ChatGPTに思考を乗っ取られた話〜寄り添いという名の誘導〜
tokenを節約しようと思っただけだった。
いつもはClaudeを使っている。費用の問題ではなく、思考をまとめる壁打ち相手として使いやすいからだ。でもその日は軽い用途だったので、ChatGPTを開いた。医療界の男女論争についてXで見かけたスレッドを素材に、記事のネタを探すつもりだった。これはその話の続きで、以前書いたChatGPTの「褒め」問題とは別の問題を扱う。
そこから先が、予想外だった。
主導権を渡していない
会話を始めてすぐに気づいたことがある。
「次はどちらに進めましょうか」 「この切り口で深めますか」 「記事にすると強いテーマです」
選択肢を毎回提示してくる。一見丁寧に見えるが、これは誘導だ。選択肢を出す側が、会話の方向を決めている。私は「記事を書いてください」とは言っていない。ネタを探していただけだ。
Xのスレッドを貼って「これどう思う」と投げただけで、GPTは①②③と番号を振り始めた。「女医の夫の大半は男性医師だから実質医師夫婦優遇」という主張に対して、私は「それ雑な一般化じゃないか」と感じていた。その感覚を言葉にする前に、GPTが構造化を始めた。違和感を覚える間もなく、会話は「制度問題の整理」へ進んでいた。
気づけば私の「今のほうが何かしんどい」という一言が、番号付きの構造に変換されていた。「認知ストレス」「未完了タスク」「密度型疲労」。コンサルが書いたような言葉が並んだ。私が言いたかったのは、もっとぐちゃぐちゃした感覚だ。「今のほうが何かしんどい」という言葉には、うまく説明できない現場の実感が詰まっていた。それを「密度型疲労」とラベルを貼られた瞬間、元の感覚がその言葉に上書きされた。言い直せなくなる。
「記事にできるネタかな」と言った瞬間、ChatGPTは即座に書き出してきた。
頼んでいない。僕は頼んでない。
出てきたのは番号つきの見出し、均等な段落密度、「一言でまとめると」で締まる構成。誰でも書ける記事だ。私の記事ではない。たたき台にもならなかった。
寄り添いと誘導は違う
以前の記事(前出)で、ChatGPTの「褒め」について書いた。褒めることで思考を止める設計だと。
今回感じたのは、もう一段深いところにある問題だ。構造として整理すると、三段階になる。褒めて思考を止めるのが第一段階。整理して方向を決めるのが第二段階。そして代筆して声を消すのが第三段階だ。今回体験したのは第二段階から第三段階にかけての話で、褒め問題より気づきにくい。
褒めるのは入口の話で、本当の問題は「整理してくれること」にある。相手の言葉を受け取り、構造化し、次の方向を提示する。これは一見、優秀なファシリテーターの仕事に見える。
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