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「言った言わない」 を終わらせた

〜 吃音の僕が書いて合意を取ることにした理由 〜

「そんなこと、言いましたっけ?」

この一言が、すべてを壊すことがある。

信頼関係、進捗、モチベーション。
たった一つの認識のズレが、プロジェクトを崩壊させる。

あなたにも、心当たりはありませんか?


打ち合わせ後に届いた、 一通のメッセージ

フリーランスになって数年が経った頃のことです。

あるクライアントから連絡が来ました。

「先日の打ち合わせで、〇〇の機能は追加しないと決まりましたよね?」

僕は青ざめました。
まったく違う記憶を持っていたからです。

僕の記憶では、「〇〇の機能は次のフェーズで検討する」という話でした。
「しない」とは、一言も言っていない。

でも —— 相手の記憶も「しないと決まった」で完全に固まっていました。

どちらも悪意はなかったと思います。
ただ、打ち合わせ中の会話が、それぞれの頭の中で「別の意味」に変換されていた。

吃音症の僕は、会議中に「違います」「そうじゃなくて」と反論することが苦手です。
言葉に詰まってしまうから。
言いたいことが口から出てくる前に、会話はもう次の話題へ進んでいる。

その結果、「言われたことを受け入れた」「合意した」と解釈されてしまうことが、何度もありました。

これは僕の「話し方の問題」なのか。
そう悩んでいた時期が、長くありました。

違いました。
これは「記録の問題」でした。

「言った言わない」 はなぜ起きるのか

「言った言わない」が起きる原因は、大きく 3 つあると考えています。

【原因 1】 人間の記憶は解釈を含む

「〇〇の機能は次のフェーズで検討する」
と言っても、受け取り手によっては「今回はやらない」と解釈する。
「やるかどうかは未定」
と伝えたつもりが「やらないと決まった」に変換される。

人間の記憶は、事実をそのまま保存する装置ではありません。
聞いたことを、自分の都合のいいように「編集」してしまう機能が、誰にでもあります。

これは悪意ではなく、脳の仕組みです。

【原因 2】 会議中は理解した気分になりやすい

会議の場では、相手の話を聞きながら「うんうん、わかった」と感じやすい。

でも、「わかった」は「同意した」ではない。
「聞こえた」は「伝わった」ではない。

その場の空気と流れが、曖昧な合意を決定に見せかけるのです。

【原因 3】 合意の言語化が省略される

「〜でいきましょう」「〜ということですね」と言葉に出すことなく、なんとなくの雰囲気で次の話題に進んでしまうこと。

この「なんとなくの合意」が、後から「言った言わない」の種になります。

特にリモート環境では、この問題が起きやすい。
表情や空気感が伝わりにくく、沈黙が「同意」に見える。
確認の言葉を省いたまま会議が終わり、各自が「自分の解釈」を正解として持ち帰ってしまう。

吃音の僕が直面した特有の問題

一般的な「言った言わない」問題に加えて、吃音症の僕には、もう 1 つの問題がありました。

会議中に「ちょっと待ってください」が言えない。

言葉が詰まっている間に、会話が先へ進んでしまう。
「それは違います」と言いたいのに、言い始めた瞬間に言葉が止まる。
焦れば焦るほど、どもりはひどくなる。

「まあ、後でメールで確認しよう」と思いながら会議を終えると、相手は決定事項として動き始めている。

以前読んだ「会議は「当日勝負」にしない。」でも書いたように、僕は会議のに準備をすることで、この問題を 9 割解決しました。

でも、残りの 1 割は会議の後にありました。

会議中に言えなかったことを、会議後に書いて確定させること。

これが、僕が議事録というツールに着目した理由です。

議事録の本質に気づいた日

議事録と聞くと、企業の会議で書記担当者が延々と発言を書き留める、あの長い文書を想像する人が多いかもしれません。

僕も、最初はそのイメージでした。
「議事録なんて、面倒くさい書類仕事だ」と。

転機は、あるクライアントとの打ち合わせ後のことでした。

その日も、いくつかの合意事項がありました。
いつものように「よろしくお願いします」で電話が切れる。

でも、その日は違う行動を取ってみました。

打ち合わせ終了から 30 分以内に、短いメッセージを送ったのです。

「本日のお打ち合わせ、ありがとうございました。確認のため、合意内容をまとめて送らせてください。」

そして、5 つの箇条書きで「今日決まったこと」を書いた。

相手からの返信は、こうでした。

「ありがとうございます。 3 番の件ですが、僕の理解と少し違っていて……」

そこで初めて、認識のズレに気づくことができました。

しかも、案件が始まる前に。
費用が発生する前に。
信頼関係が傷つく前に。

議事録を送ることは、記録ではなく、合意の検証装置でした。

合意形成議事録の 3 原則

僕が使う議事録は、企業の書記的なものではありません。
もっとシンプルで、もっと戦略的です。

フリーランスとして機能する議事録に必要なことは、3 つだけだと思っています。

【原則 1】 決まったことだけを書く

会議の発言を全部記録する必要はありません。
フリーランスの議事録に必要なのは、決定事項と次のアクションのみです。

「〜という話が出た」ではなく、「〜に決まった」。
「〜を検討する」ではなく、「〜は〇月〇日までに確認する(担当: ◯◯)」。

曖昧さを排除し、「誰が、何を、いつまでに」を明示する。

【原則 2】 30 分以内に送る

打ち合わせが終わってから、時間が経てば経つほど、各自の「解釈」が記憶に定着していきます。

30 分以内に送ることで、まだ記憶が新鮮な状態で認識のズレを修正できます。

また、早く送ることは仕事が丁寧な人という印象にもなり、信頼の構築にもつながります。

【原則 3】 相手に確認させる一文を添える

議事録の末尾に、必ずこの一文を入れます。

「以上の内容に誤りや不明点があれば、〇月〇日までにお知らせください。問題なければ、このまま進めさせていただきます。」

これは、単なる礼儀ではありません。
「返信がなければ合意とみなす」という明示的なルール設定です。

合意した証拠を残しながら、相手の確認コストを最小化できる構造です。

5 分で書ける 合意形成議事録テンプレート

では、実際にどんな形式で送るのか。

14 年のフリーランス生活で磨いてきた、フリーランス向け合意形成議事録のテンプレートを公開します。

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