【ヨーロッパ旅行記】⑥ベルギー・イーペル猫祭り1日目(前夜祭)
前回の記事は上記よりご覧ください。
ヨーロッパ滞在四日目は、ブルージュからイーペルへ移動しました。
イーペルは、ベルギーとフランスの国境近くに位置する小さな町。
そのような町へわざわざ訪れたのは、イーペルで三年に一度開催される「猫祭り」に参加するためでした。
2024年の猫祭りは5月11日(土)、12日(日)と二日間に渡って開催されており、イーペルに到着した日、11日は前夜祭を楽しむことができました。
本記事では、ベルギーの奇祭「猫祭り」前夜祭を楽しんだ日のことを記します。
メモ書き的にイーペルの歴史や、猫祭りの歴史についても簡単に紹介します。
ぜひご覧ください。
猫祭りについて

猫祭りについては過去にブログや記事の題材にしている方を沢山お見受けしましたが、私も儀礼に則って猫祭りが如何なるものかについて、旅行の記録を書く前に簡単に触れておこうと思います。
猫祭りの歴史はその起源も含めれば15世紀頃から続くものだそうで、ちょっと全部書くと長すぎるので、書籍の引用を使いながらざっくりと記述します。
現代でも行われている猫祭りというものは、主に
前夜祭……路上での吹奏楽の演奏や路上演劇、舞踊など
開会式……前夜祭の夜、鐘楼前の広場で行われるオープニングセレモニー
本祭……猫の山車が町中を練り歩くパレード
猫投げ……鐘楼からの猫のぬいぐるみ投げ、ぬいぐるみをキャッチすると願いが叶うと言われています
の4つのイベントで構成されており、猫のお祭り、且つ奇祭に発展した起源(原因と言ってもいいかもしれない)として知られているのは、「猫投げ」です。
イーペルの町ではかつて、鐘楼の上から生きた猫が人の手によって放り出され、殺されていた、という記録が残っています。
※なぜ猫が鐘楼から落とされていたのか? といういくつかの説は、後述します。
その記録にちなんで、猫のぬいぐるみを鐘楼から落とし、お祭りの参加者が落とされたぬいぐるみをキャッチする、というイベントが「猫投げ」です。
猫殺し。普通、思わず無かったものにしたくなるような、目を背けたくなるような、惨たらしい歴史です。
しかし、その歴史にがっつり視線が向けられ、お祭り全体を通しての一大イベントにまで発展しているという点に、戦地としての悲しい歴史を持つイーペル(こちらも後述します)の強かさを感じられるような気がします。
血なまぐさい歴史、パレード、混沌。
「奇祭」たらしめる要素が、ばっちり揃ったお祭り、それが「猫祭り」です。
猫祭りの起源はいろいろである。
ペストが流行ったときの犯人とされて濡れ衣を着せられた中世の猫たちの復権だという説。
魔女裁判のお相伴で、猫も魔性のケモノとされ、領主の命令で時計台の塔から道化師の手で生きたまま投げ殺された。その故事に因み、ビロードの黒猫を投げおろすのですという説。
向田邦子さんのおっしゃる通り、猫祭り(猫投げ)の起源は本当にいろいろです。
私もイーペルに行く前と、本記事を書くに当たって今も猫祭りについてざっと調べてみましたが、「これが正しい起源!」と謳った記事などは、あまり見かけません。
諸説あり、ということなのでしょう。
いずれにしても歴史と伝統と迷信と宗教が長い時間をかけてまじりにまじって、猫祭りになったということらしい。
というわけで、わたしは猫祭りに参加するにあたって、情報収集の程度はゆるめにしました。
わかりやすく記述されている記事はこちら↑(ベルギー旅行の専門サイト)
歴史や御託はほどほどにして、お祭りに参加しながらリアルタイムで空気感を掴んでいく、というくらいのテンションがちょうど良さそう、と思ったからです。実際、そんな感じで楽しんできて、問題ありませんでした。
今回は前夜祭、開会式、本祭、猫投げの中でも、前夜祭、開会式のことをメインに記述します。
ブルージュからイーペルへ
ブルージュからイーペルまでは一度の乗り換え、二時間弱で行くことができました。ブルージュからは15時頃出発。
「コルトレイク」という駅が西の方面へ向かうハブ駅になっているらしく、そこで乗り換えます。
「コルトレイク」は大きめのハブ駅ですが、特に見どころがない駅でした。飲食店や売店なんかもなし。
列車が若干遅延もしていたので、ホームで退屈に耐えながら、乗り換えの列車の到着を待ちました。
やってきた列車に乗り込み、天気も良かったので車窓から景色を眺めます。

