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名前が先に出た〜韓国サッカースキャンダル〜

四人と二人

日本サッカー協会の宮本恒靖会長が8月12日、都内でのイベント後に取材に応じ、韓国サッカー協会による外国人審判への性接待疑惑について、JFAとして事実確認をしている状況だと述べた。

JFAは日本人審判4人を調査している。共同通信が9日に報じた時点で、調査後に結果を公表する意向とされていた。CNNの取材にもJFAは調査中と回答している。

前回、この件について「動かなかった十年」という記事を書いた。2016年に作られた監査報告書が十年公表されないまま、時効が次々に切れていく構造についてのものだ。あの記事の最後で、日本サッカー協会が確認した結果をどう扱うかは調査した側の裁量に残る、と書いた。

三日で状況が動いた。裁量は残っている。ただし、行使できる方向が変わった。

この記事は、公表すべきかどうかの話をする。追及の側からではない。


順序

まず、何が先に起きたかを確認しておく。

韓国のJTBCが文化体育観光部の監査報告書を報じたのが8月6日。JFAが4人の調査に着手していると共同通信が伝えたのが9日。その間に、日本のサッカー専門メディアが該当する審判の実名を報じた。韓国のスターニュースは10日、日本の現地報道で実名まで取り上げられたと伝えている。

名前は国境をまたいで流通した。調査が始まる前に、名前のほうが先に出た。

この記事では実名を書かない。報じた媒体名も、これ以上は挙げない。順序だけを書く。

報道によれば、2012年2月29日に行われたW杯アジア三次予選の韓国対クウェート戦は、主審と副審を含む審判団4人が全員日本人だった。このうち2人が接待を受けたとされている。

流通している名前は4人。この試合の審判団の構成は当時から公表されている情報なので、そこから逆算すれば4人の氏名は誰でも並べられる。だが指し示されているのは、そのうちの2人だ。

誰が2人なのかを特定した情報は、公開されていない。

つまり現在、名前が出ている人のうち少なくとも半分は、対象ではない可能性が高い。にもかかわらず、4人は同じ扱いで検索結果に並んでいる。

否定する手段がない

対象外だった人が、自分は違うと言ったとして、それを証明する方法があるだろうか。

文体部の報告書は韓国政府の内部資料だ。CNNの取材に対しては、報告書は関与が疑われる他の審判の国籍に触れていないと説明されている。少なくとも公開された形では、韓国側は個人を特定していない。

本人が否定しても、否定を裏づける文書が本人の手元にない。十四年前の一夜について、行かなかったことを自分で立証するのは無理だ。

範囲を確定できるのは、調べた側だけになる。

公表しないという選択

処分が届かない案件を、内部の確認だけで終わらせる。組織の判断としては、通常なら成立する。

韓国国内法の公訴時効は、この時期の行為の大半について経過しているとみられる。ソウル警察庁は10日の時点で、適用可能な容疑と時効が残っているかを含めて検討中だとしており、着手には至っていない。FIFA倫理規定については、2018年に贈収賄類型へ10年の上限が入っており、サッカー協会の枠内での懲戒は届きにくい。処分できないものを公表する義務は、規程のどこにも書かれていない。

だが今回は、その判断が別の意味を持つ。

名前が既に外にある状態で沈黙すれば、否定できないから黙っていると読まれる。4人という数字だけが残り、2人という数字は誰にも届かない。公表しないことで守られるのは、対象だった側になる。

前回の記事では、時効が守ったのは誰かという問いを立てた。認定済みの記録を伏せたまま時間を経過させれば、時効は追及される側の保護に変わる、と書いた。

今回は、それが反転する。名前が先に出た状態では、公表しないことが対象者の保護になり、対象外の人の負担になる。同じ沈黙でも、守る相手が入れ替わる。

裁量はある。行使の方向が、片側しかない。

何のための公表か

JFAが結果を出すことは、誰かを裁くためではない。協会の懲戒権が届かないことは、おそらく最初から分かっている。

出す意味があるのは、範囲を閉じるためだ。何人が対象で、何人が対象でなかったのか。名前を出さなくても、数は言える。該当しなかった人がいるなら、いると言える。それだけで、いま検索結果に並んでいる4人の状態は変わる。

裁量が残っているという見立ては変わらない。ただ、選べる中身が変わった。名前が先に出た時点で、黙るという選択肢は中立ではなくなっている。

調査の前に

ここまで書いてきたことは、実名を報じた側への批判として読めるかもしれない。半分はそのとおりで、半分は違う。

報じられた4人の名前は、隠されていた情報ではない。審判団の構成は当時から公開されていた。誰かが暴いたのではなく、公開情報を組み合わせただけだ。だから報道倫理の問題として片づけると、本質を外す。

問題は、組み合わせた結果が「4人のうち2人」という不確定な形のまま外に出たことにある。確定できるのは調査した側で、その調査はまだ終わっていなかった。

順序が逆になった。そして、逆になった順序を戻せるのも、調査した側だけだ。

JFAは公表する意向を示している。あとは、何を公表するかになる。


【2026年8月16日 追記】

公開後、当時の検察が性接待に関わった協会職員2名を不起訴としていたことが、JTBCの報道で明らかになった。理由は、私益ではなく協会の利益のための行為だったという趣旨とされる。

この記事の論旨は変わらない。むしろ強まる。

韓国側で刑事手続きが既に終結していたなら、日本人審判について韓国の捜査機関が新たに事実を確定する見込みは、さらに薄くなる。文体部の再調査も行政の枠内で、日本人の氏名を公表する立場にない。

範囲を確定できるのは、やはりJFAだけになる。

四人の名前が並び、指し示されているのは二人。その差を埋められる主体が、他に見当たらない。


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