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【読書感想文】バリ山行/不安定な世の中で生を実感する小さな旅



おおまかなあらすじ

”私”こと波多が先輩の妻鹿さんと一緒に六甲のバリルートを歩くお話です。


妻子持ち会社員は、とにかく苦しい

主人公の波多は建設下請け会社に勤める会社員。
会社の経営はお世辞にも安定しているとは言えず、どうも社内の雰囲気は不穏だ。もしリストラが始まれば、社歴の短い自分に白羽の矢が当たるかもしれない。

心当たりも十分ある。人づきあいが煩わしく、飲み二ケーションもおざなりにしてきた。会社は人づきあいの悪い人間を真っ先に見放す。転職前の会社でそれは十分身に染みたはずなのに。
そんな中、社内では初めての週末ハイキングイベントが開かれる。

今ここでリストラ候補に挙がるわけにはいかない。”私”にはまだ幼い娘が生まれたばかりだ。社内での人脈構築のために、汗だくになりながら六甲山の山中を同僚と歩く。

風吹岩あたりを過ぎたころ、登山道のない、池の対岸から見覚えのある作業着を着た小柄な男が葉群をかき分けもそもそと練り歩いている。
妻鹿さんは毎週末になると、六甲のバリエーションルートを憑りつかれたように歩きまくっているという。


会社人ほど、中盤は読んでいてすごく辛い!

この間飲み会で関東の低山のバリルートの話で盛り上がったのですが、「バリルートといえば、こういう本があってね」と紹介されたのがこのバリ山行という小説。芥川賞を受賞した作品らしいです。
(最初名前聞いたときバリ島でなんかする本なのかな?と思った。)

最近の読書はもっぱら中世バルカン史とかハプスブルク史が中心で、小説はそれこそ中学の時に図書館で借りた田口ランディさんの「モザイク」が最後だったので、最後まで読めるかなあと不安になりつつも近所の本屋さんで見つけたので購入。

早速家に帰って本を開いたのですが、1ページ1ページがとにかく気まずい。
冒頭の概要紹介でも書きましたが、主人公の勤務する企業はとにかく先行き不安の真っただ中。
幼いこどもをこれから養っていかないといけないのに、路頭に迷うわけにはいかないと日中は夜遅くまで働き、業務状況が変化するにつれ休日も返上して働きづめ。こんなに頑張っているのに、社長は本業が危機的状況であるにもかかわらず怪しいセミナーにお熱という体たらく。

私の勤める会社も中身は違えど同じようなもので、なんだか主人公の置かれた境遇と今現在の自分を重ねてしまい、悲壮感でいたたまれなかったです。


バリエーションルートはミノルもたまによく登ります。

ところでバリルート、バリエーションルートってなんぞや?
山と高原地図だったり、ヤマレコを開いて地図を見てみると赤く太い線でなぞられているのが通常の登山道です。
人の手が入り整備されており、比較的安全に通行が可能であり、植生保護の観点からしても登山道を歩くのが一般的です。

この一般の整備された登山道とは違い、道なき道をバリエーションルート、長いので略してバリ、バリルートと呼びます。

登山地図にも破線で紹介されているルートもあり歩くことができますが、あまりお勧めしません。だって危ないもん。

私もたまによくバリルートで遊んでいますが、比較的安全で有名な道を選んで歩いているつもりです。
以前紹介したカンマンボロンも、バリルートをたどって到達するものですね。

この本に登場する妻鹿さんは、地図の等高線の勾配を見てルートファインディングしているようで、ガチ度が高いようです。
現地の状態がわからない中で等高線だけ見てルートを作るのは非常に難しいです。よく訓練しないとできない芸当です。

高いレベルで地図読みができるとのことですので、山で行動するスキルは相当高いとお見受けしました。


妻鹿さんにも主人公にも共感できないんだけど、理解はできる。

妻鹿さんはバリルートを歩く動機が「生の実感を得られるから」。危ない目に合うほどその感覚をより強く得られるとのこと。
一方の主人公は、この不安でたまらない気持ちを抜け出すきっかけになるのでは(とミノルは受け取りました)、と妻鹿さんの山行についていきますが、バリルートという自然をもろに相手することになるアクティビティを前にただでさえない心の余裕がさらに擦り切れ、ついに限界を迎えてしまう・・・。会社での妻鹿さんの立場に思うところがあって強く当たってしまい、二人の関係はそれっきりになってしまいます。

この両者の心境は何となくそうなるのは理解できるんだけど、読み終わった後に思ったのはあんまり共感できないなあという感想でした。
そもそも私があまり他人の考えに共感しない性格だからかもしれませんが、でも二人のそれぞれ相対する心境を理解して受け入れることはできるような気がします。
そりゃせっかく入った自分の会社があの体たらくじゃ、こうなるよね。

あと妻鹿さんは人に頓着しないんだけど、優しい人なんだな、と思いました。あとプロ根性が素晴らしい。私も技術屋の端くれなのでそこは素直に関心しました。妻鹿さん、かっこいい男だぜ!


サラリーマンほど読んでいて辛くなってきそうな中盤の展開ではありますが、山屋なら共感できる部分、そうそうこういうことあるよね!ってところがどんどん出てくる面白い小説でした。
なにより、六甲山登ってみたくなりました。今の仕事辞めて関西引っ越そうかなぁ。

一日で一気読みしちゃったくらい面白いです。ぜひ買って読んでみてください。


思ったことそのまま書き出してるだけなので、解釈違いあったら是非コメントいただきたいです。ディスカッションしましょー!
そんだけ。


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