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変動金利利用者の51%が知らなかったこと

住宅金融支援機構が2025年10月、住宅ローンを借りている5,000人に聞いた。対象は2024年度以前に借り入れた層で、変動金利の利用者は2,963人。返済額の見直しルールを理解していたかという設問がある。


半分が知らない

理解していなかったと答えた層を足すと51.1%になる。

内訳はこうだ。
あまり理解していなかった29.9%、ほとんど理解していなかった12.0%、まったく理解していなかった9.2%。人に教えられるくらい理解していたのは5.6%にとどまる。

聞かれているのは、金利が上がったとき毎月返済額がいつから、どのくらいの幅で、どういうルールで見直されるか。5年ルールと125%ルールを指していると読める。

契約書に書いてある。商品説明書にも書いてある。それでも半分が知らない。

金利がどの程度上がると返済額がどの程度増えるかという別の設問でも、理解していなかった側が53.2%を占めた。

これは既に返済が始まっている層の数字であって、今まさに借りようとしている人たちの調査ではない。数年前に契約を終え、返済表を受け取り、毎月引き落としを見てきた人たちが、この割合になる。

考えても仕方ない

では借りたとき、何を考えていたのか。

借入当時の意識を尋ねた設問で、最も多かった回答は「将来の金利のことはあまり考えても仕方ないと思っていた」で30.9%。次が「金利が上昇しても十分対応できると思っていた」27.7%。「金利上昇のリスクをあまり分かっていなかった」13.9%、「変動金利は多く利用されているから大丈夫だと思っていた」11.7%、「金利は上がらないと思っていた」10.6%。

具体的な備えを持っていた層は、この設問からは見えてこない。

今後5年の金利見通しを聞いた設問も似た形をしている。選択肢は上昇幅の累積帯で、0.5%までが28.7%、1.0%までが25.4%。1.0%を超える上昇を想定している層は、合計しても16.4%にとどまる。

日銀がマイナス金利政策を解除したのは2024年3月である。そこから2年余りで、政策金利は1%程度に達した。同じ速度があと2年続けば、16.4%の想定圏に入る。

負担感を尋ねた設問では、変動金利利用者のうち大きくなった16.0%、やや大きくなった24.5%を合わせて40.5%が、既に重くなったと答えている。

動かない借り手

この連載を書き始めたとき、私は借り手側にも逃げ道があると考えていた。固定への借換え、繰上返済、売却。金利が上がれば人は動く、と。

数字は逆だった。

回答者全体で、繰上返済の経験が0回の層は90.4%。借換えの経験が0回は82.8%。借換えを検討していないと答えた層は85.0%に達する。

借りたまま、何もしていない。

ただし借換えは、意思だけで実行できるものではない。新しいローンを組み直す以上、審査がある。契約後に収入が下がっていれば通らない。病気をして団信に入れなければ、そこで止まる。転職直後も不利になる。国交省の調査では審査項目に完済時年齢を挙げる金融機関が98.4%にのぼり、その上限を80歳未満とする機関が716と最も多い。金利上昇に最も追い詰められる条件と、審査に落ちる条件は、かなりの部分で重なっている。

返済負担が無理なく続けられる水準を超えた場合にどうするか、という設問がある。最も多いのは「毎月の貯蓄をやめて返済を継続する」27.2%。次いで「いざそうなった時に考えるので今は具体的に考えていない」23.7%、「支出を大きく減らして返済を継続する」22.7%。

貯蓄を止める。支出を削る。あるいは考えていない。上位三つがこれである。

貯蓄を取り崩して繰上返済すると答えたのは15.2%、世帯収入を増やすは10.3%、親族から援助を受けるは1.0%だった。

選択肢にないもの

この設問の回答一覧に、売却がない。

住み替えも、任意売却も、選択肢として並んでいない。設問の設計で外されたのか、回答が少なくて表示されなかったのかは、公表資料からは判断できない。

売却が現実的でない理由なら想像はつく。金利上昇は住宅価格を押し下げる方向に働く。借入時に頭金をほとんど入れていなければ、売っても残債が残る。手放しても借金だけが手元に残るなら、それは出口ではない。

上位に並んだ回答の性質は共通している。貯蓄をやめる、支出を削る。どちらも家計の緩衝材を燃やす行動で、燃やし尽くしたあとが想定されていない。

備える商品がない

国土交通省の令和7年度調査に、金利上昇に備える商品の取扱状況が出ている。

上限金利特約付き住宅ローン、いわゆる金利キャップを現在扱っている金融機関は12.3%。商品化の予定はないと答えたのが79.2%、かつて扱っていたが廃止したが7.2%。

借り手が備えようとしても、備えるための商品が市場にほとんど存在しない。

そして備えていないのは借り手だけではない。同じ調査で、固定期間10年超の住宅ローンについて金利リスクのヘッジを特に行っていないと答えた金融機関が47.7%にのぼる。

792万件

同じ調査によれば、令和6年度末の住宅ローン貸出残高のうち変動金利型は70.8%、金額で143兆5,747億円。件数は792万2,127件。新規貸出に占める変動金利型の比率は83.5%である。

機構の調査は5,000人のサンプルにすぎない。対象は残高1,000万円以上・残存期間10年以上に絞られ、単身世帯は除かれている。調査を実施した機構自身がフラット35を扱う立場にある点も、割り引いて読む必要がある。

それでも、測られた理解度が母集団におおむね近いなら、変動金利で借りている400万件前後が、返済額の見直しルールを知らないまま契約したことになる。金利上昇のリスクをあまり分かっていなかったと自ら答えた13.9%だけを取っても、100万件を超える。

聞かれているのは、金利が上がったとき毎月返済額がいつから、どのくらいの幅で、どういうルールで見直されるか。それを理解していなかったと答えた層が、51.1%だった。


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