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本の紹介23冊目:「世界経済の死角」河野龍太郎×唐鎌大輔

久々の本の紹介です。前回の続きで23冊目です。

今回は、スターEconomistによる対談本です。

1人は、16冊目の本で紹介した河野龍太郎さん。

もう1人は、唐鎌大輔さんです。

唐鎌さんは、以下の2冊で、鋭く日本経済の実態に切り込み秀才のプロ職人ぶりを世に示しました。


新書とは思えないほどの充実度

なんと、414ページもあり、文書もぎっしりと詰まっていて親書とは思えない充実度です。

最近の親書は、薄い対談が多いのですが、プロの2人が本気で対談していて、内容は賞味期限が長いものばかりです。


桐島の問題意識(驚き!)

2025年7月20日投開票の参議院選挙の結果は、2024年10月の衆議院選挙と同様の結果でした。

これは、もちろん、自民党の失態続きというのも原因ですが、本質的には以下が原因です。

 近代が始まって以来、先進国の中で、四半世紀にわたって実質賃金がまったく増えなかった日本は、極めて異例です。
 より深刻な問題は、非正規雇用など、長期雇用性の枠外にいる人々への影響です。ベンチマークとなる正社員の実質賃金が上がっていないので、彼らの実質賃金もほとんど上がっていません。長期雇用性の枠外にいる人たちは、もともと賃金水準が低いこともありますが、大企業の正社員のように経験を積んだからといって、自動的に賃金が上がるわけではありません。年功型の賃金体系ではないわけです。
 それでも、ゼロインフレが長く続いた時代には、何とか生活を維持できていた人も多かったわけですが、近年の円安インフレの到来によって、状況は一変しました。定期昇給もなく、もともと賃金水準が低い中で、円安と物価上昇が重なったことで、生活が成り立たなくなった人たちが少なくないのです。
 その結果、長期雇用性の枠外にいる人々の間で社会への不満が高くなり、2024年10月の衆院選挙で、自公与党が過半数割れに追い込まれただけでなく、ポピュリズム政党の台頭が見られ、政治の不安定化、いわば“液状化”が始まったと私は考えています。(P47、48、河野龍太郎の発言箇所)

2024年の最低賃金

さて、上の都道府県で、立憲民主や無所属に投票した地域は、おおざっぱに、東北地方、四国地方です。

2024年の最低賃金が見ると、賃金が低い地域であることがわかります。


消滅可能性自治体

これら、東北地方、四国地方に何が起きているのでしょうか?

2024年に公表されたた「自治体持続可能性レポート」によれば、2050年に人口が半減する自治体を1番多く抱える県は、以下です。

東北地方の秋田県、青森県、山形県、岩手県が、首位4位を独占しています。

その後、四国地方の高知県(6位)、徳島県(8位)、愛媛県(11位)が登場します。


東北地方と四国地方で何が起きているのか?

結局、政治の不安定化(液状化)が起きはじめた東北地方と四国地方で起きていることは、「企業の不足稼げる勤め先の不足」です。

企業が少ないと、法人税の納付額が少なくなります。

法人税の納付額が少ないということは、企業活動が盛んでないということなので、たとえ、それらの企業に勤務できても、高い賃金が貰えないということです。


液状化⇒ポピュリズム政党の台頭

働き先がない、賃金が低いままに据え置かれれば、既時の政府・与党を攻撃する先鋭的で極端な市長が台頭しやすくなり、それが支持されます。

政治家として出馬する人も、新しく政党を作る人も、それに気づきました。

×政治家が時代を作る
〇時代が政治家を作る

という政治状況になってきたのです。


この書籍の凄さは、こんな最近の桐島の問題意識に言及してくれていて、
かつ、遡れば、政府の金融政策(アベノミクスによる日銀の大規模金融緩和)や日本企業の賃上げ不足に原因があることを示してくれています。

地方の賃金は上がるのか?

