ランニング後にパスタ食べて意識を失いかけた医師が、血糖スパイクを本気で調べた~食べないで痩せるのは当たり前。食べながら痩せたい人のための、血糖コントロールの話~
今回のキーワードは「血糖スパイク」。
食後に血糖値が急上昇・急降下する現象。健康診断でオールAの人にも普通に起きています。
「美味しいものを食べて痩せる」。
そんな夢の理論についてまとめました。
私の昼休みは45分間。
先日、昼休みに30分ランニングをして、汗だくで戻ってきて、急いでスープパスタをかき込んで、午後の仕事に臨みました。
15分後、意識が飛びかけました。
椅子に座ったまま、頭が重くて、目を開けているのがやっとの状態。患者さんの前でなくてよかった。本当に。
内科医として、即座に思いました。
「血糖スパイクだ…。」
食べないで痩せるのは当たり前。
食べたいものを食べながら、痩せたい。
そんな人のための血糖コントロールに基づく、できるだけ太らない食べ方について。
私自身が知りたいので、本気で勉強しつつまとめました。
(少し時間がかかり前回の予告から時間が過ぎてしまいました、すみません)
そもそも血糖スパイクって何?
まず基本から。
血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のこと。食事をするたびに上がり、インスリンというホルモンが分泌されることで下がる。これが正常な流れです。
問題は「上がり方」です。
ゆっくり上がってゆっくり下がるなら体への負担は少ない。でも急激に上がって急激に下がる、つまり血糖スパイクが起きると、体にさまざまな悪影響が出ます。

なぜ食後に眠くなるのか
私がパスタの後に意識を失いかけたのはこういうことです。
空腹状態でランニングをした後、急いで糖質メインのパスタを食べると、血糖値が一気に跳ね上がります。
体は慌ててインスリンを大量分泌する。インスリンが効きすぎると今度は血糖値が急降下する。
この急降下が「低血糖に近い状態」を作り出し、強烈な眠気・だるさ・頭の重さとして現れます。

「食後に眠くなるのは当たり前」と思っていませんか。
それ、当たり前じゃないんです。血糖スパイクのサインだとすると、食べるもの・食べ方の工夫で改善されるかもしれません。
血糖値、結局どのくらいが正解?
ここ、意外と知らない人が多いので整理します。
空腹時血糖(起床時・食前)
正常 → 70〜99mg/dL
境界型(要注意) → 100〜125mg/dL
糖尿病型 → 126mg/dL以上
食後血糖(食後2時間後)
正常 → 140mg/dL未満
境界型 → 140〜199mg/dL
糖尿病型 → 200mg/dL以上
ここで重要な話をします。
健診の血糖値は「空腹時」の一点しか測っていません。
食後に何が起きているかは、健診では全くわからない。
空腹時血糖が正常でも、食後に140を超えるスパイクを起こしている人は実はかなりいます。
「健診オールA」でも安心できない理由がここにあります。
急上昇とゆっくり上昇、何が違うの?
同じカロリー・同じ糖質量でも、上がり方によって体への影響が全然違います。
【急激に上昇する場合】
インスリンが大量分泌される
血糖が急降下して眠気・だるさが出る
インスリンが余ると脂肪として蓄積されやすい
血管への負担が大きい
長期的に糖尿病リスクが上がる
【ゆっくり上昇する場合】
インスリンが少量ずつ分泌される
急降下が起きにくいので眠気が出にくい
脂肪として蓄積されにくい
腹持ちが良い
同じものを食べても、食べ方次第で上がり方が変わります。
これが今日の記事で一番伝えたいことです。
血糖スパイクが太る理由
「血糖が上がると太る」とよく言われますが、正確にはインスリンが問題です。
血糖が急上昇すると、インスリンが大量に分泌される。インスリンには血糖を脂肪に変えて蓄積する働きがあります。つまり血糖スパイクが繰り返されるほど、脂肪が蓄積されやすい体になっていく。
しかも急降下後は強い空腹感が来るので、また食べたくなる。
食べる→スパイク→脂肪蓄積→空腹→食べる、という悪循環が生まれます。
これ、ダイエットしても痩せない人の典型的なパターンです。
食べる量を減らしても、血糖スパイクを繰り返していると痩せにくい体のままになる。
いま話題のGLP-1受容体作動薬(マンジャロ、リベルサスなど)が医学的に注目されている理由のひとつが、この血糖スパイクを抑える作用です。
食欲を抑えながら血糖の上昇をゆるやかにする。詳しくはこちらで書いています→
太りにくい食べ方・実践編
では具体的に何をすればいいのか。難しいことは何もありません。
①食べる順番を変える(ベジファースト)
野菜→タンパク質→炭水化物の順で食べると、食物繊維が糖の吸収にブレーキをかけてくれます。同じ定食でも、白米から食べるのと野菜から食べるのでは、食後血糖のピークが明らかに違う。

厳密にやろうとすると食事が楽しくなくなるので、「最初の一口だけサラダか味噌汁」くらいのゆるさで十分です。続かなければ意味がない。
②食後10分歩く
食後の血糖がいちばん上がるタイミング(食後30〜60分)に筋肉を動かすと、筋肉がブドウ糖を吸収してくれてスパイクが抑えられます。

