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情報系専門学校生の妹と、SE3年目の友人に聞いた「理系の多様なIT進路」─院進も大学も通らない道があっていい─

「理系ならとりあえず院まで行っといたほうがいい」

私も昔はそう思っていた一人でした。正直に言うと、妹が情報系の専門学校に行くと言い出したとき、最初に頭をよぎったのは「大学に行かないの?」という言葉でした。(自分でもびっくりするくらい、ステレオタイプな反応だったと思います……)

でも、この数年で考えが変わりました。夢を叶えるために努力する妹の話を聞き、SE3年目の友人のリアルを聞き、そして展示会や交流会で様々なルートを歩んだIT職の方と話すうちに。

大学も、院進も、博士も、確かに理系キャリアの王道のルートです。でも、それが唯一の正解ではない。

今日は私が直接聞いた3つの「理系×IT進路のリアル」をまとめました。高校生のあなたにも、大学1・2年生のあなたにも、そして「転職してIT職も視野に入れてみようかな」と思っている院卒・大卒のあなたにも、何かヒントになれば嬉しいです。




うちの妹、大学に行かなかった。

妹は数学が好きで、父がエンジニアを勧めたこともあってIT系の仕事にはやく興味を持っていました。高校時代から自分で調べ始め、オープンキャンパスに何度も足を運んで、情報系の専門学校に進むことを決めた。

私は最初、大学の方が良い就職先に巡り合えるんじゃないかと思っていました。でも妹の話を聞くうちに、その考えが崩れていった。

「なりたい仕事が決まっているなら、大学で幅広く勉強するより、専門学校でITエンジニアに特化した勉強をして即戦力として働いた方がいい。」

そう説明されたとき、私は反論できなかったんです。気づいたら両手を挙げて応援していました。(いつの間にこんなに成長していたんだろうと、姉として素直に反省しました。)

専門学校のリアルが、思ってたより全然ちがった

妹の話を聞いて一番驚いたのは、サポートの手厚さでした。

大学のマンモス校では受けられないような個別フォローがある。クラスの人数が少ないぶん、先生と学生の距離が近い。ITの勉強に必要なツールや設備が出し惜しみなく提供される。2年目には社会人の教養まで学べる。

大都市の駅前にキャンパスがあるというのも、地方出身の私には「そんな立地に学校があるの!?」と正直羨ましかった。

妹が通う学科はサイバーセキュリティを専攻で選択でき、しかも大学の単位も取れるという4年制のコース。専門学校の実践力と大卒資格を両方取れる道があることを、私はそれまで知らなかった。

アプリ開発もプログラミングも、実践を交えた授業形式だから楽しいらしい。高校のときとは比べ物にならないくらい生き生きと通っているのを見て、「勉強って、こんな顔でするものだったっけ」とちょっと感動しました。


SE3年目の友人は、化学専攻の院卒でした。

「やりたいことと、働き方。その両方で選んだ。」

SE3年目の友人は、大学院まで化学を専攻していました。それでもITの職を選んだ理由はシンプルで、「リモートワークが柔軟に使えて、勤務地も東京の一等地にある会社で働けること」。元の専攻と離れるので、プログラミングは1から学ぶことになったそうです。入社後の研修はやはり大変だったと聞きました。

SE3年目になって、良かったこと・こんなはずじゃなかったこと

良かったのは「働き方の自由度」だと友人は言います。比較的新しいIT企業は、大手の老舗メーカーよりもDX化が柔軟に進んでいる。実感として、そのスピードは製造業とは一線を画している、とのことでした。

逆に「こんなはずじゃなかった」と感じるのは、トラブル発生時の対応です。客先都合で急に忙しくなることがある。時間外労働も少なくはない。「客商売である以上、完全にホワイトな環境は難しいのかもしれない」と、友人は現実的に話してくれました。

これは正直、どんな企業形態であれ正社員で働く以上、どこかで折り合いをつけなければいけない話ではあります。でもそれを差し引いても、「選んで良かった」と言っていたことは覚えています。


製造業研究職の私が、IT職の人たちと話して気づいたこと。

研究開発職5年目の私は、DXやAIツール導入の調査でPoC(概念実証)メンバーになったことがきっかけで、社内の情報システム部門や取引先のIT企業の方たちと話す機会が増えました。

そこで気づいたことがあります。

「ITエンジニアだからといって、新しい技術に全員が精通しているわけではない。」

AIツールを調査する中で、特定の分野については自分の方が詳しいのでは?と感じる場面が、時たまありました。変化の速い時代では、IT職の人たちも自分からアンテナを張って情報を取りに行き、それをスキルとして積み上げなければ生き残れない。そのことを、彼らと話して強烈に実感しました。


「研究を知っているIT人材」の価値が、この数年で急上昇している

私が製造業関係の展示会に足を運び始めたのは4年前のことです。当時、製造業向けにAIやマテリアルズ・インフォマティクス(MI)ツールを提供する企業は、ざっと見渡して1社しかいなかった。

それが直近1年では、同じ展示会を回るだけで20社以上に増えていました。

DX・AI・MI・量子計算まで、製造業の研究開発分野に向けたツールが続々と製品化されています。このトレンドの中で、「研究者目線でツールを作れる人材」の価値は、加速度的に上がっていると私は実感しています。