地方の賃金が上がるには、地方銀行や地方公務員の賃金を隗より始めよ!で上げなければいけませんが、地方公務員でさえも、非正規が増えていて、人件費を上げるのは困難なようです。

日本企業や中央・地方政府は非正規雇用を増やしてきましたが、その原因は、以下であることを、はじめて知りました。

 実は、2000年代に高齢者が急増し始め、高齢者向けの社会保障費が増大した際、政府は、その財源として、現役世代の被用者の社会保険料の引き上げで対応しました。小泉純一郎政権の時代(2001年4月~2006年9月)です。消費税で対応すると反発が大きいと考えて、政府は政治的に最もおとなしい我々サラリーマンの社会保険料の引き上げで対応したわけです。

 ただ、サラリーマンの社会保険料が上がることは、企業にとっては、正社員の人件費の増大を意味します。つまり、社会保険料が上がって正社員の人件費が増えるので、企業経営者は、非正規雇用を利用したほうが有利だと考えるようになったわけです。

 これが2000年代に非正規雇用が急増した一因で、日本の経済社会に大きな爪痕を残しましたが、専門家の間でもこの話はほとんど認識されていません。


大容量のコンテンツ(内容)

内容が多岐にわたるため、今更ながら目次を示します。
私、桐島は約6時間で、丁寧に一読しましたが、もう一度読み返したいと思っています。

序章:外国人にとって“お買い得な国”の裏側
第1章:なぜ働けどラクにならないのか
第2章:トランプ政権で、世界経済はどう変わる?
第3章:為替ににじむ国家の迷走
第4章:日本からお金が逃げていく?
第5章:AIと外国人労働者が日本の中間層を破壊する?
最終章:変わりゆく世界


桐島に刺さった内容

この書籍は、購入・読了をおすすめします。そのぐらい、濃い内容です。

そのため、今回は概要という形ではお伝えできません。

私個人に刺さった内容という形でお伝えします。

以前の齋藤ジンさんの本でも同じでした!!!

以下、刺さった内容です。

●外資系金融機関に四半世紀にわたり身を置いてきた私の印象からすると、今の日本の組織風土とアメリカのジョブ型は、非常に相性が悪いように思えます。仮に、アメリカのジョブ型をそのまま日本の会社に導入したら、一発屋とゴマスリ屋のような人たちが跋扈する事態になってしまいます(笑)(中略)
言葉は悪いですが、これは真面目な話です。そもそも人の能力というものは周囲の環境がたぶんに影響するので、今うまくいっているのが本当にその人の力量のおかげなのか、疑問に思うこともあります。実際には、一緒に働いている人との相性が大きく影響しているのではないでしょうか。仕事は運・不運も大きく影響するので、その人が優秀かどうか、直属の上司であっても、短い時間で見極めることはまず不可能です。(P40)

●どこの会社も、現在の課長や部長の賃金は、四半世紀前の課長や部長に比べても低い状況です。(P47)

●ヨーロッパで暮らす人が日本に旅行すると、あまりの安さに、まるでタイムマシンに乗って25年前、30年前の世界に舞い戻った感覚を抱くわけです。(P54)

●これまで日本の社会は「消費者余剰」(割安感)が大きかったため、長期雇用性の枠外にいる人々は、実質賃金が上がらない中でも、何とか生活を維持できていました。しかし、企業の値上げがさらに進めば、「消費者余剰」はさらに減少し、不満もいっそう高まるでしょう。(P59)

●公的機関にも民間にも当てはまる話ですが、近年、どこでもコストカットのために非正規雇用を増やしてきました。ただ結局、非正規雇用などを利用することで、業務をアウトソース(外部化)すると、人材派遣会社や業務委託先の経営者層が上澄みをごっそりとさらっていくだけで、あんまり大きなコストカットにはなっていません。結局、我々が行ってきたのは、低い賃金の仕事を作り出してきただけということです。私は、正規の地方公務員を増やして、安定的でやりがいのある仕事を作り出すことは、意味があるのではないかと考えています。(P62)

