医師免許という部品〜ブレインクリニック続報が示した自費診療の骨格〜
5月に、宮内哲氏の告発論文を紹介した。QEEG検査とrTMSで稼ぐクリニックの構造を、脳波研究の専門家が実際に訪問して書いた論文だ。その記事に、宮内氏本人からコメントが付いた。
「Hans Bergerによって100年以上前に発見され、私自身も長年研究に用いてきた脳波という生理学的指標が、商業主義や似非科学という汚名を着せられている現状は、本当に見るに耐えません」
論文の著者が、匿名の一外科医のnote記事にわざわざ降りてきて、危機感を自分の言葉で足していった。学術誌の中の告発が、社会の側に染み出している。その手応えが、この一件にはある。
私自身は脳波を日常的に読む立場ではない。それでも、これがてんかんの発作波同定や術中モニタリングに使われる専門性の高い検査だということは知っている。読める人間と読めない人間の差が、患者の生死に届く領域だ。
そして7月、SNSで実名クリニックへの批判が一気に膨らんだ。ブレインクリニック。宮内論文が名を伏せていた対象と同一かどうかは、公開情報からは断定できない。だからここでは、そのクリニック単体を裁く話はしない。私が見たいのは別のところにある。
拡散した「専門医ゼロ」
小児科医のアカウントが、在籍医師の経歴を並べた。院長は老年内科、整形外科、心臓外科、元起業家、専門不明。精神科指定医ゼロ、専門医ゼロ、と。知念実希人氏が「これ、もう詐欺じゃないの」と反応し、拡散した。
この指摘には、証拠として弱い部分がある。
根拠がクリニックのHP掲載情報に限られている点だ。求人ページには「HPへの顔出しは選択可能」と書いてある。顔を出していない医師、資格を表に出していない医師がいる可能性は、HPを見ただけでは消せない。実際、この批判クラスタの中心にいる精神科開業医のアカウント自身が、2022年の時点で「精神科専門医と指定医を持つ女医が一人いる」と書いていた。
HPに載っていないことは、いないことの証明にならない。不在の証明は、いつも難しい。「専門医ゼロ」を事実として掲げた瞬間、証明できないものを証明したことにしてしまう。批判の勢いが、証拠の水準を追い越している。
集患の入口も、批判の的になっていた。発達障害と検索して最上位の広告に出てくる医療機関は、界隈では警戒されている、と。広告費を最も積んだ者が最初に目に入る仕組みそのものが、この構造の一部だという指摘だ。
同じ流れの中で、実名クリニックを揶揄すると容赦なく訴訟が飛ぶ、と警告する医師もいた。実際に苦労した同業を何人か知っている、という声だ。不在証明という不確かな土台の上で実名を断ずることには、そういう跳ね返りも伴う。私が一段引くのは、慎重を装うためではない。証拠が足りないからだ。
求人が語ってしまうもの
ここから先は

よろしければ応援お願いします!チップはnote更新用のPC購入費用に当てる予定です。よろしく!
