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強制と任意のあいだ〜辺野古事故・百日と刑事責任の地図〜 辺野古転覆事故・第37稿

事故から百日。遺族はnoteに「刑事責任」と題した一文を載せた。問いは一つに絞られている。船を運航した側には家宅捜索が入った。だが、学校側への家宅捜索は、百日が過ぎても報じられていない。それは、社会的に正しいのか、と。

第33稿で、僕は責任の宛先をめぐる二つの声を書いた。誰が、と問う遺族の声と、死んだ一人だ、と返す団体の声。あのとき問われていたのは、団体の中の責任だった。今回、遺族の問いは、団体の外へ——学校へと向いている。


捜査の地図

これまで報じられてきた捜査の動きを、強制と任意で分けてみる。

強制捜査、つまり家宅捜索が入ったのは、運航した側だ。三月二十日、運航団体の事務所とテント村。三月二十五日、亡くなった船長が牧師を務めていた教会。船体二隻は押収された。容疑は業務上過失致死傷と業務上過失往来危険、それに海上運送法違反。海上保安本部は、強制捜査でなければ安全管理の実態解明はできないと判断した、と報じられている。

死亡した船長は、被疑者死亡という扱いになり、それ自体では立件できない。だから捜査の矢印は、生きている側へ移る。六月十五日には、運航団体の共同代表二名と、もう一隻の船長、その船員の計四名が、業務上過失致死傷の疑いで任意の事情聴取を受けていると報じられた。死んだ一人に絞れない以上、責任を問う先は、運航に関わった生者たちへ広がっていく。

一方、学校はどうか。学校に対しては、事情聴取が行われた、と報じられている。だが、これは任意の聴取だ。家宅捜索のような強制ではない。船を出した側には捜査員が踏み込み、資料を段ボールで運び出した。生徒を送り出した側には、話を聞きに行く、という形にとどまっている。

遺族が見ているのは、この地図だ。強制は運航側に集中し、学校側は任意の枠の中にいる。百日のあいだ、その配置は変わっていない。

業務上過失致死傷という枠

ここで、容疑の名前そのものを見ておきたい。業務上過失致死傷。この罪が成立するには、業務として人の生命に関わる立場にあった者が、必要な注意を怠り、その結果人を死傷させた、という筋道が要る。

注意を怠った、と言うためには、まず注意する義務が、その人にあったことになる。運航した船長には、海の上で乗客の安全を守る義務があった。出航の可否を判断し、危険なら見送る。その義務を果たさなかったのではないか、と問われている。だから捜査の矢印は、まず船長に向かう。

運航した側の注意義務には、報じられた空白がある。家宅捜索で「船長心得」と題された文書が押収されたが、団体に所属する者は誰一人その存在に気づかず、放置されていたという。安全の手引きがありながら、組織の誰も読んでいなかった。運航側の注意義務が、組織として空いていた、という具体だ。

では、学校に注意義務はなかったのか。遺族のメモは、そこを突いている。乗船プログラムが続いてきたあいだ、教員は下見で一度も船に乗って安全を確かめていない。引率教員は当日、自分の判断で岸へ行かず、他の教員にも生徒にも伝えないまま、船長に任せて出発させた。どんな海なのか、どのルートを通るのか、予定時刻も把握していなかった。遺族はそう書いている。運航側の空白と同じ種類の空白を、遺族は学校の側にも見ている。

もしこれらが事実なら、と遺族は問う。注意する機会は何度もあった。それでも注意は払われなかった。なのに、注意義務を問う捜査の矢印は、なぜ学校には向かないのか、と。

業務上過失致死傷という枠は、注意義務を負う者を捜す枠だ。その枠を、運航した船長にだけ当て、生徒を送り出した学校には当てない。その線引きが、遺族には腑に落ちない。

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