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【週末エッセイ】 6 月が憂鬱と気づいた土曜の夜に —— 梅雨を恐れない、 自分だけの雨の楽しみ方

カレンダーの向こうに、 先に降ってくる雨

五月最後の土曜の夜。
僕はデジタル手帳の来月ページを、なんとなく開きました。

「6 月」

文字は小さいのに、妙に重い。
まだ雨は本格化していない。
洗濯物も、なんとか乾く日が残っている。

それなのに頭のなかだけ、先に梅雨が降ってくる。

「6 月は憂鬱だ」
「また、動けない季節が来る」

誰かが言った言葉が、カレンダーの上に重なります。
フリーランスの僕は、季節の切り替えが仕事の切り替えと直結しやすい。
吃音もあって、電話が増える月ほど、身体が先に縮こまる気がします。

先週、頭の中は晴らしたはずなのに。
外の季節の前に、感情だけが先取りで湿る夜でした。

梅雨を勝つ必要はない

かつての僕は、憂鬱を敵だと思っていました。

気合で晴らす。
習慣で塗りつぶす。
五月病というラベルも、敵の名前に使った。

敵にすると、毎日が戦場になる。
雨の日が、すべて負けの予感に変わる。

今の僕がやっているのは、勝つことじゃない。
付き合い方を、小さく設計することです。

梅雨を恐れないというのは、雨を好きになれという意味じゃない。
雨の日に自分を責めない約束を、先に決めておくという意味に近い。

僕だけの雨の楽しみ方三つ

大きなイベントは要らないと思っています。
傘を広げて写真を撮るヒーローにならなくていい。

僕のなかで効くのは、もっと地味な三つです。

ひとつ目は、窓辺の珈琲。
雨音が始まったら、豆を挽く。
外に出なくても、季節の音は部屋に入ってくる。
「今日は外に行かなくていい」と、自分に許可を出す儀式になる。

ふたつ目は、雨の日だけのプレイリスト。
同じ曲でも、雨の日は違う輪郭になる。
作業用の BGM を、少しだけテンポを落としたものに差し替える。
画面の明るさも、一段だけ下げる。
光と音を揃えると、頭のなかのざわつきが同じ方向に流れる。

みっつ目は、傘を一本だけ好きにする。
機能でいい。
柄や色を選ぶと、降り始めの瞬間に「あ、始まったな」と、少しだけ中立になれる。
敵意ではなく道具としての傘になる。

三つとも、誰かに見せるためじゃない。
在宅のまま、週末の夜に決められる。

晴らした頭と湿った季節を並べる

先週の土曜、僕は頭の中を晴らしました。
来週の日曜、思考の断捨離をした。

内側の天気は、少し整った。
外側は、これから本格的に湿る。

だから今週の僕は、内側と外側を別々に責めないと決めました。

頭が曇っている日は、整理する。
雨が嫌な日は、珈琲と音を味方にする。
どちらも失敗じゃない。
季節に合わせたメンテナンスです。

六月のカレンダーは、まだめくっていない。
めくる前に、雨の楽しみ方だけは決められた。

それだけで、土曜の夜が少し柔らかくなった気がします。

みなさんの六月の前にも、小さな傘が一本、心のなかに置けますように。

ひとりごと

憂鬱は消すものじゃなく、名前をつけるものかもしれない。
6 月が憂鬱と言えた夜は、少しだけマシだった。

雨は、これから増える。
それでも、窓辺には珈琲を置ける。

2026© おおとろ

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