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専門家の「正論」は、どうすればプロダクトの力になるのか──産業保健PdMとつくる開発現場【社員インタビュー】

B2B SaaS、特に「医療・ヘルスケア」という専門性の高い領域の開発において、エンジニアやPdMが最も苦労するのは何でしょうか? それは、「ドメイン知識の壁」と「ユーザーの“欲しい”と“あるべき”の乖離」です。

法律、医学的根拠、そして企業ごとの複雑な運用フロー。これらをコードに落とし込むには、翻訳者が必要です。

iCAREのEmployee Success部(以下、ES部)で産業保健師として働く大越(おおこし)さんは、まさにその「最強の翻訳者」の一人。 彼女は開発部の定例に顔を出し、仕様書を読み解き、時には「この機能では現場は回りません」とエンジニアに真正面からフィードバックを投げかけます。

なぜ、彼女はそこまでプロダクト開発に踏み込むのか? 専門職(ドメインエキスパート)と開発職が「混ぜるな危険」ではなく「化学反応」を起こしている、iCAREの開発現場の裏側に迫ります。

【プロフィール】
大学卒業後、総合病院の救命病棟看護師として従事。その後、保育園看護師、大学保健管理センター保健師を経て、金融系企業に産業保健師として入社。約10年間、複数のグループ会社の産業保健体制の構築・健康管理支援に携わる。2025年3月よりiCAREへ入社。

「Must」か「Nice to have」か。現場視点のトリアージ

── 大越さんは保健師として顧客企業のサポートをする傍ら、健康管理クラウド『Carely』の開発にPdMとして関わっていますよね。開発チームに対して、かなり鋭いフィードバックをしていると噂ですが(笑)。

大越さん(以下、大越): え、そうですか?(笑) 私はただ、システムを触っていて「ここが使いにくい」「これじゃ実務が回らない」と思ったことを素直に伝えているだけなんですけどね。

── エンジニアからすると、その「素直な意見」が一番ありがたいんです。具体的にどんなフィードバックをしているんですか?

大越: 例えば、システム上の操作ログや履歴の残し方についてです。 エンジニアの方からすると「機能としては動くからOK」に見える部分でも、私たち専門職から見ると「法的なリスク管理として、その履歴が残っていないとアウト」というケースがあります。

── なるほど。バグではないけれど、ドメイン的には「欠陥」になってしまうと。

大越: そうです。逆に「あったら便利だけど、なくても運用でカバーできる機能」もあります。 開発リソースは有限ですから、「法的に・実務的に絶対に外せない機能(Must)」なのか、「あったら嬉しい機能(Nice to have)」なのか。 その重み付け(トリアージ)を現場視点で判断して伝えるのが、私の役割だと思っています。

ユーザーの声をそのまま作らない。「翻訳者」としての役割

── それはまさにPdM(プロダクトマネージャー)の動きですね。 B2B SaaSだと、顧客(人事担当者など)からの要望をそのまま実装してしまって、プロダクトが複雑化してしまう失敗もよくあります。

大越: そうなんです。私たちES部には、顧客企業から日々たくさんの「こういう機能が欲しい」という要望が届きます。 でも、それをそのまま開発部に「作ってください」と横流しすることはしません。一度、私たち専門職というフィルターを通します。

── なぜフィルターを通す必要があるんでしょうか?

大越: お客様の「欲しい」が、必ずしも「産業保健としてあるべき姿」とは限らないからです。 例えば、「面談記録をこうカスタマイズしたい」という要望があったとして、それを安易に実装することで、かえって入力の手間が増えたり、データの一貫性が損なわれたりすることもあります。

── 「顧客の言う通り」に作ることが、必ずしも正解ではないと。

大越: はい。だからこそ、「なぜその機能が必要なんですか?」「本来やりたいことは何ですか?」と深掘りをして、産業保健のプロとして「それなら、機能追加ではなく運用を変えることで解決できますよ」と提案することもあります。 開発チームに届ける前に、要件を精査し、本当にプロダクトとして価値ある形に翻訳する。それが、私たちドメインエキスパートが介在する意味だと思います。

エンジニアとの共通言語は「リスペクト」

── 専門職からのフィードバックに対して、開発チームの反応はどうですか? 「うるさいなぁ」とか言われませんか?(笑)

大越: 全くないですね! むしろ「なるほど、現場だとそういう使い方をするんですね」「確かにその視点は抜けていました」と、すごく前向きに受け止めてくれます。

── それは健全な関係ですね。

大越: もちろん、何でもかんでも作ってもらえるわけではありません。「それを実装するにはこれだけの工数がかかるから、今回は見送ろう」といった判断になることもあります。 以前、ある一覧画面の選択方式(セレクトボックス)が使いづらくて、「これだと何百人も処理する時に日が暮れます!」って訴えたことがあって(笑)。

── 切実だ(笑)。

大越: その時も、エンジニアさんは嫌な顔ひとつせず、「技術的にどう解決できるか」を真剣に考えてくれました。 私たちも開発の大変さはリスペクトしていますし、開発の方々も私たちの専門性をリスペクトしてくれている。「良いプロダクトを作って、働く人の健康を守る」というゴールが共通しているからこそ、職種を超えて対等に議論ができているんだと思います。

ドメイン駆動開発の理想形

「仕様書通りに作る」だけなら、ドメイン知識は不要かもしれません。 しかし、iCAREが目指しているのは、複雑な産業保健の現場をテクノロジーで変革することです。

インタビューを通じて感じたのは、大越さんのような専門職が、単なる「社内ユーザー」ではなく、「実質的なPdMの一員」として機能している強さでした。

医学的な「正解」と、システム的な「最適解」。 この2つを高いレベルで融合させようとしているiCAREの開発環境は、エンジニアやPdMにとっても、非常に挑戦しがいのあるフィールドだと言えるでしょう。

「言われたものを作る」のではなく、「専門家と共に、本当に価値あるものを作る」。 そんな開発に飢えている方にこそ、iCAREの扉を叩いてほしいと思います。

【記事:アオキタカユキ

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