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NYマムダニ市長「保育無償化」の理想と現実〜財源問題を考える

2026年1月、ニューヨーク市に34歳の市長が誕生した。ゾーラン・マムダニ氏。民主社会主義者を名乗り、移民ステータスを問わない保育無償化を掲げている。

「すべての子供がニューヨーカー」。理念としては美しい。

NYの保育費は子供一人あたり年間300〜600万円ともいわれる。これが無償になれば助かる家庭は多い。3歳・4歳児向けのPre-Kと3-Kに加え、2歳児まで対象を広げるという。不法滞在者も含めて、すべての家庭が対象だ。

でも、結局は財源の話になる。

引き継いだのは2兆円の赤字

マムダニ市長が引き継いだ財政状況は、想定以上に悪かった。

就任直後の1月16日、NY市会計検査官マーク・レヴィン氏が発表した数字は衝撃的だった。今年度で22億ドル、来年度で104億ドルの赤字。累計で約126億ドル、日本円にして約2兆円の穴が空いている。

前市長アダムス時代から、歳出が歳入を上回る状態が続いていた。2023年度は6.36億ドル、2024年度は11億ドルの赤字。移民危機への対応だけで2年間に約110億ドルを使い、2022年度に61億ドルあった余剰金は半分以下に減った。

市の財政監視機関CBCは「市の財政はすでに脆弱で、連邦資金カットや景気後退に対応できる状態にない」と警告している。年間40億ドル規模の「過少計上」が常態化し、予算の数字自体が信用できないという指摘もある。

この状態で、さらに保育無償化を拡大しようとしている。

州知事がついている

今回、NY州のホークル知事がマムダニ市長と共同記者会見を開いた。「ニューヨークの全ての家庭が同意できることがある。保育料が高すぎる」。州として財源面で協力する姿勢を見せている。

市単独より財源の幅は広がる。連邦資金をカットされても、州税からの拠出があれば持ちこたえられるかもしれない。金融関係者の中には「都市の不平等を放置すれば社会不安が市場リスクになる」と、中長期の安定を評価する声もある。

マムダニ市長は「公約実現を疑問視していた人たちへの答えだ」と胸を張った。州との連携を取り付けた自信だろう。

連邦資金カットの現実

とはいえ楽観できない。連邦政府との関係がいきなり敵対的だ。

NY市の予算約1,160億ドルのうち、連邦資金は75億ドル。割合でいえば6.4%。ただし市の直接予算だけの話で、公営住宅(NYCHA)、交通局(MTA)、市立病院(NYC Health + Hospitals)を含めると約130億ドル規模になる。連邦資金の80%は教育、社会サービス、医療など5つの主要機関に集中している。

トランプ大統領は2026年2月1日からサンクチュアリ・シティへの連邦資金停止を宣言した。ただし1期目に同様の試みをした際、連邦裁判所で違憲判決を受けて阻止された前例がある。今回も法廷闘争になる可能性は高い。

とはいえ、裁判で勝つまでの間、資金が止まれば現場は混乱する。保育を守るために他のサービスが削られれば、市民生活は結局悪化する。そのリスクを抱えながら、サンクチュアリ・シティの旗を掲げ続けるのか。

市民は支持しているのか

2025年1月、マンハッタン研究所がNY市の登録有権者618人を対象に世論調査を行った。興味深い結果が出ている。

54%が「市の移民政策は甘すぎる」と回答した。 アジア系では70%、黒人でも50%がそう答えている。「適切」は29%、「厳しすぎる」はわずか8%だった。

サンクチュアリ・シティ政策への支持は24%にとどまった。69%が「犯罪を犯した不法移民や虚偽の亡命申請者の強制送還に連邦政府と協力すべき」と答えている。

強制送還についてはどうか。44%が「不法移民の全員または大半を強制送還すべき」と回答。市民権への道を支持したのは22%。民主党支持者でさえ、強制送還支持(39%)が市民権付与支持(23%)を上回った。

マムダニ市長は「移民ステータスを問わない」と明言した。しかし市民の多数派は、より厳しい対応を望んでいる。この乖離がどう出るか。

人を呼び寄せてしまう

もっと根本的な問題がある。人を呼び寄せてしまうことだ。

NY州は広い。日本の約3分の1の面積がある。州全体で保育無償化、しかも移民ステータス不問となれば、巨大なマグネットになる。州境を越えて引っ越してくる人、国外から流入する人。増える可能性は十分にある。

「移民ステータスは問わない」という発言は、事実上のメッセージだ。来れば保育は受けられますよ、と。テキサスやフロリダから移民をバスでNYに送り込む動きはすでにあった。財政負担が雪だるま式に膨らむリスクは無視できない。

無償化で浮いたお金が消費に回る。そういう経済効果を期待する声もある。でも流入人口が増えれば相殺される。住宅価格は上がり、公共サービスは逼迫する。もともと住んでいた中間層が割を食う。そういう構図になりかねない。

妥協しないことのリスク

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