●日本、アメリカ、ユーロ圏の企業部門(非金融法人)が抱える現預金について、名目GDP比で比較すると、2024年12月末時点でアメリカが約6%、ユーロ圏が約25%であるのに対し、日本は約60%です。(P70)

●過去四半世紀で、時間当たりの生産性は3割も向上しています。これを踏まえれば、企業は今よりも2割ほど賃金を引き上げられるはずだと思っています。(P72)

●トランプ関税の影響で2026年は賃上げができない、なんていうような大企業の言い分に納得していては、絶対に駄目ですね。(P73)

●アメリカ経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は、トランプ氏が大統領選で返り咲きを果たす前にかなり改善していて、良好な条件がしばらく経済を下支えする可能性がありますね。トランプ大統領が経済政策で多少失敗を犯しても、アメリカ経済は簡単には深刻な不況に陥らないだろうと考えています。(P89)

●コロナが発生したとき、アメリカでは比較的、高所得者層の人たちがかなりの規模で郊外に引っ越しました。(中略)この動きにより、中古住宅市場の取引が活発になり、家具や家電の需要が急増しました。多くの人が新しい家に引っ越し、家財一式を買い揃えたため、結果的にアメリカの輸入が増え、特に中国からアメリカへの輸出が大きく伸びました。(P91、92)

●現在のユーロ圏経済低迷の原因は一つではないと思いますが、ドイルのエネルギー政策の在り方が要因であることは間違いないと思います。(中略)ドイツの近況をまとめますと、ロシアからの安定的なエネルギー供給と、中国というお得意様という2つの経済基盤を同時に失ったという事実が経済低迷の背景として指摘できそうです。(P98、99)

●ドイツのフォルクスワーゲン問題、日本の日産問題は、中国が自動車市場で頭角を現してきたことと無関係には語れないはずです。結論めいたことを言えば、世界的に見れば、中国がEV・AI・半導体の3分野で競争力を強め、輸出を拡大すればするほど、世界のインフレを抑える方向に作用するのではないでしょうか。(P116)

●もしトランプ関税をきっかけに世界経済の分断が進めば、これまで保たれていたバランスが崩れかねません。モノの輸出が滞れば、中国は成長の足を止めざるを得なくなります。そして、新興国からの「資本輸出(米国債の購入)」が止まれば、先進国の長期金利が急騰し、アメリカ経済にも停滞の波が押し寄せる可能性があります。(P117)

●レーガン大統領は1986年の中間選挙前に、ドル高問題を解決しようとしたわけですが、トランプ大統領も同じように、2026年の中間選挙前に、インフレが落ち着いてきたタイミングで、ドル高修正へ舵を切る可能性はあるかもしれませんね。ただ、インフラが落ち着くかどうかが問題ですが。(P150)

●コロナ禍が明けた後、本来「リベンジ消費(巣ごもり期間中にたまったお金を一気に使う動き)」が訪れるはずが、それがやってこなかったのは、円安インフレで家計の実質所得が大きく目減りしたためです。代わりに日本でお金を使ったのは、円安で大きなメリットを受けた外国人でした。(P162)

●日本では官邸に移行を実行する部署に優秀なエース人材を集中させるため、データの作成や分析に人員を割く余裕がありません。その結果、政治家の耳学問に基づいたアイデアを、そのまま政策に落とし込む傾向が強くなってしまいました。(P171)

●岸田政権では、恒久的な財源を確保することなく、恒久的な歳出をいくつも決めてしまったことです。ゼロ金利の長期化、固定化によって、日本社会のタガが外れたというか、すっかり財政規律が失われてしまった印象を持ちます。(P183)

●不況時に景気対策として財政支出を増やすことは必要だと思いますが、最近のように景気が回復局面にあるときに、ダラダラとそれらを続けるべきではないのです。岸田政権は2023年度に13兆円もの補正予算を編成しましたが、コロナ禍はとっくに終息していました。石破政権でも2024年度に14兆円もの補正予算を編成しました。いずれも規模ありきで、積算の根拠は十分に説明されませんでした。(P193)

