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男性不妊の検査から治療まで|診断基準とステップ別の対応法

男性不妊と女性不妊の割合はどのくらいですか?

WHO(世界保健機構)の不妊症原因調査では、男性のみ24%、女性のみ41%、男女とも24%、原因不明11%と報告されています。つまり男性不妊48%、女性不妊65%となっています。24%が夫婦ともに不妊原因があるため、夫婦で一緒に治療する必要があります

当クリニックは、婦人科と泌尿器科が合同でリプロダクション(生殖)センターを運営しています。

男性不妊の原因にはどのようなものがありますか?

当クリニックの男性不妊原因は、以下が多い傾向にあります。

  • 原因不明

  • 勃起障害

  • 精索静脈瘤

  • 精路閉塞

  • 染色体異常

  • 射精障害

  • 性腺発育不全

原因不明の精巣での精子を作る機能が、低下する方が多い傾向です。

男性不妊の検査はどんなものがありますか?

初診時には、問診と診察があります。検査は主に以下の内容を実施します。

  • 採血

  • 尿検査

  • 精液検査

  • 超音波検査

採血は、一般検査の他にホルモンや抗精子抗体、染色体などを調べます。超音波検査は、精索静脈瘤の有無を検査します。

精液検査はどのようにおこないますか?

自宅での採精は、時間の経過や温度の変化、紫外線などの影響があります。当クリニックでは、クリニック内採精をお願いしています。クリニック内採精は、正確な精液検査や人工授精・体外受精・顕微授精の成績向上につながります。

禁欲期間は3日間です。精液検査の4日前にマスターベーションまたは性交での射精をお願いします。精液検査の時間は、採取してから30分後から1時間の間がよいです。採取して時間が経過すると、精子の正確な運動率が難しいため、病院内での採精をお願いしています

当クリニックには、専用の採精室が2つあります。採精室は、個室でリラックスできるようソファーがあります。性的刺激としてエロチックビデオがありヘッドホンを使用して視聴できます。グラビア本の持参も可能です。

精液を専用容器に全量とっていただき、容器の蓋にマジックで名前と採取した時間を記載します。精液検査の結果は、同じ人でも変動しますので再度検査する場合もあります。

ホルモン検査で何がわかりますか?

血液検査で以下のホルモンを調べます。

  • FSH(卵胞刺激ホルモン)

  • LH(黄体刺激ホルモン)

  • テストステロン(男性ホルモン)

FSHとLHは、脳下垂体から分泌されるホルモンで、テストステロンは精巣で分泌されます。FSHは、精巣を刺激し精子の生成を促す作用があります。LHも精巣を刺激し男性ホルモンの分泌を促す作用があります。

FSHやLH、テストステロンのすべてが低下している場合は、ホルモン不足が要因であるためホルモン治療が有効です。FSHが高い場合は、精巣での精子を作る機能が低下している可能性があります。

抗精子抗体とはなんですか?

抗精子抗体は、女性だけでなく男性にもあります。女性に抗精子抗体があると子宮頸管粘液などで精子の運動性が悪くなり、自然妊娠が難しくなる場合があります。

男性に抗精子抗体があると精子の運動率が悪くなる可能性があります。精巣や精巣上体(副睾丸)、精管など過去に炎症や損傷がある場合は、陽性になる可能性があります。

例外もありますが、抗精子抗体が精子の運動性を悪くして、自然妊娠が難しくなる場合があります。精子運動率が悪い場合やなかなか妊娠しない場合は、人工授精や体外受精・顕微授精などを検討する場合もあります。

染色体検査(Gバンド法)で何を調べますか?

検査は採血で行い、当クリニックでは男性不妊の全患者さんに染色体検査を行っています

当クリニックを男性不妊で訪れた1007人に染色体を実施したところ、性染色体異常が38例(3.8%)、常染色体異常が24例(2.4%)、合計62例(6.2%)ありました。精子濃度500万以下、精巣容積8ml以下、FSH30.1mIU/ml以上、LH8.9mIU/ml以上などでは、それぞれ正常に比べ染色体異常が多い傾向です。

染色体異常は男性不妊の原因であり、妊娠の可能性や体外受精・顕微授精などの判断材料となります。

Y染色体微小欠失(AZF)検査とは?

Y染色体微小欠失(AZF)検査は、採血で行います。一部の無精子症の男性には、Y染色体のAZFという領域が欠けていることが報告されています

無精子症を対象とした、AZF領域微小欠失結果とTESE(精巣内精子採取術)の精子回収率に一定の関係が存在します。AZF領域微小欠失結果でAZFa欠失、AZFb欠失やAZFb+c欠失、Y染色体長腕欠失などでは、TESEを行っても精子を回収できないことが判明しています。TESE前に検査を行えば、無駄な手術を回避できるため、おすすめしています。

AZFc欠失は、精子を回収できる可能性があるのでTESEを行う場合が多いです。しかし、男児が生まれるとAZFc欠失は遺伝しますが、その男児が将来不妊症になるかは不明です。費用は、保険適用されていないため当クリニックでは、自費35,000円必要です。

EDや膣内射精障害が原因の男性不妊にはどのような治療がありますか?

