じて一定の情報を把握できますが、それでも相当な労力を要します。こうした課題はイオンだけでなく、多くの企業が共通して直面している問題であり、行政や民間企業が連携して解決策を模索することが重要だと考えています。
――スコープ3を含めたCO2排出量の具体的な計算方法について教えてください。
宮澤さん:委託先が商品を製造する部分に限ったCO2排出量は把握できますが、それ以外の範囲(輸送や従業員の出張・通勤、使用者による製品の使用など)のCO2排出量は、現状では把握が難しい状況です。スコープ3の正しい算出方法や開示のあり方については、行政や企業間でも議論が続いています。

(出所:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム「Scope3排出量とは」)
宮澤さん:現時点で可能なのは、委託先が把握できる範囲であるスコープ1・2までです。しかし、サプライチェーン全体に関わるスコープ3については、今後の課題です。例えば油の事例では、1件の算出に数か月を要しました。スコープ3の取り組みは非常に負担が大きく、今後の大きなテーマです。イオンとしても無視できない領域であり、将来の法改正や規制を見据え、スコープ3の算定方法や体制を整理し、実施可能な体制づくりが必要だと考えています。
6. ステークホルダー連携|第三者認証取得と自社認証「もったいないをおいしく!」
――商品開発において連携している企業や団体、生産者などとの共同の取り組みについて教えてください。
宮澤さん:はい、連携先は多岐にわたります。国際フェアトレード認証や、レインフォレスト・アライアンス認証、MSC認証など、人権や環境の観点を含めたさまざまな認証に対応した商品を多数開発しており、現在拡大しているところです。原材料に関する取り組みは基本的に製造委託先が対応しますが、商品化にあたって認証団体から承認を受けるプロセスでは、私たち環境推進チームが各団体と調整しながら進めています。
第三者認証商品に加えて、「もったいないをおいしくいかす」をテーマに食品ロス削減にも取り組んでいます。この取り組みは、これまで利用されていなかった原材料や、形が不揃いで流通に適さない規格外野菜などを加工して商品化するものです。製造委託先にとっては、これまで捨てるしかなかった素材を有効活用できることでロス削減と収益化につながり、お客さまにとっても食品ロスや環境配慮を意識した商品選びができるようになります。
さらに、環境配慮や食品ロス削減の価値をお客さまに分かりやすく伝えるために、自社認証マークを導入しています。「地球にやさしい商品」であることを示す、地球をイメージしたマークで、今後さらに対象を広げていく予定です。自社で認証・管理・表示を行うことで、商品の環境配慮の取り組みを確実に伝え、お客さまにとって理解しやすい形で価値を届けています。

🔗「もったいないをおいしく!」について、詳しくはこちら👇
――端材や規格外の素材が発見されるのは、どのような流れですか?
宮澤さん:
例えばサツマイモの端材のように、委託先や生産者の現場で発生するものを、開発チームや環境チームが情報として把握し、商品化の可能性を検討する流れです。まだ食べられるにも関わらず利用されていなかったものを新しい商品として活用できる仕組みを整えています。
この取り組みを通じて、商品開発の現場でも、環境配慮や未利用素材の活用に対する意識が高まってきました。昨年後半から、社内で環境目標や取り組みについて議論を重ねたことで、商品開発の各段階で環境を意識する文化が根付きつつあります。キャベツやサツマイモの端材を加工に取り入れるなど、未利用だった部分を有効活用する事例が増えています。「これまで食べられていなかったものも価値に変えられる」という発想が社内で自然に共有されるようになったことは、大きな変化だと感じています。
また、取引先や委託先との協力も以前に比べて増えてきました。環境配慮を前提とした商品開発を進める中で、「こういう課題がある」という現場の声を共有し、それを改善策や商品化に反映する取り組みが活発になっています。これまで困っていたことを、環境配慮の視点を取り入れることで、取引先や委託先にとっても、私たちにとっても利益につながる取り組みにしようという動きが広がっていると感じています。
――持続可能なサプライチェーンの構築に向けて実施されている取り組みは、ほかにもありますか。
宮澤さん:取り組みは多岐にわたります。例えば、商品パッケージや内容量の見直しによって資源を効率的に使う工夫をしています。ウインナーなどの加工品では、内容量は変えずに包装を工夫することで、余分な資材を減らしつつコスト削減と環境負荷低減を両立させています。新商品を発売する際も、こうした工夫を積み重ねることで環境に配慮しています。
物流面では、イオングループの物流会社イオングローバルSCMが、台車や設備を汚れの少ない状態で再利用できるよう管理し、効率的かつ衛生的な運用を実現しています。これにより物流全体での環境負荷を軽減しています。また、物流や包装でもう使えないとされていた資材を原料として活用して商品化する取り組みも行っています。これにより、グループ内で完結する形で回収・再利用が可能になり、イオンならではの循環型プロセスを実現しています。

宮澤さん:たとえば、これまで廃棄していた梱包用ストレッチフィルムを回収・再利用し、そのリサイクル樹脂を一部使ったポリ袋があります。輸送時の破損防止や物流倉庫での積み上げによる荷崩れ防止のために、商品に巻き付けて使用されているもので、従来はその大半が廃棄されていた。
これらの効率化や省資源化の取り組みは、「コツコツコスパ」というキャッチコピーのもとで進められており、ホームページには専用ページも設けています。例えばコーンポタージュなどの個別商品では、個包装や不要な工程を省き、ケースや包装形状を工夫して定量化することで、コスト削減と環境負荷の低減を同時に実現しています。こうした工夫の内容は理由とあわせて整理され、改善の積み重ねとして公開しています。継続的な取り組みによって、資材やコストの効率化にとどまらず、持続可能なサプライチェーンの構築にもつながっています。

🔗トップバリュの効率化や省資源化の取り組み「コツコツコスパ」をチェック👇
(前編終わり)
⭐後編では、認証団体との関係づくりや、お客様や従業員など社内外からの反響などについてご紹介します。
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トップバリュの環境配慮の取り組みについて、詳しくはこちら👇
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