投稿文は「長閑すぎ」でした
明らかに都会には向かわないな、という景色が続きます。
羊や牛が飼われている牧場なんかも目にしました。
移動時間も長いので、なかなか眠くなります。寝たり、本を読んだり、スマホをいじったりしながら、イーペルへの到着を待ちました。
イーペル到着、bnbチェックイン

イーペル駅には18時前に到着しました。
イーペル駅と猫祭りが開催される広場は、大きめの通りで繋がっています。
宿泊する予定のbnbは広場の近くなので、このまま直進。

通りに面した民家の窓辺に、猫の置物。こういう家が何軒かありました。
この通りではまだお祭りのムードははっきりと感じられませんが、こういう見逃しそうなところにちょこちょこと猫のモチーフが見受けられます。
「猫の町という正体が隠せていない」感じがして、コミカルです。

イーペルは繊維産業で栄えた町で、中心部の広場には「Cloth Hall(繊維会館)」と名付けられた建物があります。
イングランドから輸入されたウールを職人に販売する前に、一旦保管する場所として使われていたのだそうです。
繊維会館を横切って広場に通じている小路を行くと、予約したbnbがありました。
ホストの方と「どこから来たの?」「日本からです」「遠くからありがとう」といった会話を挟みつつ、諸々の説明を受けてチェックインをしました。

猫、います。普通のbnbなんですけど、なんかちょこちょこ猫がいます。

ねこいる!
前夜祭へ
宿に荷物を置いて一息つくと、時刻は19時を回ろうとしていました。
宿に来る途中、広場には既にお祭りの気配が漂っていたので、急いで向かうことにしました。

美しい景観が多い町です。

繊維会館の前で、バグパイプや太鼓を持った演奏者さんたちが円陣を組んで演奏をしていました。
座席などはないので、立ち聞きします。


演奏の隊列は何組かおり、定点で演奏している方たちもいれば、歩きながら演奏している方たちもいます。
町中をうろうろしていれば、自然と音楽を楽しむことができます。
もうこの時点で既に自由度の高い(ゆるい)お祭りの気配を感じます。

「猫祭りについて」の章で少し触れましたが、イーペルは悲しい歴史を持つ町です。
写真の花輪に使われている赤いポピー(ひなげし)は、イーペルではよく見かけるモチーフ。この赤いポピーは、戦没者の象徴だそうです。
イーペルという町は第1次世界大戦で戦火に巻き込まれ、一度焦土同然と化した歴史を持っています。
町が大破した後、イーペルに住んでいた市民は郊外で避難生活を強いられながら、復興が叶う日を待ちわびていたようです。
失意の中、廃墟のイーペルの町に赤いポピーが一面に咲いたといいます。
その美しい景色に奮い立った市民が力を合わせ、イーペルの町は次第に元の姿を取り戻していきました。
という逸話が、イーペルにはあります。
イーペルは再建後「平和都市」と呼ばれるようになり、日本の広島市とも友好関係を結んでいるそうです。史実を知れば納得ですね。

これは、繊維会館の門の裏側かな。

路上で演劇も行われています。

劇中で使用されている言語はすべてオランダ語なので、私はまったく理解できません。ですが、音楽や演者さん、子役の子が素敵なので、ぼんやりと眺めました。
おそらく、猫祭りの起源などを元に作られた脚本なのでしょう。

