元キャバ嬢・元ホストのキャリアパスは3つしかない
Xで起業家たちが揉めている。キャバクラを巡る論争だ。
坂井秀人氏が「キャバクラは客を騙して稼ぐビジネスだ」「若い女性がキャバ嬢に憧れるべきではない」と投稿した。連続起業家の溝口勇児氏が噛みつく。「お前自身が月1000〜2000万キャバに使ってるだろう」。そこから元パートナーの横領疑惑まで飛び出して、泥仕合になっている。
月に1000万も2000万もキャバに注ぎ込む人間同士の口喧嘩だ。大半の人には関係がない。
ただ、「若い女性がキャバ嬢に憧れるのは問題だ」という主張そのものには一理ある。本人が言うなという話を差し引いても。
気になったのは別のところだ。「使う側」の論争ばかりで、「使われる側」のその後を誰も語っていない。
成功者しか見えない
エンリケ。ローランド。数億を売り上げるトップたち。SNSやメディアで見えるのは、いつもこの層だ。ラストコールや関コレのようなイベントが取り上げられるたび、若い女性は「自分もああなれるかもしれない」と思う。
生存者バイアスだ。成功した人だけが可視化され、上がれなかった大多数は誰の目にも映らない。
宝くじと似ている。当選者だけがテレビに映り、外れた何百万人は映らない。ただ宝くじは、買った金額を失うだけで済む。キャバやホストの世界で失うのは、若さと時間と、普通の社会へ戻る力だ。
出口は三つ
キャバ嬢やホストの「上がり」を整理すると、出口は三つしかない。
一つ目。結婚か開業。客との結婚でこの世界を抜けるか、貯めた金で自分の店を持つ。もっとも幸福な着地とされている。ただ結婚は相手次第だし、開業には経営の才覚がいる。キャバで売れることと店を回すことはまったく別の能力だ。このルートに乗れる人は少ない。
二つ目。裏に回る。スカウト業、店舗マネジメント、もっとダークな方向。斡旋や管理の側に立つことで収入を維持するルート。稼げている間はいい。でもこの道の先は反社との繋がりであり、行き着くところは逮捕だ。長くは続かない。
三つ目。一つ目にも二つ目にも乗れなかった人たちが辿る道。これが大多数にあたる。
賞味期限
キャバ嬢の平均年齢は20〜28歳。30歳前後が引退の節目とされている。ホストの平均年齢は24歳前後で、約8割が18歳〜20代前半に集中する。30代以上は2割。50代を超えるホストはほぼいない。
つまり、キャバもホストも賞味期限はおよそ10年だ。
その10年で得られるもの。接客の勘。夜型の生活リズム。一般の仕事とはかけ離れた金銭感覚。履歴書に書ける職歴は残らない。資格もない。
昼に戻れない
ピークを過ぎると、同じ業界の中でランクが落ちていく。高級店から中級店へ。中級店からその下へ。やがてキャバやホストですら席がなくなる。
ここで普通なら「昼職に転職すればいい」という話になる。だが、そう簡単にはいかない。
職歴の空白。面接で何をしていたのか聞かれたとき、答えに詰まる。生活リズムの昼夜逆転を戻すだけでも相当な時間がかかる。そして最大の壁は、収入の落差だ。キャバで月に数十万稼いでいた感覚が抜けない。昼職の初任給では暮らしを維持できない。
「昼職コレクション」や「昼ジョブ」のように、夜職から昼職への転職を専門で支援するサービスが出てきている。こういう仕組みが存在すること自体が、夜から昼への移行がどれだけ難しいかを物語っている。
転職支援に辿り着ける人はまだいい。辿り着けなかった人が向かう先は、風俗だ。短時間で手取りが出る。金銭感覚を落とさなくて済む。そうやって、ずるずると移っていく。
沈める構造
ホスト側には、もっと直接的な構造がある。
売掛金。いわゆるツケだ。ホストが客の女性に恋愛感情を抱かせ、高額なシャンパンを注文させる。支払えなくなった女性に、ホストが風俗を紹介する。売掛を回収するために、客を風俗に沈める。これは2023年に社会問題化し、警察庁が対策に乗り出した。2025年6月には改正風営法が施行され、色恋営業の禁止や、売掛金回収目的で売春・風俗勤務を要求する行為に罰則がついた。
法律は動いた。ただ、規制が強化されても違反がなくなるわけではない。
「使われる側」が、同時に「沈められる側」でもある。 キャバやホストの世界には、この二重構造が埋め込まれている。
依存の設計
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