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なぜ僕は、歴史ある企業の新規事業に向き合い続けるのか


日本の新産業に足りないのは、スタートアップだけではなく、歴史ある企業だ

はじめまして。株式会社ユニッジで代表取締役を務め、株式会社アルファドライブで企業変革統括をしている、土井雄介です。この10年ほど、プレイヤーとしても、仕組み構築側としても、支援側としても…徹底的に「企業の中から生まれる新しい価値創出」に向き合い続け、90社以上の歴史ある企業の新規事業に仲間とともに伴走してきました。

よく聞かれるのが「土井は何で”事業会社側”を向いているの?」ということです。ここについて、私の現断面の想いや考えを書いておくことを”自己紹介として”第一弾の記事として書いていきたいと思います。(ちゃんとした自己紹介記事はどこかで書きます…w)

私が大企業をファーストキャリアとして選択し、初めての仕事で物流改善で地域の歴史ある企業様とご一緒させて頂き…今では大企業をはじめとした、企業内新規事業に向き合い続ける中で、ずっと感じ続けていることがあります。

「日本の歴史ある企業には、まだまだとんでもない可能性が眠っている」ということです。

この数年、この国では「スタートアップ育成5か年計画」を筆頭に、スタートアップ振興の熱量がかつてなく高まっています。これは本当に素晴らしいことだと、私も信じています。日本発のユニコーンが生まれること、起業家が世界と戦うことは、絶対に必要なことだと思います。

一方で、僕はもう一つのピースが足りないと感じています。

新産業をつくるのは、スタートアップだけではない。歴史ある企業もまた、その主役の一角なのではないでしょうか。世界の老舗企業の半分以上が集まっているこの国では、大企業、中小中堅企業を始めとする"歴史ある企業"が動き出さない限り、新産業の絵は完成しないのではないかとすら思っています。

歴史ある企業だけが持てるアセット

歴史ある企業には、その時間の中でしか築けなかったものが確かにあります。

何十年、何百年をかけて信頼を積み重ねてきた顧客や地域との関係性。事業を長く続けてこられたからこそ、代々の先輩たちが磨いてきた技術。本業の現場に眠っている、生きた課題や検証の場。本業があるからこそ活用ができる場所やネットワーク。

これらは、事業を続けてきた企業だからこそ手にできたものだと思います。何十年、何百年という時間の中で、そこに関わってきたすべての方が積み重ねてくださった結果として、いま存在しているものです。

僕自身も、10年間所属した愛知の大手自動車メーカーで、この時間の重みを何度も感じてきました。役員の方の”雇用を守る”という意思決定。会社の名前の重み。関わる皆様が、時間を割いて話を聞いてくださる。会社として長く向き合ってきたテーマに、真剣に耳を傾けてくださる。それは、先輩方が何十年もかけて、一つひとつに関わる人達と誠実に向き合い続けてきてくださったからこそ、いま僕たちが受け取れているものなのだと思っています。

こうしたアセットの一つひとつは、スタートアップの皆様だけでは簡単には、たぶん作れないものではないかなと思っています。

大企業のリソース投下は「儲かるか」と「意味があるか」の二軸

一方で、歴史ある企業の新規事業を語るとき、スタートアップと同じ物差しで評価されてしまう場面をよく目にします。売上、利益、ARR、成長率、資金効率、EXIT可能性。もちろん、どれも大事な指標だと思います。

けれど僕が90社以上の現場を見てきて感じているのは、歴史ある企業の大規模なリソース投下の意思決定は、大きく二つの軸で決まっているのでは?ということです。

一つは、「経済合理性」。売上が上がる、利益が出る、会社の数字にインパクトを生む。これは絶対に必要ですし、向き合うべきことであると思います。

もう一つが、なかなか外で語られることはないですが「経営インパクト」です。本業への貢献、パーパスの実現、この国の雇用を守る、この国の産業をつくる。いわゆる「社会のために」「世の中のために」という精神に基づいた意思決定です。

僕が所属している愛知の自動車メーカーでは創業の精神に「産業報国の精神」という言葉があります。

僕が20代のはじめ、就職活動でお会いした先輩社員の方から聞いた”なぜ働いているのか”ということの中で何気なく全員が語っていた「世のため人のため」という言葉に、心の底から震えた瞬間がありました。その震えの正体を、10年以上経って、ようやく少しずつ言語化できるようになってきた気がします。あれは、日本の歴史ある企業の意思決定の根っこにある、独特のロジックだったのだと思います。

このロジックは、スタートアップの一般的な意思決定とは、少し異なるのではないか…と思っています。VCから調達した資金を、ランウェイの中で最大化する経営とは、そもそも設計思想が違うのではないかと思っています。

だから、歴史ある企業の新規事業を、スタートアップの成功パターンだけで測ろうとすると、どこかで無理が出てしまうのではないでしょうか。

歴史ある企業の新規事業には、歴史ある企業の新規事業ならではの意思決定ロジックがある。これを本気で言語化していくことが、実はいちばん足りていないのかもしれない、と最近よく思います。

