【薬膳】春の巡り ふきのとうに和辛子ひとさじ
この日も、ふきのとうの味噌炒め。
ふきのとうを湯がき、水気をしっかり絞ります。
熱したフライパンに胡麻油を引き、ふきのとうを炒め、味噌・清酒・みりんをほぼ等量で合わせて味をなじませました。
先日は地味噌で作りましたが、今回は白味噌を使ってみました。
ほろ苦さをやわらかく包むような、優しい味に仕上がります。
けれど、その優しさの中に、和辛子をひとさじ。
そのときはただ「辛味が欲しい」と思っただけでしたが、あとから振り返ると、気と血の巡りをよくしたい気持ちが、知らず知らず手を動かしていたのだと思います。
五味は、口にしたときの味だけでなく、その働きも示します。
そして五臓と深く結びつき、どの臓腑に作用するかを「帰経」と呼びます。

ふきのとうの味噌炒めの食味・食性を記すと、ふきのとう:苦辛・温
味噌:甘鹹・平
清酒:甘辛苦・温
みりん:甘・温
胡麻油:甘・涼
となります。
複数の食味があるということは、複数の働きを持つということでもあります。

家人は、和辛子ではなく、練り梅をひとさじ。
梅と塩の食味は、渋酸・平、そして鹹・寒。
酸味が加わった瞬間、皿の雰囲気がふっと変わりました。
酸味には、散漫になりやすい気持ちを引き締める作用があります。
私が和辛子を選んだのは、単に辛味を加えたかったわけじゃなく、春の不安定な時期に、少しでも気や血の巡りを整えたかったから。
家人の酸味と、私の辛味。
同じ料理でも、ひとさじ加えるものが違うのは、そのとき心と身体が求めているものが違うからなのでしょう。
ふきのとうの苦味は、毎年のように、季節の変わり目を心と身体に知らせてくれます。
知らず知らず私が選んだ和辛子のひとさじも、きっとその声に応えたものだったのでしょう。