●日本の実質賃金の推移を要素分解すると、最大の足かせが「交易条件の悪化」であったことは明白です。(中略)今や日本の輸入の約25%を鉱物性燃料が占めています。東日本大震災以降、原子力発電所の稼働を制限し、高価な化石燃料への依存度が高まっていることは周知のとおりです。交易条件悪化の背景に、こうしたエネルギー政策の現状や展望が大いに関わっています。(P200)

●金利を上げると、資金繰りの厳しい企業の破綻が増えるのは避けられません。ただ、そもそもコロナ禍のときに「ゼロゼロ融資」などで企業を手厚く支援していたため、本来であればとっくに廃業していたはずの企業が、今も生き残っているのが現状です。(中略)こうした企業や事業の整理が進むのは避けられませんが、それを「利上げのせいで倒産が増えた」とするのは、ちょっと“お門違いの議論”と言うべきですかね。(P205)

●かつてはアメリカの利下げによる超円高で輸出企業が苦しんでいた日本社会が、今ではアメリカの利上げや利下げ停止の局面で、超円安によって家計が苦しむ社会へと移行した可能性がある、ということです。(P206)

●財務省は当初予算については厳しく査定しますが、補正予算については「政治家の判断によるものだから仕方がない」という姿勢です。この考え方は、役所内の評価基準にも影響を与えています。たとえば財務官僚や、「補正予算を適切に査定する」ことで評価されるわけではありません。財務官僚の省内での評価は、あくまで当初予算の査定で決まります。その結果、当初予算は厳しめでも、補正予算による拡張的な財務運営が当たり前となり、本当に必要な政策を選び取る仕組みが機能しなくなっているのです。査定を受ける側の官庁も、本来は当初予算に盛り込むべき案件を、最初から補正予算で対応しようとする傾向が強くなっています。そのため、限られた財源を優先順位の高い政策に振り向けるという発想が乏しくなります。(P209)

●地政学リスクは貿易収支赤字の拡大要因を解釈するのが自然であり、円売り材料と理解するのが論理的でしょう。また、近年では2024年1月1日の能登半島地震発生の際も、円売りで反応しました。1995年1月の阪神・淡路大震災、2011年3月の東日本大震災が強烈な円買いを引き起こしたこととは対照的な反応でした。(P214)

●もし家計が円預金を外貨預金などに移せば、銀行の負債に占める円預金の割合は減少します。そうなると、銀行はこれまでのように大量の日本国債を保有し続ける必要がなくなってしまいます。実際、外貨建て予算へのシフトの影響もあり、地銀や一部の生命保険会社は、国債を購入する余力の低下が見られます。(P284)

●中国は変動為替相場制で消耗した日本の経験から、いろいろ学ぼうとしている気がします。管理変動為替相場の下、日本ほど為替が社会問題として争点化されることはないように見えますよね。(P356)

●金融イノベーションで本当に役立ったのは、ATMとネットバンキングくらい(P357)

●実はドイツは2018年に、不法移民を条件次第で合法化するという法律を作りました。つまり、2015年9月(移民・難民の無制限受入れを宣言)以降、大量に受け入れた移民・難民の一部は、ドイツ経済において合法的に労働力化されることになったわけです。(P365)

●経済学の一分野に「幸福の経済学」というものがあって、その研究によると、年収が800万円くらいを超えてくると、それ以上の収入増加は幸福度に大きな影響を与えないとされています。(P372)

以上、この本は、エコノミスト、アナリスト、銀行・証券業界界隈では、多くの人たちに読まれるでしょう。

自分の給料が低い原因を知りたい人、財務省批判をしたい人にとっても、自分の置かれた歴史的・社会的状況を教えてくれる書籍です。


久々に、集中して一気に読み切りました。

再度、読み返したいと思います♪

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