「勉強しに行く」と出かけた息子が、5時間帰ってこなかった話
日曜日のお昼。パスタを茹でながら、私はリクのキッズケータイに何度も電話をかけていた。
呼び出し音は鳴る。でも、出ない。メッセージも、既読がつかない。
朝9時過ぎ、「勉強しに地域センターに行く」と言って出かけた息子。お昼には戻る約束だった。それなのに——。
今日は、そんな日曜日の話を書きたい。
「自宅では勉強しない」という方針
リクには、自宅で集中して勉強するのが難しいという特性がある。
普段から受診している専門医の話もあり、我が家は「自宅では勉強しない」という方針にしていた。基本は、塾の自習室で勉強を完結させてくるスタイルだ。
ただ、これには穴があった。塾の自習室が使えるのは、土曜の14時以降のみ。日曜は開いていないのだ。テスト期間で、いちばん勉強したい日曜に、勉強する場所がない。
家族全員がそろう日曜のリビングでは、とても集中できない。かといって自分の部屋にこもらせると、サボってしまう。
そこで私は、地区センターの自習室を使うことを提案した。リクも勉強道具をリュックに詰め込んで、「勉強しに地域センターに行く」と言って、出かけていった。
出かける前は、こう言っていた。「マジで勉強しないとヤベー。家じゃ集中できねーんだよ、勘弁して」と。本人なりに、必死だったのだ。
既読がつかない
9時過ぎに家を出たリク。お昼には戻ってくる、という話になっていた。連絡用に、キッズケータイも持たせていた。
(ちなみに我が家は、中学でもキッズケータイだった。その話も、また別の機会に書きたい。)
12時半ごろ、昼食の準備ができたので連絡する。——つかない。
勉強に集中しているのかな。そう思って、「パスタにラップしておくね。先に食べてるね」とメッセージを送った。
13時。まだ既読にならない。電話をかける。何度かけても、出ない。メッセージを追加で送る。
13時半。変わらず。
14時。さすがにおかしい。胸がざわざわしてきた。私は夫に言った。
「何かおかしい。そもそも、そこにいないのかもしれない。見に行ってくれるかな?」
リュックを背負ったまま、立ち読み
見に行ってくれたのは、夫だった。
そして見つけたリクは——家を出たときのまま、リュックを背負っていた。勉強道具をどこかに広げた様子もない。地区センターの自習コーナーの横にある蔵書棚の前で、本を立ち読みしていたのだ。
5時間も。
夫からの連絡を受けて、怒りがこみ上げると同時に、私は思った。図書館や、地区センターみたいに本がある場所は、リクにはダメなんだ、と。
その後も、「絶対に立ち読みはしない」という約束のもと、5回ほど地区センターに向かったことがある。でも、こっそり様子を見にいくと、見事に毎回、勉強できていなかった。
「別にいいじゃん!」と開き直る息子
帰宅したリクは、すごく不貞腐れていた。
叱られたことに加えて、好きなことを中断された不満もあったのだろう。逆ギレして、「別にいいじゃん!」と開き直る。
出かける前は、あんなに「勉強しないとヤベー」と言っていたのに。
リクは、どうしても他責になりがちだ。私も「怒ってはいけない」とわかっていながら、その横柄な態度と言葉に、つい怒りの言葉を投げ返してしまったことが、何度もある。
なぜ、こうなるのか
前回の記事にも書いたのだけれど、リクは本が目に入ると、その瞬間に衝動を抑えられなくなる。
「勉強しに行く」——その気持ちは、出かけるときには本物だったと思う。嘘をつくつもりも、サボるつもりもなかった。
でも、自習室のすぐ横に本棚がある。視界に魅惑的なものが入った瞬間、勉強の予定は頭から消えて、そこに「ロックオン」されてしまう。テレビと同じで、もう自分では止められないのだ。
だから「立ち読みしない」と約束しても、本がある場所に行く限り、何度でも同じことが起きる。問題は意志の弱さではなく、「本がある環境に置いたこと」だったのだと、今ならわかる。
その後、たどり着いた場所
地区センターは無理だ、と結論が出た。
長時間は難しいけれど、その後は「カフェで勉強してみたら」と提案し、自宅近くのカフェをいくつか巡ることになった。(その話も、また後日書きたい。)
同じように悩んでいる方へ、私の経験から3つ。
「約束」より「環境」を変える
「やらない」と約束させても、誘惑がある場所では難しい。本人の意志に頼るより、誘惑のない場所を選ぶほうが確実だ。勉強場所は「余計なものがない」が正解
本棚の横は最悪の立地。図書館や地区センターは静かで良さそうに見えて、本好きの子には罠になることもある。連絡がつかないのは「集中」とは限らない
あのとき私は「集中しているのかな」と思おうとした。でも、つながらない時間が長いときほど、早めに動いていい。心配しすぎなくらいで、ちょうどいい。
あの日のパスタは、すっかり伸びてしまった。でも、おかげで一つ学んだ。叱る前に、その子が「できる環境」を整えること。それが遠回りなようで、いちばんの近道だった。
息子の"勉強場所"をめぐる話は、まだ続きます。
あなたと、あなたの大切な人の明日が、少しだけ軽くなりますように。
この記事が「うちだけじゃないんだ」と思えるきっかけになれたら嬉しい。
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