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球体(sphere)が語る、グローバルマーケティングの本質


EXPOに浮かぶ地球・太陽・月とともに

2025年の大阪・関西万博の会場を歩いていると、目に留まるのは「球体」だ。地球、月、太陽、惑星をかたどったインスタレーション、あるいはパビリオンの外観。これら球体は単なる造形ではなく、私たちの暮らし、ビジネス、情報の流れを象徴するモチーフとして、多くの来場者に訴えかけてくる。

球体(sphere)を多数見た後に、スマホで次のパビリオンの予約をにトライする前に目につくには、iPhoneのデフォルト壁紙にある「地球」。
朝日に照らされる半球と、夜に沈むもう一方。私たちは常に光と影のどちらかを生きています。
その半球(hemisphere)という言葉一つとっても、北半球と南半球、そして東半球と西半球という分け方があります。

地球の自転と経度の都合上、「東西」は固定的ではなく、グリニッジ標準時(GMT)とその対極にある日付変更線が、地球をぐるりと分ける構造になっています。
以下のコラムも、お時間のある方はご一読ください。

「時差」「マーケティング」「PR」

この「時差」がマーケティングとPRにおいて非常に大きな意味を持ちます。世界は“同じ時間”に動いていません。
光が当たっている面も、ニュースが届く時間も、日々異なります。

日本企業は「海外向け」や「グローバル展開」といった言葉を使うことが多いのですが、本当は「どの地域に届けたいのか」をもっと丁寧に考える必要があります。

たとえば、アメリカ市場と一言で言っても、シリコンバレー、ロサンゼルス、シアトルなどの西海岸と、ニューヨークやボストンなどの東海岸では、情報の受け止め方も配信タイミングも異なります。
西海岸に本社を置く企業は、日本、アジア市場を意識し、現地時間で午後4~5時、日本時間の午前9~10時にリリースを配慮している、日本通の方が上層部におられる企業も多く、かなり理解が行き届いています。
一方で、東海岸の企業ではNYSEやNASDAQなど市場開場中の発表が優先されることも多く、必ずしも日本の現地時間を意識しているとは限りません。

だからこそ、英語でリリースを出す、あるいは海外のコンベンションに参加・出展するという場面では、その意図を関係者で共有し、誰に向けて、どんなメッセージを、どの言葉で、届けるのかを真剣に考える時代に入っています。

ただ「海外向けに英語を」と言って、社内で十分な議論がなされないまま、昨今便利な機械翻訳や生成AIの英語に頼ってしまうと、現地の読者にとっては“意味が通じない”どころか、違和感すら覚える表現になることもあります。これはハルシネーション以上に、ある意味やばいかもしれません。
だけれど、それを誰も社内で指摘しないまま、見過ごされてしまう――そんな“誰も教えてくれない”状態が続いているのが現実でもあります。

これはデジタルマーケティング、デジタルPRに通じる課題です。
日本のデジタルPR会社がまとめてニュースリリースを配信するタイミングは、12~14時、18~20時など、いわゆる“記者が見やすい時間帯”が多かったのですが、企業の情報そのものはすでに朝の9時や10時に公式サイトに掲載している場合、または情報解禁となっている場合があります。
東京証券取引所の取引時間は、前場が9時〜11時30分、後場が12時30分〜15時30分までです。
2024年11月5日から30分間取引時間が延長され、これまでの15時が15時30分になりました。
昔は、15時に終了時刻後に、プレスリリースを発表する企業が多くありました。30分伸びたことによる影響は、これから徐々に出てくると思います。
朝刊に間に合わせるための時間軸が変わり、ネットの速報性を踏まえた、適時開示の段取り、お作法自体が、デフォルト化する方向に向かっています。
こうした段取りに起因するタイムラグに加え、社の公式SNS、HP、IR等の適時開示による情報拡散のスピード、タイミングはチームプレーで、事前準備を徹底しておかないと、情報の“届き方”にズレが生まれてしまいます。
SNSで発表を受けて、本社のNewsへとリンクで飛んでも、そこにはSNSで発表された内容が何も記載されていないという情報格差。
こうしたことが起きやすいのが、現代のデジタルマーケティングとPRの時代なのだと思います。ですので、デジタルマーケティング、デジタルPRそしてIRの部署の方々には、当たり前でもPRも部署の方は経験しないと理解できないことかもしれません。

東京のお昼に、英語のリリースを英語関連のソーシャルに出しても、北米市場の関係者が誰も見ない、見ていない時間なので、即座にレスが返ってこない、という悲しい現実に直面します。それでも、現地でビジネスの時間になってから見えてもらればよい、という考えもあり、かと思います。
しかし、このコンセンサスは、事後ではなく、事前に関係者全員で共有できているか、いないか、が最重要であることは、上場企業のIR担当者であれば、デフォルトだと思います。
ターゲットとなる戦略市場のローカルタイムと日本時間との差は何時間あるのか、という共通認識は、チームでの共有が常に必要なのです。

近年、マーケティングオートメーション(MA)やセールスフォースオートメーション(SFA)の導入により、BtoB領域でも情報共有が進んできています。
しかし一方で、「国内だから」「海外だから」といった前提でチームが分断されたままでは、本来つかめたはずのターゲットや良きユースケースを見逃すリスクも高まります。
最初から“共有”する前提でチームが動くことが、グローバルに対応する企業にとっては必須の条件となってきています。

こうした“地球視点”でマーケティングを考えでみましょう!
自然と太陽や月との関係性にも目が向きます。
Sunrise(日の出)、Sunset(日の入り)、Daylight(昼間)、Night(夜間)――太陽に照らされる時間が、人々の行動リズムを作り出しています。
つまり、情報発信の“ゴールデンタイム”も国や地域によって異なるのです。私たちは、誰に、どの時間帯に、どの言葉で届けるのかを、改めて問い直さなければなりません。
日頃多忙な中、EXPOの会場で、球体を眺めるタイミングがあったら、表裏、光と影を見つめてください。物事を一面ではなく、多面で見れるように、俯瞰できるように!

球体を見ることから、自問自答できることって、多いのかもしれません。
ここまで綴った内容の一部でも、皆さんの生活の振り返りやヒントになれば幸いです。

私たちは、球体(Sphere)によってつながってきました。

かつては黒潮がアジアと他国を結び、スペインやポルトガルが大航海時代を拓き、トルコがユーラシアの要所として機能してきたこと。各パビリオンで実感することができます。
海路から航路、そして、今はデータを運ぶ海底ケーブルが、地球の“神経回路”ともなっています。
こうした背景があるからこそ、EXPO会場に多数登場する「球体」は、単なるオブジェではなく、私たちの思考と行動を映す鏡でもあります。

そして、会場には象徴的な展示もあります。
日本館には南極観測隊が発見した火星の隕石が展示。
アメリカ館には、月の石が展示されています。
これら二つの石ともも、人類が持ち帰ってきた“記憶”そのものでもあります。
これらもまた、マーケティングの「距離感」や「対象」の捉え方を問い直してくれる存在、ヒントなのかもしれません。

最後に、少しだけ暦の話をします。

惑星の順は「水金地火木土天海」。
一方、曜日の順番は「日月火水木金土」。
太陽・日(Sunday)と月(Monday)から始まるこの流れって、私たちの生活と宇宙の動きが深く関係していることを教えてくれています。

EXPOの球体たちを眺めながら、あらためて「誰に、いつ、どんな言葉で届けるか」を考える――それこそが、次世代のマーケティングとPRの出発点かもしれません。