本が好きすぎて、授業を聞いていなかった息子
リクは、本が大好きだ。
私自身が本をとても好きで、実家にもたくさんの本があった。だから息子にも本をたくさん読んでほしくて、リクが赤ちゃんの頃から、本に親しめるようにしてきた。
きっかけは、1歳半検診のときだったと思う。地域のブックスタートのキャンペーンで、絵本を1冊無料でいただいた。それで私自身も本の魅力を改めて思い出し、リクのために図書館で本を借りるようになった。
2週間に10冊ほど。返却のたびに、また借りてくる。毎晩、寝る前に1冊が基本で、読めないまま返却日が近づくと、5冊まとめて読むこともあった。
リクは、すっかり本が大好きになった。膝に乗せて絵本を読む時間は、忙しい毎日の中の、幸せなひとときだった。
今日は、その「本好き」が、困ったことにも、頼もしいことにもなった話を書きたい。
「授業中に本を見てしまうんです」
そんなリクが、小学生になった。
小学校には図書室があって、本の貸し出しもある。授業で本を借りに行ったり、調べ物をしたりする機会も多い。リクは相変わらず本が大好きで、読んでは借りてを繰り返していた。
本が好きなのはいいことだ。私も微笑ましく見ていた。
ところが、2年生の面談で、こう指摘された。
「リクくんは本が好きで、授業中に借りてきた本を見てしまうんです。注意するとしまうんですが、気がつくとまた読んでいて……」
帰宅して、「本は好きでもいいけど、昼休みや家で読もうね」と話すと、リクは「わかった」と言った。
でも、この話は——コロナで休校になる頃まで、ずっと続くことになる。担任の先生が変わっても、毎回の面談で、同じことを言われ続けたのだ。
宿題そっちのけで、本を読み続ける
特にひどかったのが、3年生と4年生のときだ。
自宅でも同じだった。宿題があるのに、ランドセルを開けっぱなしのまま、本をずーっと読み続けている。
「リク! 早く宿題しなさい。また本読んで。宿題が終わってからにしなさい!」
「はーい」
そう返事をする。なのに、少し経って見にいくと、また本を読んでいる。これが毎日、延々と繰り返された。
当時はただただ、私もイライラしていた。
でも今ならわかる。リクは、最初に声をかけた時点では、たぶん宿題をやろうと思っているのだ。ところが、ランドセルを開けて本が目に入った瞬間、宿題のことは頭から消えて、「本が読みたい」という衝動に意識を持っていかれる。
私にもう一度注意される。「あ、そうだ、やらなきゃ」と筆箱を取ろうとする。——その途中で、また本を読んでしまう。
悪気はない。サボろうとしているわけでもない。ただ、目に入ってしまった誘惑に、心を奪われてしまうのだ。
学校でも、きっと同じだった。引き出しから何かを取り出そうとして本が見えた瞬間、もう読みたい衝動に支配されてしまう。注意されても、見えるとまた手が伸びる。
今思えば、最初の時点で私が本を預かって、宿題が終わったら渡す——それが一番効率的で、注意も叱ることも、ぐっと減らせたのだと思う。
下がっていくテストの点数
3年生ごろから、リクのテストの点数が、みるみる下がっていった。
お勉強系の習い事もしていなかったので、最初は「勉強についていけなくなってきたのかな」と思っていた。リクは理解力が乏しいのだろう、と。
でも今振り返ると、違ったのだと思う。授業中に本を読んでいて、先生の話を聞いていなかったから、理解できていなかったのだ。
特性の検査をしたのは6年生のとき。その結果、LD=学習障害はなく、知的には標準だった。つまり「勉強ができない子」だったのではなく、「授業を聞いていなかった」のが原因だったとわかる。
当時の私はそれを知らないから、必死だった。テストの点が下がるたび、自宅でワークを買ってやらせ、テスト直しをし、わからないところを説明した。
4年生で長女が生まれてからは、0歳児を抱っこしてあやしながら、リクに勉強を教えた。理解が苦手な分野も多くて、一つの単元に3時間かけて説明することもあった。
学校でちゃんと聞いてくれていれば、こんなに説明しなくてよかったのに——そう思うことも、正直、何度もあった。
本好きなのに、語彙はゆっくりだった
高校生になった今も、リクは本が好きだ。
ただ、不思議なことがある。あれだけ本を読んできたのに、語彙の習得は、むしろゆっくりだったのだ。
たくさん読めば言葉も増えるはず——そう思っていた私には、意外だった。でも、特性について調べてみて、なるほどと思った。
リクには、ワーキングメモリ(頭の中で情報を一時的に覚えながら処理する力)の弱さがある。この力が弱いと、文章を読むこと自体に負担がかかり、出会った新しい言葉が「頭に留まって定着する」ところまで、なかなかいかないのだという。
加えてリクは視覚優位で、物語をどんどん先へ追って読むタイプだ。一つひとつの言葉の意味をかみしめるより、展開を追う読み方になりやすい。だから、たくさんの言葉が目の前を通り過ぎても、すべてが身につくわけではなかった。
「本が好き」と「語彙が増える」は、イコールではない。これは、私にとって大きな発見だった。
でも、「好き」の知識は無限に伸びる
ところが——だ。
凸凹のあるリクは、自分が「好き」なことについては、知識を無限に増やしていく。
リクは社会が得意だ。本好きも相まって、教科書や資料集を「勉強」としてではなく「読書」として普段から読み漁る。家にある歴史の漫画も、何度も読み返す。
その結果、テスト前に特別な勉強をしていなくても、社会だけはクラスで上位の成績だった。
好きなことには、とことん夢中になれる。あの「本好き」が、形を変えて、今もリクの力に一役買ってくれている。
困りごとに見えた特性が、場所が変われば、いちばんの武器になる。リクを見ていると、本当にそう思う。
振り返って思うこと
同じように、お子さんの「やめられない好き」に困っている方へ、私の経験から3つ。
「サボり」ではなく「衝動」と捉える
やるべきことを忘れて没頭してしまうのは、悪気ではない。叱るより、仕組みで対応するほうが、お互い消耗しない。誘惑は「見えない場所」に移す
「我慢しなさい」より、そもそも目に入らないようにするのが一番効く。宿題の前に本を預かる。それだけで、毎日の注意が激減したはずだ。「好き」は、奪わずに伸ばす
今は困りごとに見えても、その夢中になれる力は、いつか強みに変わる。タイミングを整えてあげながら、「好き」そのものは大切に育てたい。
毎日「宿題しなさい!」と怒鳴っていたあの頃の私に、教えてあげたい。叱るより、まず本を預かってごらん。そして、その「好き」は、いつかこの子を助けてくれるよ、と。
息子の"勉強場所"をめぐる話は、こちらにも書いています。
あなたと、あなたの大切な人の明日が、少しだけ軽くなりますように。
この記事が「うちだけじゃないんだ」と思えるきっかけになれたら嬉しい。
フォローすると、凸凹兄弟のリアルな日常がタイムラインに届きます。これからも、同じように悩む誰かのそばにいられるような記事を書いていきます。
▼この記事を含む、勉強を教えるのをやめるまでの記録はこちら
▼あずきのページはこちら
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
いただいたチップは、発達の本や支援グッズの購入など、これからの記事づくりに使わせていただきます。
「うちだけじゃない」と思える場所を、これからも続けていきます。