路上での演劇を見た後周辺をうろついていると、近くのエリアに人垣ができていました。

お姉さんが小さなプラカップにジュースを注いで、お祭りの参加者の人々に配っていました。

後ろ姿ですが、魔女の仮装をしている方たちです。
猫祭りは魔女狩りに由来する、という説もあるので、魔女の格好をした方たちはよく見かけました。

町をのんびり歩いていると、音楽の方からこちらに近づいてきてくれます。

乗馬の仮装?をしている方たちの後ろに、アコーディオンや弦楽器を持った演奏のグループの方々が着いてきていました。
夕飯
町中を一通り巡回してお腹も空き、20時過ぎに繊維会館近くのレストランに行きました。
テラス席に案内されたので、ビールを飲みながら夜の景色に変化していく町並みを眺めます。

夕飯はタルタルドブッフ(牛のタルタル)。
ケッパーがたくさん入っていて嬉しい。ケッパー大好き。
脂がそこそこ入っていてこってりした口当たりですが、添えてある極小の玉ねぎ(らっきょう?)のようなピクルスと、コルニッションと一緒に食べるとさっぱりといただけて美味しかったです。
量も多かったのでビールを飲み干して、これをつまみにしながら白ワインも一杯注文しました。

テラスの脇を、仮装をした鼓笛隊の方々が通り過ぎていきました。
テラスの異国然とした雰囲気と酔いも相まって、幻を見ているような感覚に陥ります。
開会式
お酒も飲み終わる頃。
21時過ぎ頃から、繊維会館(鐘楼)前の広場が開会式の支度で活気づいてきました。

広場には何十人(何百人単位かも)か座れる座席が用意されているので、空いている席に腰を落ち着けます。
22時、開会式が始まりました。

広場にはゴシック様式の街並みに不釣り合いな、建物よりも巨大なクレーンが設置されており、とても大がかりです。
この年(2024年)の猫祭りはコロナの影響もあり、およそ六年ぶりの開催。
前回の猫祭りの様子はYouTubeやブログ記事などで事前に見ていましたが、開会式の様子は例年と何やらひと味違うようでした。
用意された円形状のスクリーンが天空に吊るされ、過去の猫祭りの様子が映し出されます。
久しぶりのお祭りを大いに盛り上げよう、という気概がひしひしと感じられました。

自転車に乗った男性が、自転車ごとクレーンで吊るされました。

天使の仮装をした男性と女性、道化師の恰好をした方が現れ、あり得ない美声(大音量)でオペラを披露して下さいました。
自転車ごと吊るされた男性は、上下左右にぶんぶんと振り子のようにクレーンで振り回されています。
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目の前の光景が受け入れられずにいると、女性の天使は四人に増えました。


羽を振り撒きながら、四人の天使が美声を披露します。

歌の盛り上がりが最高潮に達した頃、

天使はロープで繋がれていたことが判明し、

四人の天使が宙に浮き、

天使たちは天空へと旅立ち、大量の羽と原色の紙吹雪がイーペルの町一面に散りばめられ、拍手喝さいで開会式は幕を閉じました。
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呆気に取られているうちに終わりましたが、とにかく衣装も歌も演出も何もかもが大がかり。開会式はたった1時間でしたが、3時間くらいの尺の芝居を見たときのような情報量です。
ちょっとした極楽浄土でした。
そういえば、猫は……? 開会式にはいなかったけど……
まあ、いいか、極楽浄土だし。
私も爆竹拍手をして大満足し、宿へと戻りました。
次回
猫祭り前夜祭と開会式についての記録でした。
次回の開催はおそらく2027年。次の開会式はどんな極楽浄土に仕立て上げられていることでしょう。
次は行けるかな。また行きたいな。
混沌渦巻く猫祭り、次回は本祭(パレード)と猫投げについて記述します。
ベルギー編は次回で最後で、その次からはパリ編に移ります。
引き続きよろしくお願いします。