バイオインフォマティクスやAI活用により研究のスピードアップとコスト削減が期待されており、バイオの分かるIT技術者は今後花形の職種となる可能性があると言われています。これは化学・材料系の研究者にとっても同じことが言える。

実験してきた人間が、ラボ向けのソフトウェアを作る。研究プロセスの「ここが不便だった」を知っている人間が、研究者向けのAIツールを開発する。それは、純粋なIT出身者にはなかなか持ちにくいアドバンテージです。

大学院まで進んだからこそ積み上げてきたその「研究バックグラウンド」が、IT職に転じたとき大きな武器になる可能性がある——友人の話を聞きながら、そう確信するようになりました。


AI時代に「IT職種」を目指すこと。メリットとデメリット、正直に言います。

よく「AIが仕事を奪う時代だからITは怖い」という話を聞きます。でも私は逆に思っています。AIが進化するほど、「顧客の求めるシステムを理解・構築でき、さらにAIを使いこなせるIT人材の需要は増える」と。

ただし、条件があります。学び続けられること。

周囲のITエンジニア達が、口をそろえて言うのはここです。「ITの仕事は、勉強し続けなければ稼げなくなっていく。」一昔前よりも、その傾向はいっそう強くなっています。

メリット: 自由度が高い。新しい技術に直接触れられる。研究バックグラウンドがあれば活きる場面が増えている。

デメリット: 継続的な自己学習が必須。「学ぶのがつらい」と感じる人には向かない。特定の分野は技術の陳腐化が早い。

この変化が急速に進む時代では、新しい情報にアンテナを張り、顧客の声を聞き続け、自分の開発するものをアップデートし続けられる人間こそが、市場から求められるIT人材になれると思っています。


AI時代に需要が伸びるIT職種とは?

AIエンジニアの平均年収は570〜630万円と高水準で、シニア・特化スキル保有者では1,000万円超も現実的とも言われています。研究バックグラウンドを持つ理系出身者が特に強みを発揮できるのは、以下のような分野です。

研究者向けツール開発(ラボオートメーション) 実験自動化システムや、研究データ管理システムの開発。研究の経験者が求められる求人が急増中。製薬・化学・食品メーカーを中心に、研究現場を知っているエンジニアの需要は今後さらに伸びる分野です。

バイオインフォマティクス・データサイエンティスト ゲノムデータや実験データの解析。PythonやRを使ったデータ解析スキルと、生命科学・化学のバックグラウンドを掛け合わせた人材は、製薬業界を中心に引く手あまたの状態が続いています。

製造業向けDX・AIコンサルタント 製造現場のプロセスを理解した上でDX戦略を提案できる人材。純粋なコンサル出身者よりも、製造業の研究開発経験を持つ人材の方が現場で信頼される場面が多い職種です。


結局、どの道を選べばいい?

正直に言います。「これが唯一の正解」という答えは、ありません。

でも、判断の軸は持てます。

情報系の専門学校が向いている人: なりたい仕事がある程度決まっている。手を動かすことが好き。少しでも早く現場に出たい。学費を抑えながらIT職を目指したい。

大学院を経てIT職に転じることが向いている人: 研究開発の経験を活かしたい。研究者向けツール開発や製造業DXに興味がある。理論的な基礎と実践スキルを両方持ちたい。転職のタイミングで強みを持ちたい。

学部卒で製造業エンジニアを目指す人: ものづくりの現場に直接関わりたい。研究の中で「お客さんに使ってもらえるか」が原動力になる。特定の勤務地・職種を確実に手に入れたい(詳しくは、過去記事の学部就活の話をご覧ください👇)。

「偏差値で選ばなかった道が、後になって一番自分に合っていた」——そう言える人たちを、私はこれまでの社会人人生でたくさん見てきました。

「大学に行くのが普通」とか「院まで行かないと研究職になれない」とか、そういう思い込みを少しだけ脇に置いて考えてみてほしい。今の自分に必要なのは、「どの道が世間的に正解か」じゃなくて、「自分は何をしたくて、どんな働き方が合っているか」を先に決めることだと思っています。

院進率9割の学科でひとり孤独に就活していた私は、ずっとそれを誰かに言ってほしかった。だから今日は、妹と友人に代わって言わせてください。

大学も、院進も、博士も、道はひとつじゃない。
あなたに合う道で、進んでいい。


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📣 次回予告
次回は「AIに研究職の仕事が奪われる」は本当か? ─メーカー女性研究職が、AI推進PoCメンバーとして見た現場の答え─」をお届けします。

今回は妹や友人を通じてIT進路のリアルをお届けしましたが、次回は「自分自身の話」です。

AIが進化し続ける時代に、製造業の研究開発職として働き続けることへの、正直な不安と向き合い方。社長へのプレゼン資料に生成AIを使って業務時間を2時間→30分に短縮した体験、AI推進のPoCメンバーとして実際に感じた現場のリアルを全部話します。

「AIが来たら自分の仕事はどうなるんだろう」と感じている研究職・技術職の方に、ぜひ読んでほしい一本です。

▶ 5月19日(火)12:00 公開予定

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