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自費診療300万円の心理学〜なぜ患者は効いたと信じるのか〜

前編「自費診療はなぜ止められないのか」では、規制が機能しない構造を書いた。今回は外来の話だ。

共同通信が報じた国立がん研究センターの調査で、自由診療に否定的な医師は76%。それでも患者から相談を受けた医師の31〜64%は中立的な対応を取ったという。「自分なら受けない」と思いながら、患者の前ではそう言わない。なぜか。


否定しづらさの三層

感情の層。標準治療で手詰まりになった患者、進行がんの家族を抱えた人、不妊で消耗している夫婦。「効きません」の一言で切り捨てる残酷さに、現場はためらう。一家氏が「患者の自己決定を尊重したいから」と推測した部分は、半分は本当だろう。残り半分は、こちらが消耗するのを避けている自衛だ。否定すれば説得の時間が要る。納得しなければ恨まれる。日本の外来は患者一人あたりの診察時間が平均5分前後という調査結果がある。自費診療の信念を一人で覆そうとすれば、その日の外来は崩壊する。

認識論の層。「効果がない」と言い切るには、ないことの証明が要る。エビデンスのない治療は、エビデンスがないだけで「効かないと証明された」わけではない。「100%効かないんですか」と問われて、誠実な医師ほど詰まる。鰯の頭も信心という言葉はここに刺さる。信じている人にとって、効果は実在する。

関係性の層。否定したら患者が離れて、もっと怪しいところに流れるかもしれない。「先生は冷たい」と思われるくらいなら、曖昧に頷いたほうが患者は手元に残る。中立対応の31〜64%という数字には、この計算も入っているはずだ。

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