特発性造精機能障害に次いで、EDの原因による不妊が多いですが、ED治療薬で8割は改善します。不妊治療のタイミング法でEDになる場合が多くあり、ED治療薬による改善が目指せます。

マスターベーションで射精できるが、膣内で射精できない膣内射精障害では、一度陰茎を抜いて手で陰茎を刺激し射精直前に再び挿入する方法や、カップに精液を取って2mlの針なしの注射器で膣に注入する方法があります。

乏精子症(精子が少ない)・精子無力症(精子の運動性が悪い)にはどのような治療がありますか?

精索静脈瘤がない場合

精索静脈瘤が男性不妊の原因の一つですが、超音波検査で精索静脈瘤がない場合は、コエンザイムQ10:100mg/日内服またはクロミフェン25-50mg/日内服を行っています。クロミフェン内服は自費診療になります。

精索静脈瘤がある場合

精索静脈瘤がある場合は、手術をおすすめしています。手術方法には、以下があります。

  • 顕微鏡下精巣静脈低位結紮術

  • 精巣静脈高位結紮術

ドプラ血流計を使用した顕微鏡下精巣静脈低位結紮術は、局所麻酔で陰嚢付け根を切開し、日帰り手術が可能ですが自費診療です。精巣静脈高位結紮術は、全身麻酔で腹部横切開で3泊4日の手術です。手術成績は、手術法で差はなく精液の改善は約80%で認められています。

女性の年齢が40歳に近い場合

女性の年齢が40歳に近い場合は、男性不妊の治療を行わず、人工授精や体外受精・顕微授精を選択する場合もあります。男性にも不妊の薬物治療や静脈瘤治療を並行することで、婦人科的治療効果を高めると考えられています。

WHO(世界保健機構)の精液検査の正常値が2010年に以下のように変わりました。

  • 精液量1.5ml以上

  • 精子濃度1500万/ml以上

  • 総精子数3900万以上

  • 運動率40%以上

  • 正常形態率4%以上(奇形率96%未満)

  • 総運動精子数(総精子数×運動率)1560万以上

どれくらいの精液所見の時、人工授精や体外受精・顕微授精が必要ですか?

男性不妊が原因の場合は、まず男性の治療をおすすめします。男性不妊の治療効果が不十分な場合は、婦人科的治療が必要です。動いている精子の総数(総運動精子数)で婦人科的治療法が選択されます。総運動精子数は、「精液量×濃度×運動率=総運動精子数」の式で求めます。

総運動精子数が1560万以上の場合

総運動精子数が1560万以上の場合、性行為で自然妊娠する可能性があります。しかし、2年間不妊なら人工授精をおすすめしています。

総運動精子数が1560万未満—900万以上の場合

総運動精子数が1560万未満—900万以上の場合、人工授精をおすすめしています。しかし、5回程度行っても難しい場合は、体外受精・顕微授精の検討も提示しています。

総運動精子数が900万未満—500万以上の場合

総運動精子数が900万未満-500万以上の場合、体外受精をおすすめしています。

総運動精子数が500万未満の場合

総運動精子数が500万未満の場合、顕微授精をおすすめしています。

不動精子しかない場合

不動精子しかいない場合は、精巣内精子採取術(TESE)をおすすめしています。精巣内精子は、不動精子でも顕微授精(ICSI)に使用できます。

妻の年齢が40歳に近い場合

妻の年齢が40歳に近いと男性不妊の治療を行わずに、人工授精や体外受精・顕微授精などを選択する場合が多くなります。男性不妊の薬物治療や静脈瘤治療も並行すると、婦人科的治療効果を高めると考えられています。

無精子症にはどのような治療がありますか?

閉塞性無精子症の場合

精路閉塞の要因は、主に以下が挙げられます。

  • パイプカット

  • 鼡径ヘルニア手術

  • 精巣上体炎

  • 射精管閉塞

必要な患者さんには、入院し全身麻酔で顕微鏡下精路再建術または射精管切開術を行います。手術をしても精子が出現しない場合も考えられますので、精巣内精子の凍結保存も念のため行います。

精管欠損の場合

診察や超音波検査で精管欠損と診断された場合は、TESE-ICSI(日帰り手術)またはMDTESE-ICSI(日帰り手術)を行います。

その他

FSH低値の場合は、性腺発育不全の可能性がありホルモン治療が有効です。FSH正常値で染色体異常がない場合は、精巣内で精子を作っている可能性が約90%でTESE—ICSI(日帰り手術)やMDTESE-ICSI(日帰り手術)を行います。

TESEで精子を採取できなかった場合は、さらにMDTESEを行います。初めからMDTESEを行えば1回の手術で済みますが、精子を採取できる確率は約90%です。

FSH高値や染色体異常、Y染色体遺伝子異常やTESE無効の場合は、MDTESE—ICSI(日帰り手術)を行います。精子を採取できる確率は約30%です。

精子が採取できなかった場合は、AID(他人の精子による人工授精)を希望者のみ検討します。他人の精子による体外受精IVF・顕微授精ICSIは学会で議論中です。

逆行性射精にはどのような治療がありますか?

逆行性射精は、射精反射はあるが精液が射出されず膀胱内に射精する状態で、糖尿病や腹部・直腸の手術後に起こる可能性があります。治療は、薬物療法を行い、効果が無い場合には、TESE-ICSIまたは膀胱内精子回収-ICSIを行います。

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