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誰かが考えて起こした行動を「当然」だと考えない

はじめに:私たちは「ありがとう」を忘れていないか

感謝の気持ちを持つことは、非常に大切です。私たちは幼い頃から、何かをしてもらったら「ありがとう」と伝えるように教わってきました。

しかし、大人になるにつれて、子供の頃ほど純粋に感謝の気持ちを持ち続けている人はどれだけいるでしょうか。私には今、3歳の娘がいます。保育園に社交性を学び、彼女は「ありがとう」と素直に感謝の言葉を口にします。これは本当に素敵なことだと感じます。

職場でも同じことが言えるでしょう。出社時に挨拶をしない文化の会社もあれば、少し前には「挨拶をしない若者」が話題になったこともありました。

もちろん、挨拶は誰かに強制されるものではなく、自発的に行うものです。挨拶をしないという選択も個人の自由かもしれません。しかし、その行動が相手に与える印象や、「この人はこういう人だ」というレッテルを貼られてしまう可能性については、自分自身で責任を持つ必要があるのではないでしょうか。

仕事に潜む「当たり前」という感覚

仕事において、この「当たり前」という感覚は非常に厄介です。「これくらいはやってくれて当たり前だ」「当然やってくれるだろう」といった、自分なりの価値観や期待が心の中には存在します。

だからこそ、相手がやるべきだと自分が思っているタスクを誰かが行ってくれた時に、素直に感謝の言葉を伝えられる人は意外と少ないように感じます。

リモートワークが主流になり、メンバーと直接会う機会は減少しました。私自身、ここ5年ほどリモートワークを続けています。その中で、チャットが活発な組織もあれば、そうでない組織も見てきました。

私が意識しているのは、相手に気づかれるかどうかは別として、誰かが何かをしてくれた時には「ありがとう」のスタンプを押すことです。あるいは、「いいね」のスタンプを押すこともあります。返信する際には、まず「ありがとうございます」と一言添えてから本題に入るようにしています。

対面の場でももちろん重要ですが、オンラインのコミュニケーションでは、こうした小さな積み重ねがさらに重要性を増します。小さな絵文字一つでも構いません。もし言葉で伝えるのが気恥ずかしいなら、スタンプのような反応から始めてみるのも良いでしょう。相手の行動に感謝の意を示すことで、その後のやり取りが気持ちの良いものになると感じています。

感謝と評価を切り分ける技術

誰かの行動は、その人が何らかの意図を持って考えた結果かもしれません。もちろん、考えなしの行動という可能性もありますが、それは本人に聞くまで分かりません。

しかし、「考えなしに行動した」と捉えるよりも、「考えて行動してくれた」と解釈する方が、お互いにとって気持ちが良いはずです。たとえ実際には考えていなかったとしても、感謝の気持ちは伝えられます。

まずは、その行動自体に感謝するのです。行動への感謝と、その結果に対する評価は切り離して考えるべきです。行動には感謝しつつも、結果が伴っていなければ、その点はフィードバックとして指摘する必要があります。

感謝だけして、結果が不十分な場合に「やってくれたからOK」とするのは違います。感謝と、結果に対するフィードバックは明確に分けるべきなのです。もちろん、結果が伴った場合には、大きな感謝と共に称賛を伝えるのが良いでしょう。つまり、仕事の一部として感謝を大切にするのです。

一方で、注意すべき点もあります。行動への感謝と結果へのフィードバックは分けるべきだと述べましたが、感謝の言葉と共に指摘をすると、相手が「感謝されていない」と感じてしまうことがあります。これは非常に難しい問題です。

人間ですから、感謝だけを伝えてほしいという気持ちは理解できます。しかし、結果が伴わなかったり、効果がなかったりした場合には、それを伝えなければ改善につながりません。だからこそ、伝え方には細心の注意を払う必要があります。

結果に対しては「よくやった」という評価の言葉が使えます。一方で、感謝は行動そのものに対するものであり、「やってくれてありがとう」という気持ちの表明です。たとえ結果が伴わなくても、「まずは、やってくれてありがとう」と伝えるだけで、コミュニケーションはだいぶ円滑になるはずです。感謝の気持ちと評価をセットで伝える際には、その表現方法を慎重に選ぶべきなのです。

「落ちたボール」を拾う人に、正当な感謝を

特に難しいのが、「落ちているボールを拾う」行為への向き合い方です。ボールを拾ってくれる人は、組織にとって非常に重要な存在です。彼らは、他の人が気づかないような課題やタスクを見つけて対応してくれます。

そもそも、ボールが落ちていること自体、多くの人には気づかれません。だからこそ、ボールを拾う人が損をしてしまう状況が生まれがちです。中には、「落ちているボールを拾う人が偉い」という文化を掲げ、ポテンヒットのような誰もが取りこぼしがちなタスクを積極的に拾う人が評価される会社もあります。そうした人材は、組織にとって非常に有益です。

しかし、感謝が失われた組織は、次第にギスギスしていきます。「あっちがやるべきだ」と、お互いに責任を押し付け合うようになるでしょう。拾っても感謝されなければ、その行動を続ける意欲は削がれてしまいます。それでも拾い続けてくれる稀有な存在もいますが、多くの人は感謝されなければ、いずれその行動をやめてしまうか、心の中に不満をため込んでしまうでしょう。

ただし、そこには一つ前提があります。それは、本来やるべき本業のタスクをきちんとこなせていることです。ボールを拾う姿勢は素晴らしいですが、本業がおろそかになっていては本末転倒です。ボール拾いの専門家ではあっても、本業ができていなければ、その時間を本業に使うべきだという話になります。

感謝が組織を温かくする

ここで重要なのは、自分の価値観で相手を評価しないことです。「そんなこと、自分ならすぐにできる」からといって、感謝しない理由にはなりません。

見方を変えれば、本来自分がやるべきだったかもしれない仕事を、他の誰かが拾ってくれたと捉えることもできます。そう考えれば、心からの感謝が湧いてくるはずです。「ああ、やってくれたんだ。本当にありがとう」と。

感謝は、言葉や態度で示さなければ伝わりません。「感謝しているんだよ」と心で思っていても、それを伝えなければ、その思いは存在しないのと同じです。感謝の言葉を省略してはいけません。

そうした感謝の気持ちを伝え合うことで、組織は温かいものに変わっていきます。評価のためではなく、ただ誰かに感謝されたいから行動するのでもありません。善意から生まれた行動に対し、善意で感謝を返すのです。感謝を伝えられた人が、その心地よさからまた別の人に感謝を伝える。

そうして、「感謝をギブする」という文化が生まれます。これは組織にとって非常に良い兆候です。

人は誰かに感謝されると嬉しいものです。「感謝されたくない」という人はいないでしょう。

感謝を伝え、その輪を広げていく。その繰り返しが、あなたの組織をより温かく、働きやすい場所にしてくれるはずです。自分の価値観だけで判断せず、誰かの行動に感謝を伝えること。それが、良い組織づくりの第一歩となるのです。きっと、あなたの働きやすさにもつながります。

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