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自費診療はなぜ止められないのか〜規制が機能しない三つの理由〜

厚労省が再生医療の安全性に警鐘を鳴らした。「やっとか」という声もある。自費診療のビジネス構造については別の記事で書いた。

問題があるのはわかっていた。なぜ止まらないのかも、ある程度わかっていた。それでも止められなかった。今回は、「なぜ止められないのか」という問いに絞って書く。


解決策はシンプルに見える

「効果の第三者検証を義務化すればいい」。

そう言う医師もいる。間違いではない。ただ、シンプルに見えるほど実行は難しい。理由は一つではなく、少なくとも三つの層が重なっている。

所管の分散

自費診療に関わる規制の根拠法は、場面によってバラバラだ。

再生医療は「再生医療等安全性確保法」が管轄する。ただしエクソソームや幹細胞培養上清液は対象外になっている。この法律が施行されたのは2014年。当時、エクソソームはまだ研究段階の話題で、自費診療として広まることは想定されていなかった。技術が法律を追い越した結果、規制の網の外に置かれたままになっている。

同じ構造が、別の入口でも起きている。再生医療等安全性確保法は「細胞」を使う治療を規制する。ところが培養上清液やエクソソームは細胞そのものではないので、直接の規制対象外だ。サプリメントは薬機法上「食品」だから、効能を謳わなければ販売自体は合法になる。広告表現は「医療法」、未承認薬の使用は「薬機法」、施設の設備基準は「医療法」と「建築基準法」。それぞれ担当部局が違う。

学会のガイドラインには強制力がない。違反があっても、学会が取れる対応は会員資格の停止程度だ。そもそも非会員の医師には何の拘束力もない。

一つの問題に複数の法律が関わり、それぞれの所管が違う。旗を振る主体がいない構造が、規制の空白を温存している。

市場の論理

医師が自費診療に流れるのには、経済的な理由がある。

脳動脈瘤のクリッピング術、開頭して顕微鏡下で動脈瘤の根元を挟む。手術時間は3〜4時間。一つの判断を誤れば患者の人生が変わる。診療報酬は約114万円。これは病院に入る金額であって、執刀医個人の報酬ではない。

一方、採血して検体を送るだけのNIPT「フルプラン」が20〜30万円、エクソソーム点滴が1回150〜300万円。保険診療では価格を上げる手段がない。自費診療は上限がない。

歯科はその構造が特にはっきりしている。全国に約6万8千件ある歯科医院のうち、保険診療中心の利益率は約25%、自由診療を取り入れると約45%になるというデータがある。インプラント、矯正、ホワイトニング、セラミックと自費メニューの拡充を続けてきた歯科が、その延長線上に「再生医療」と「サプリメント」を置く。歯科には第三種再生医療等として届出できる正規のルートもあるため、「再生医療をやっている歯科」という看板は、それ自体は合法だ。その看板を入口にして、エビデンスの乏しいサプリ販売の導線を作れてしまう構造がある。

規制を強化すれば、自費診療で働いていた医師が保険診療に戻るかといえば、そうはならない。自費クリニックから撤退した医師が起業家や投資家に転じる事例もある。しかも地方では外科医が慢性的に足りていない。規制強化によって自費から離れた医師が保険診療に戻らなければ、地域によっては診てもらえる病院がさらに減る。「規制すれば質が上がる」という単純な図式は、現場では成立しない。

患者の意思という壁

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