すごい経営者が一人いる、だけでは終わらせたくない

大企業の新規事業がうまくいった事例を聞くと、たいてい「あの社長がいたから」「あの役員さんが体を張ってくださったから」「あの人だから突破できた」という個人名が出てきます。

これは本当にすごいことだと思っています。前例のないテーマに、自分のキャリアを賭けて意思決定してくださった個人がいたから、その事業は世に出た。心から尊敬していますし、私自身もたくさんのそういう”個”に支えていただいて今がありますので頭が上がりません。

ただ、正直に言うと、僕はここも、もったいないと感じているのです。
(というか、自分をサポートしてくれた様々な諸先輩方が「これで終わらせないように」とか「土井くんだけで終わらないように」といつも言ってくださり今の自分の思想があります)

なぜなら、その社長が代わったら、その事業は続かないかもしれない。その役員さんが異動したら、後任は同じ決断ができないかもしれないからです。「あの人だからできた」で終わってしまうと、その会社に残るのは「成功した一つの事業」だけで、「事業を生み出す力」は残らないのかもしれません。

僕自身、大手自動車メーカーの中で、社内公募制度で2年連続、事業化採択を先輩一緒にいただきました。けれど、求める事業として形にすることはできませんでした。

当時の自分は「自分の力不足だ」と思い込んでいました。半分以上は、本当にそうだったと思います。でも、もう半分は、事業を生み出すための「型」や「再現性のある仕組み」が組織にまだなかった、ということでもあったのだと、いま振り返って思います。

この気づきが、いまの僕の仕事の原点になっています。

必要なのは、事業化できる「人材」と、事業を生み出す「仕組み」を作れる人材を、同時につくっていくことなのではないでしょうか。事業化できる人だけを増やしても、その人が異動したり、辞めたりしたら止まる。仕組みを作る人だけを置いても、動かす当事者がいなければ絵に描いた餅になってしまう。この両輪が同じ組織の中で回り始めたとき、はじめて再現性と継続性が生まれるのだと思います。

これだけのアセットを持つ、歴史ある企業の新規事業を、たまたま成功した事例だけで終わらせるのは、あまりにもったいないと感じています。

どこかの国の踏襲ではなく、歴史ある企業があるからこその可能性を、この国で

スタートアップ育成5か年計画をはじめとして、日本のスタートアップ・エコシステムは、この数年で本当に着実に整ってきました。VC、アクセラレーター、政府支援、メディア露出。挑戦する起業家を社会が支える仕組みが、明らかに厚くなっていると思います。この流れをつくってくださっている方々には、心から敬意を持っています。

一方で、歴史ある企業の中で新規事業に挑戦する人を支えるエコシステムは、まだ道半ばだと感じています。

社内公募制度をつくっては尻すぼみになり、オープンイノベーションを始めては目的が曖昧なまま失敗し、また新しい手法を導入する。この繰り返しを、僕は現場で何度も見てきました。

これは、担当者の方の問題ではありません。会社の問題でもないと思っています。この国全体で、まだ「歴史ある企業発の新産業のつくり方」という型が、確立していないだけなのではないでしょうか。

諸外国の成功事例をそのまま持ってきても、うまくいかないと思うのです。あちらは、若い企業が短期間で急成長する前提で設計されたエコシステム。歴史ある企業の意思決定ロジックとは、そもそも土台が違うのですから。

だからこそ、僕たちは、自分たちで作らないといけないと思っています。世界の老舗企業の半分以上が集まるこの国で、歴史ある企業がアセットを解き放ち、新産業を生み出していく、日本独自の型を。

この記事を読んでくださっている意志ある企業の皆様に、二つのことをお伝えしたいと思います。

一つは、経営層を動かしてほしい。「新規事業をやれ」という号令だけでなく、意思決定のロジック、アセット活用のルール、撤退基準、人材配置──こうした仕組みを作る側の議論を、経営と地続きで進めていただきたいです。

もう一つは、意志ある現場のメンバーに、この視点をインストールしてあげてほしい。担当者一人ひとりが「自分は歴史ある企業の新規事業に関わっている」という誇りと、その独自性の理解を持って動き始めたとき、組織は初めて変わり始めるのだと信じています。

日本発のユニコーンが生まれることは、絶対に必要です。同時に、歴史ある企業の中から、新しい産業の芽が育つことも、絶対に必要だと思います。このどちらか一方ではなく、両輪なのだと思います。

組織や立場を超えた価値創出が当たり前におきるようになれば、この国は絶対もっと元気になれる。そう信じています。

新産業のラストピースは、あなたの会社の中に眠っているのかもしれません。そして、それを動かせるのは、いまその中で悩みながら働いている、あなたかもしれないのです。

僕自信も、もがきながらこのとてつもない大テーマに人生をかけていきたいと思っているからこそ、「事業会社側に徹底的に向き合っている」のだと今は自分で納得しています。
一人では絶対に実現できない大テーマだからこそ、意志ある皆様と一緒に考えて行動していきたいと思っています。ぜひどんな形でも、今後どんな場でも気軽にコメント、質問など頂けますと幸いです。


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