カフェで勉強作戦も失敗。本に吸い寄せられる息子の話
地区センターの自習室で、5時間ずっと立ち読みをしていた息子。前回はそんな話を書いた。
本がある場所はダメなんだ——そう学んだ私は、次の作戦を考えた。「本棚のない場所」、つまりカフェである。
カフェ代はかかるけれど、家には小さい妹と弟がいて、とても勉強できる環境じゃない。背に腹は代えられなかった。今日は、その「カフェで勉強作戦」の顛末を書きたい。結論から言うと、これもまた、一筋縄ではいかなかった。
作戦その1・ドーナツ店
最初に向かったのは、ドリンクバーのあるドーナツ系のチェーン店。空いている時間を狙わせ、「1時間半したら帰ってきてね」と送り出した。
ところが帰ってきたリクから聞いて、私は脱力した。
ドリンクバーをまさかの4杯おかわり。さらに「ドーナツが食べたい」という衝動を抑えられず、少ないお小遣いで3つも買って食べたという。挙句、4杯目のおかわりのときに、お店の人に注意を受けたらしい。
「1時間半で帰ってきて」という約束も、まったく聞けていなかった。帰宅の連絡をしても返事はなく、結局2時間半も滞在していた。
——あそこは、ダメだ。1回で結論が出た。
作戦その2・コーヒーチェーン(その1)
次に提案したのは、別のコーヒーチェーン。
朝早く行くように話したけれど、準備に時間のかかるリク。家を出たのは9時半ごろ。「その時間は混んでると思うよ」と言ったそばから、案の定だった。
「すっごい人いたんだけど!」と、怒った口調で帰ってきた。しかも、カフェを勧めた私のせいだと言わんばかりの態度だ。
その後もう一度行ったが、やはり混雑していて、机も狭く、ざわざわして集中できなかったという。確かに、1〜2人用の小さい丸テーブルでは、問題集を広げるのも難しいかもしれない。
作戦その3・コーヒーチェーン(その2)
次は、また別のコーヒーチェーンへ。
今度は、リクが「着いた」と連絡してきたら、私がモバイルオーダーをして、本人が受け取る、という方法にした。
「それなりに捗った」と帰ってきたので、これはいいかもしれない、と思った。
……が。「1時間半くらい、お店が満席になりそうなら迷惑だから帰っておいで」と言っていたのに、2時間経っても帰らない。お昼になっても連絡がつかない。3時間経って、ようやく帰ってきた。
「すごく集中してたから、メールに気づけなかった。キリが悪かったから、キリのいいところまでやりたくて」
それ自体は悪いことではない。でも、長居しすぎるとお店にも迷惑だ。「あまり長居したらダメだよ」と注意して、その日は終わった。
ところが——これが、3回くらい続いた。
帰宅しても、ほとんど進んでいない
おかしい。集中したと言うわりに、帰ってきたノートは、ほとんど進んでいないのだ。
問い詰めると、半ギレで「別にいいじゃん、好きにしたって」と言う。そして、ようやく語った真相はこうだった。
ドリンクだけきっちり頼んで飲んだあと、コーヒーチェーンの近くにある本屋に寄っていたのだ。
家と駅の間にあるその本屋は、リクが立ち寄るスポットとして、悪い意味で「ルーティン」になっていた。中学の頃からだ。駅前に向かうという行動が、もう「本屋に寄る」という意識とセットになっていたのかもしれない。
バレなければ、おいしいドリンクをタダ同然で飲んで、本も見られる。——たぶん、そんなところだったのだと思う。
結局、本質は変わっていなかった
思い返せば、こういうことは前にもあった。
中学のとき、「塾の自習室に早く行きたい」と言って出かけたのに、入館のメールが来ない。「タッチがうまくいってなかった」「忘れてた」とはぐらかすので電話をしたら、やっぱり本屋にいた。
これは、小学2年生のときにそろばんをサボっていたのと、まったく同じ構図だった。
大きくなっても、本質は変わっていない。またもや、強い憤りがこみ上げた。そして、これは中学だけでなく、高校になっても続いた。
専門医に相談して、見えたこと
そこで、専門医に相談した。すると、「行く前に、勉強する範囲を一緒に決めて、確認してあげるといい」とアドバイスをもらった。
さっそく、出かける前に確認しようとした。ところが、リクは段取りよく説明できない。学校の勉強を何も知らない私に、略語で「○タンをA5まで、プリント、ノートしてワーク」みたいな、意味のわからないことを言う。
「教材を見せて説明して」と言うと、「そんなのわかるじゃん! はぁ!? これ無駄! 時間ないんだけど!!」と怒り出す。
結局それでケンカになり、テスト期間中なのにふて腐れて、1日まるごと勉強しないこともあった。1時間かけて怒りながら説明したと思ったら、「本当にこれ時間の無駄!」と出て行って、塾には行かず本屋に1日いたこともあった。
自分の発言へのプライドや責任感というより、やはり、その瞬間の衝動なのだと思う。
それと、最近わかってきたことがある。リクが怒り狂うとき——それはたぶんASDの特性で、自分が立てた計画を人に中断されたり、予定を変更されたりするのを、とても嫌う。あの怒りは、リクの中ではもう「本屋に行く予定」が決まっていたのを、邪魔されたからなのかもしれない。
それでも、旅は続く
中学から高1にかけて、我が家は本当にいろいろな方法を試した。そして、「カフェで勉強する」のも無理だ、という結論に至った。
今は、少し兄弟が大きくなったこともあり、下の子たちにできるだけ配慮してもらっている。テレビを我慢してもらったり、夫が弟妹を公園に連れ出してくれたりして、リクは自宅のリビングで勉強するようにしている。
それでも「うるさくて集中できない」と言われることもあるので、そんなときは、リクを置いて、私が下の子たちを連れて出かけることもある。(そのときに起きた問題と対応については、また別の機会に書きたい。)
我が家の「勉強場所を探す旅」は、まだ続いている。
同じように、お子さんの勉強場所を探している方へ、私の経験から3つ。
「誘惑のない場所」は、想像以上に少ない
本棚をなくしても、近くの本屋、スマホ、おかわり自由のドリンク——誘惑は形を変えて現れる。完璧な場所はない、と知っておくと気が楽だ。「行く前の確認」は有効。ただし、やり方を工夫する
範囲を一緒に決めるのは効果的。でも本人が説明下手だと、そこでケンカになる。怒らずに聞き出す工夫が要る(我が家はまだ模索中)。ダメだった記録も、立派な前進
「ここは合わない」が一つ増えるたび、合う場所に近づいている。試した数だけ、その子を理解できる。
いつか「ここなら大丈夫」という場所にたどり着けたら、また報告したい。
ちなみにこの"勉強場所さがし"は、現在このような状態となっています。
あなたと、あなたの大切な人の明日が、少しだけ軽くなりますように。
この記事が「うちだけじゃないんだ」と思えるきっかけになれたら嬉しい。
フォローすると、凸凹兄弟のリアルな日常がタイムラインに届きます。これからも、同じように悩む誰かのそばにいられるような記事を書いていきます。
▼あずきのページはこちら
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
いただいたチップは、発達の本や支援グッズの購入など、これからの記事づくりに使わせていただきます。
「うちだけじゃない」と思える場所を、これからも続けていきます。