ここで一つ、よく聞かれる疑問に答えます。
「空腹時に運動すると脂肪が燃えやすいって聞いたけど、食後に動けってどういうこと?」
両方正しいんです。ただし目的が違う。
空腹時運動(食前)
⭕️脂肪をエネルギーとして使いやすい・脂肪燃焼効率が高い
✖️食後のスパイクが大きくなりやすい
食後運動(食後30〜60分)
⭕️血糖スパイクを抑える・脂肪蓄積を防ぐ
✖️脂肪燃焼効率は空腹時より低い
脂肪を燃やしたいなら空腹時運動が有利。血糖スパイクを防いで太りにくくしたいなら食後運動が有利。
ただし空腹時運動には条件があります。
運動後に糖質メインのものをドカ食いしないこと。
空腹状態で運動した後は血糖が下がりきっているので、そこに一気に糖質を流し込むと、通常より大きなスパイクが起きます。
私がスープパスタで意識を失いかけたのは、まさにこのパターンです。
昼ランで血糖を使い切った状態で、急いでパスタをかき込んだ。最悪の組み合わせでした。医師として自分の体で実証してしまいました。笑
現実的な落としどころはこれです。
脂肪燃焼を優先したい日
→空腹時運動、ただし食後はタンパク質から食べる
血糖管理を優先したい日
→食後30〜60分に10分だけ歩く
少なくともやってはいけないこと
→空腹時運動後に糖質メインのものをドカ食い
きつい運動じゃなくていい。食後に皿を片付けるついでにうろうろするだけでも血糖のグラフは変わります。続けられることが全てです。
③GI値を意識する
GI値とは、食後血糖の上がりやすさを示す指数。
高いほど血糖が上がりやすい。

パンは白米より血糖が上がりやすいというのは意外と知られていない話です。同じ主食でも、そばや玄米に変えるだけでスパイクが抑えられます。
全部変える必要はない。週に1回そばにする、くらいから始めてください。
④食べる時間帯を意識する
ファスティングの記事でも書きましたが、体内時計(概日リズム)の関係で、夜遅くに食べると同じカロリーでも太りやすい。
これ、血糖コントロール的にも同じことが言えます。夜は代謝が落ちてインスリンの効きも悪くなるため、同じものを食べても血糖スパイクが起きやすくなる。

「夜食べると太る」は本当の話です。時間帯だけで血糖の上がり方が変わります。
おやつ、どう食べるのが正解?
ここが一番聞きたい人が多いと思うので、正直に答えます。
何を選べばいいか
血糖スパイクを起こしにくいおやつの条件は「食物繊維・タンパク質・脂質が含まれていること」です。
例えば…
ナッツ類
→ 脂質・タンパク質メインで血糖がほぼ上がらない
ダークチョコレート(カカオ70%以上)
→ポリフェノールが糖の吸収を緩やかにする
ギリシャヨーグルト → タンパク質が豊富、血糖上昇が緩やか
チーズ → 糖質がほぼゼロ
ゆで卵 → 完全食、血糖に影響しない
逆に気をつけたいのは、「ヘルシーそうなのに血糖が爆上がりするやつ」です。
フルーツジュース、グラノーラ、スムージー。
これらは見た目に騙されやすい。食物繊維が除去されているか、糖質が凝縮されているかのどちらかです。

②ドカ食い vs ちょこちょこ食べ、正解はどっち?
結論から言うと、理論上はちょこちょこ食べの方が正解です。
一度にたくさん食べると血糖が一気に上がってスパイクが起きる。
少量を回数に分けて食べると、1回あたりの血糖上昇が小さくなります。
これは医学的に正しい。
でも現実は、そう簡単じゃない。
「ちょこちょこ食べ」は、現実には「ちょこちょこつまみ食い」になりがちです。
気づいたらお菓子を一袋空けていた、冷蔵庫を何度も開けていた。合計カロリーが爆増していた、という経験、ありませんか。
しかもつまみ食いのたびに血糖が上がり続けるので、インスリンが出っぱなしになる。これは脂肪蓄積的にも最悪です。

だから現実的な落としどころはこれです。
「ちょこちょこ食べが良い」のは、食べるものと量をあらかじめ決めている場合だけ。
・おやつは午後3時前後に1回、内容と量を決めて食べる
・空腹を溜めすぎないことで夕食のドカ食いも防げる
・ナッツやチーズなど血糖が上がりにくいものを選ぶ
・甘いものが食べたい時は食後のデザートとして食べる(単独で食べるよりスパイクが起きにくい)
甘いものを食後のデザートにするのは、食事で摂った食物繊維やタンパク質がクッションになってくれるためです。
空腹時に甘いものを単独で食べるのが一番スパイクを起こしやすいので、それだけは避けてください。
「何となくつまむ」をやめるだけで血糖管理は劇的に改善する
ちょこちょこ食べの理論を現実に落とし込むと、「回数を増やす」より「食べる時間を決める」の方が続けやすくて効果的です。
本当は自分でも測りたい
ここまで書いておいてなんですが、正直に言います。
私自身の血糖、測ったことがありません。 少なくとも妊娠中以外では。
冒頭のスープパスタ事件、グルコーススパイクだと思っているのも医師としての推測であって、実際に数値を見たわけじゃない。
リブレという腕に貼るだけで14日間血糖を測り続けられるセンサーが約8,000円で買えます。健康な人でも使えます。
買おうとしました。
8,000円でした。今月はやめました。
フォロワーが増えたら買います(増えますように🥺)
「医師がリブレつけて人体実験」、いずれ必ずやります。乞うご期待。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回は…
「着圧スパッツ・コルセット、本当に痩せる?」
いや、もう書きましたね。次は
「ジム通い、週何回・1回何分やれば痩せるのか。医師が答えます」
マラソン練習中の私が、運動と血糖コントロールの関係も絡めて解説します。
2日後にお会いしましょう🌷
